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◇「恋人」

「感情が」*優月

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「玲央、今日はここで食べるの?」
「あぁ、勇紀がここが良いって」

「勇紀は?」
「今トイレ行った」

 そっか、と頷きながら、見上げた玲央に、胸が弾む。


 ……居られる限り、ずーっと一緒に居る気がするのに。
 少し離れてから玲央に会うと、すっごく気持ちが弾んでしまう。

 オレって、本当に玲央が大好きすぎるなあ……。
 
 なんて思っていたら。


「なんか優月めっちゃ嬉しそう」
「ほんと」

 何となく周りにいた皆に、クスクス笑われた瞬間。

 ――――……!!! 
 
 皆、多分、何の気無しに、オレの事を見た感想をそのまんま言っただけなんだろうとは、思うんだけど。

 あ、オレ、そんなに嬉しそうな顔してるんだと、認識させられたというか。
 つまり。

 もう、一瞬にして、真っ赤になった、のだと思う。


「なになに、優月、ゆでだこすぎるけど」
「耳まで真っ赤じゃん」

「な、なんでも、な――――……」


 何でもない訳ない態度で、とりあえずなんでもないを言おうとして。
 流石にオレが真っ赤すぎるからか、ちょっとびっくりしてた顔の玲央が、何かを言おうとした瞬間。

  

「ゆーづーきーーーーー!!!」


 突然現れた何かに、抱き締められた。
 抱き締められてから、声も含めて、勇紀だとは気づいたけど、あまりに突然。


「ぅ、わっ」

「優月、会いたかった――――!!」
「ゆ、ぅき……」


 じたばたしてると、これは長そうだなと思ったらしく、皆は笑いながら、「先行ってるー」と言って、食事を買いに行ってくれた。



 ――――……助かった、勇紀、ありがと……。

 思った瞬間。


「……まあいいタイミングだったけど。 そろそろ離れろ」

 玲央が勇紀を引きはがした。


「お前ちょっと落ち着けよ」
 自分の方に勇紀を引き止めて、玲央が苦笑い。


「離せよ、玲央ー」
「ダメだ」

 そんな2人の様子に、ぷ、と笑ってしまう。

 さっき真っ赤になったのは、勇紀を見てたら落ち着いた。


「大丈夫か? もう、トイレにでもひっぱってこうかと思ったけど……。勇紀来て良かったな」
「ごめん……」
「いいけど」

 玲央はクスクス笑う。


「――――……もー離せよー、玲央ー!」


 勇紀が玲央の手を振りほどいた、と思ったら。
 また、むぎゅ、と勇紀に抱き締められてしまった。



「はー。玲央から聞いたよ。……よかったね、優月」

 不意にそんな風に言われて。



「――――……」


 何だか突然。

 ――――……急に、じわ、と涙が滲んでしまった。


 もうなんか。
 感情の上下が激しすぎて、ついていけない。


 玲央も、勇紀を引きはがしは、しなくて。
 少しの間だったけど。

 ――――……食堂入ったすぐの、メニューの前で。続々と人が入ってくる時間に、オレは勇紀と抱き合ってしまった。

 その時。

「おーい……入口で、何してんのお前ら」
「優月の相手、勇紀だし。違うだろ相手が」

 颯也と甲斐の、笑い声が後ろから響いた。




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