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◇「恋人」

「懐かしい」✳︎優月

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「……ふ――――……は……」


 なんかもう、瞳を開くのもやっと、な感じで。
 玲央の顔を、見上げた。


「――――……」


 キレイ……玲央の瞳。
 その瞳に、自分が映ってるのが、こんなに嬉しいとか。

 不思議な位。



「……可愛い」


 くす、と笑って、何度も頬や耳や、あちこちキスされる。


「……っ」


 もう恥ずかしくて、玲央の胸に手をついて、止める。


「れ、お――――……あの……クロのとこ……時間無くなっちゃう」
「んー……分かった。じゃあさ」

 終わらせてくれそうな雰囲気にホッとして、玲央を見上げると。


「優月からキスして? それで終わりにする」
「――――……」


 そんな言葉に、玲央を見つめると。
 ただでさえ優しい瞳を、ふと細めて、笑う。


 とくん。胸が、音を立てる。


 ……大好き。玲央。

 
 玲央の両頬を手で挟んで。
 めちゃくちゃ大事なのが、伝わるように、キスしてみた。


 そーっと、そーっと。
 ゆっくり触れて、少し押し付けて重ねて、それから、ゆっくりと離した。


 離すと同時に、ゆっくりゆっくりと、瞳を開けると。
 玲央も同時に瞳を開けてて。


「――――…………それさ」
「……うん?」

 玲央が、ニヤ、と笑う。

「夜、やって」
「……ん?」

 夜?


「――――……すっげえ燃えるから」

 クス、と笑った玲央に、ちゅ、と頬にキスされる。


「めちゃくちゃ、気持ち良くしてやる、優月」
「――――……だいすき……だからしたんだよ?」
「分かってるよ。だから、じゃんか」

「………………っっ」

 オレ。
 ――――……その気にさせた、ってこと?

 ……玲央のポイントが、よく分からない……。


「――――……このままマンション連れ帰って、抱きたいけど……」
「…………っ」


 そんな風に言う玲央に、むぎゅっ、と抱き締められて。
 それから、ぱ、と離された。


「離すって約束したからしょうがないな……。コンビニ行こ」

 オレの道具を手に取って、そう言うと、玲央がドアを開けてくれる。

「うん」

 ドアに近付いた所で、玲央が頭を撫でてくる。

「持つよ、ありがと」
「いいよ、別れる時渡す」

 優しい声で言って、ドアを閉める。


「優月がさ」
「ん?」

「もっと、オレを欲しがったらいいな」
「え?」


「……オレいつも、お前が欲しいから」

「――――……今更なんだけど」

 ……何言ってるんだろう、玲央。

 隣を歩いて、そんな事をしみじみ言ってる玲央を、じっと見つめる。


「オレ……ちょっと自制してるだけだよ。学校だから」
「……その自制がきかなくなる位、欲しがってくんねーかな」

 歩きながら、頬に、ぷに、と触れられる。


「…………って、何言ってんだろうな、オレ」

 クスクス玲央は笑って、オレから手を離す。


「多分さ」
「うん?」

「優月は、オレがそういう事大好きながっついてる奴って、思ってるんだろうけどさー」
「がっついてるって…… そんなこと、思わないよ?」
「そうか?」
「うん」

「……今までこんな風にはしてないんだぜ? 信じる?」

 玲央は苦笑いしながら、オレを斜めに見下ろす。


 ――――……その視線が、すでに色っぽいからね……。

 がっついてるなんて、そんな風に玲央の事を思いはしないけど、
 大好きなんだろうなーとは思う。キスとか。そういうこと。してる時、玲央、楽しそうだし。色っぽすぎるし。


「――――……そういや、会った時から、キスしたいキスしたいって言ってたっけな、オレ」
「――――……」


 …………確かに、それはそうだったような。

 初めて会った時を思い出して、あらぬ方向を見ていたら、玲央にのぞき込まれた。

「そうだったなあって、今思ってるだろ」
「……キス、していい?っていうのは、聞かれたなあって……」

「うん、聞いた。キスしたかったんだよ、お前に」

 そんな風に言って、オレを見て。


「なんか、すでに懐かしいな?」


 クスクス笑って、玲央がまたオレの頬に触れた。


 
 確かに。 
 ……もうなんか、遠い昔な気がしてしまう。



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