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◇「恋人」

「花が咲くみたいに」*玲央

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 授業が終わったら即帰ってジムに向かった。
 先週サボったから、久々な感覚。ジムのインストラクターに、先週は忙しかったんですか?と聞かれた。ここに住んでからは、週1、2回は必ず行ってたからなー……。

 ほんと先週は色々イレギュラー。

 ――――……早めにトレーニングを終えて、シャワーを浴びて。部屋に帰ったけれど、まだ余裕で優月の所まで行ける時間だなと思ったら、もうあまり考えずに、出発。

 悪いから、という断りだったと思うから、行ってもいいだろうと思って電車に乗って向かう。 ――――……だんだん近づくにつれ、これってどうなんだろうと考えながら、景色を眺める。

 来なくていい、1人で大丈夫と言ってる奴を、迎えに行くって。
 …………迎えに来て、とか送ってとか、言い続けられるのと、同じ位うざかったりして。

 優月だから、ウザイとか、そんな事は言わないとは思うけど。

 要らないって言ってるのに、来たの?……とか。
 言われても良いレベルな気もしてきた。

 優月、どんな反応、するかなあ……。
 と。思いながら。昨日も長い時間過ごしたコーヒーショップで、コーヒーを飲みながら色々考える。

 優月の側に居たいっていうのが大前提にあるから、その為に待つとか移動するとかは、全く何とも思わない。でもそれを、優月が申し訳なさそうにするなら、来ない方が良かったかなとも思うし。

 んー。優月次第なんだけど。
 ……オレ、変わりすぎだとは自分でも、思うけど。

 迎えに来たことを優月に連絡を入れて、音楽を聞きながら、連絡を待つ。


 何て、連絡くるかだよな……。


 と、何となく、何度も来なくていいと言われたっけと引っかかって、モヤモヤしていた。


 電話がかかってきて、何て言われるかなと思いながら、出ると。

「来てくれたんだね」と言われて。
 要らないって言われてたけど、と思わず言った時。

 嬉しい、と優月は言った。
 悪いなって思ってたけど、来てくれてすごく嬉しいって。


 本当に、可愛いって思ってしまって。
 つい、路地裏に引き込んで、キスしてしまった。



 ――――……どうしてこんなに愛しいかな。

 腕の中の優月が、めちゃくちゃ愛しくて、可愛くて。
 なんだかどうしたらいいか、よく分からない。

 とりあえず思うままキスしたら、また立ってられなくなる優月を支えて。……すぐ感じてそうなるのが、ほんと可愛い。


 その後優月を抱き締めたまま、蒼さんと電話して、一緒に夕飯を食べる事になった。

 抱き締めていた腕から優月を起こして離すと、離れたくなさそうな顔をして。
 額にキスしたら、何で口じゃないのかな?と不思議そうで。

 確かにそれらを優月に言葉として言われた訳ではなかったけど、そうだとしか思えない顔をするから、それに対して勝手に話を進めていたら。

 ものすごく、不思議そうな顔をして。

「……何で、玲央は、オレの思ってることと、会話するの?」

 と言われた。


 なんでって――――……。

 答える前に吹き出してしまった。


 だって、お前の顔、そうとしか取れないっていうか。 
 ……これはオレじゃなくて、他の奴だって分かると思うんだけど。

 可愛くて、なんだか笑いが抑えられなくて。
 つい、笑い続けていたら。


「なんでそんなに笑うの?」

 むー、と見上げてくる。


「優月?」
「……何?」

 
 ムッとされても、ふ、と笑ってしまう。

 もう、本当に可愛い。なんでそんなに素直なんだ、お前。

 優月を引き寄せて、ぎゅ、と抱き締める。
 すっぽり埋まって、少しすると。もう、腕の中でほくほくした顔してる。



「……素直なとこ、マジで好き」


 よしよし、と撫でていると。


「――――……オレは、玲央、全部好き……」


 今から蒼さんのとこ行くのに。そう思うんだけど。

 ――――……我慢できなくて、ちゅ、と唇にキスした。


 触れるだけのキスをして。ゆっくり離すと。
 ふわ、と笑う。

 花が咲くみたいに笑うってこういう事かなと、思うような笑い方で。
 


 ――――……はー。可愛い。





 オレ、頭ん中、溶けてそうだな……。






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