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◇「恋人」
「玲央と優月」*蒼
しおりを挟む優月と玲央を送って店の中に戻り、里村の隣ではなく、前に座る。
「帰った?」
「ああ」
さっき座っていた所から、里村が飲み物と小皿を手渡してくるのでそれを受け取りながら。
「何か頼むか?」
言うと里村は、まだ良いと笑う。
「――――……優月くん、ああいうタイプだと思ってなかった」
「どんなタイプだと思ってたんだよ?」
聞くと、里村は、ははっと笑った。
「特別思ってた訳じゃねえんだけど――――……なんつーか……まあ。ああいうタイプかって、感じ」
「どー言う事だよ?」
ふ、と笑うと。里村はんー、と顎に手をかけて、考える。
「蒼が可愛がるのがあれかーと思って」
「なんだよ?」
「なんつーんだろうな、あのタイプ。……天然……とも違うような」
「はは。 ……一言じゃ言えねえよな」
優月を思い出して、すこし考えるが。適当な言葉が見当たらない。
「お前が育てたんだろ。絶対」
「だから、優月が中学に入ってスマホ持つまで、週1の教室でしか会ってねえし。スマホ持ったって、そんな頻繁に連絡とる訳でもねえし?」
「週1でも、影響与えるには十分だろ」
「――――……どっちにしたって、優月は元々あんな感じだよ」
ビールを一口飲んでからそう言うと、里村は、ふーんと笑う。
「いいの? 渡しちゃってさ」
「ん?」
「お前のもとで可愛がってたいんじゃねえの?」
クスクス笑う里村に、ふ、と笑って。
「玲央のこと言い出した時、優月は男がありなんだとは思ったけどな。どう考えても、オレは、無しなんだよな。……今の立ち位置が一番居心地良い」
「ふーん……」
「何だよ」
「優月くん、初めての恋人なんだろ? 元々ノーマルの子でさ。片方はあんなイケメンの、バイを自覚してる、遊んでそうな玲央くん」
「――――……」
「今はお互いめちゃくちゃ大好きって感じだけどさ。いいの? 優月くん、傷ついても」
まあ言いたい事はすごくよく分かる。
「……玲央が優月を好きなのがさ」
「ん?」
「――――……なんかオレが優月を好きなのに似てるんだよな。オレのに、恋愛感情を足した感じ」
「はは。そうなの?」
「まあそんなの感覚だから、確かじゃねえし、何とも言えないけど」
「――――……」
「まあでも、もしそうなら、ずっと大事にしてくれるかもしんねえし。優月は、一回好きになったもの、そう簡単に手放さないし」
「ふうん……」
「としたら、ずっと続くかもなと、オレは思ってるよ。――――……あ、賭けるか? とりあえず3月まで続くか」
ニヤ、と笑って見せると。
「……続く方に賭けて良いなら乗る」
里村の言葉に、は?と視線を向ける。
「賭けになんねえけど。 お前は別れるって思うんじゃねえの?」
そう言うと、里村はものすごい苦笑いをして、オレを見た。
「今の聞いてたら、違う気がしてきた。まあなんか初々しいし。応援したい気持ちはあるんだよ。優月くん、かわいーし」
「は。じゃあ賭けになんねーな」
「ん」
ふ、と2人で笑ってしまう。
「ていうか、玲央くんも可愛いよなー」
「ん?」
「オレが、浮気とか言い出した時さー。一生懸命しないしないって、優月くんに訴えてて。 顔だけ見てれば、超生意気なイケメンっぽいのに。笑っちまいそうだった」
「優月はもう何も考えずすげー好きなんだと思うけど…… 玲央は色々経験あるだろうし、色々考えての好きだと思うから――――…… むしろ、玲央のが、優月を好きなんじゃねえかな」
「はは。いいねー、若くて、好きが一番でさ」
「そうだな。まあ、3月に、酒飲みながら、色々聞けるといーけどな。なんか飲もうぜ、日本酒いく?」
「お前明日、個展の最終日なんじゃねえの?」
「別に全然平気だし」
「あ、そ」
く、と笑いながら、里村がメニューを受け取る。
「3月楽しみだな」
クス、と笑う里村に。
「ああ」
ふ、と2人を思い出して。つい、微笑んで頷いた。
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