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◇「恋人」

「天使じゃない」*玲央

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 ……あー。
 マジで、うるさい。
 やばいなこいつら。

 分かっていたけど、特に、勇紀と稔。
 まあこいつら、もともと仲良くてテンションぴったりなんだよな……。

 オレと優月の事を今この場で周りに知らしめようとしているんじゃないだろうかと、思ってしまうレベルでさっきから、騒いでいる。

 あまりのテンションの高さに絡みたくないのと、あとはオレが居なくても2人で延々話し続けて居られるらしく、入る必要が無いのとで、ひたすら食事を取りながら、耳だけで聞いている。

「そういや、バレるのはいーのか?」

 颯也がふと聞いてきた。

「隠すことはないって、優月とも話してきたんだけどな」

 苦笑いしながら、うるさい2人をチラ見して、颯也に視線を戻した。

「まあ隠しても、一緒に居たらバレるだろうし。ただ、ここまでうるさいと、一気に広まるかな……」
「そーだな」

 颯也と甲斐も、盛り上がりすぎて注目を浴びてる2人に苦笑い。


「へえ、そーなの、勇紀が倒れたの助けたのが優月だったんだ」
「そーなんだよね」

「じゃああいつ、ほんとに元々いい奴なんだなー」
「知らない奴を助けて送って面倒見てくれる位は、いい奴」
「相当じゃね?」

「うん、ほんと優しいしねー なんか純粋だし、良い奴なんだよねー」

 勇紀が言って、それからちらっとオレを見てくる。


「あんな純な子と、玲央みたいなエロ魔人とがどーしてそうなるんだかは、かなり謎だけどなあ」

「――――……」

「玲央のする事とかが恥ずかしすぎて、しょっちゅう真っ赤になっちゃってさー。可愛いけどね」
「ああ、真っ赤になってんの、見たなオレも」

「そういえば何で稔、優月知ってんの? 玲央に紹介された?」

「あー。玲央と居るの見かけてさ。玲央に、見慣れない奴と居るけど誰?て聞いたんだよ。そしたら、可愛い可愛いうるさくて、ヤバいなと思ってたら、そのすぐ後にたまたま会って、声かけてみた」
「え、優月はお前の事、知らないのに?」
「優月の隣に、同じ学部の奴が居たからさー。なんとかなるかなって興味を押さえられず」

「優月困ってたでしょ」
「まーな」

 ぷ、と笑って、2人は楽しそうだが、かなり聞き捨てならない言葉があって、勇紀をじろ、と睨む。


「つか、エロ魔人てなんだよ、変な名で呼ぶんじゃねーよ」

 ツッコミ入れると、やれやれと勇紀が笑う。


「だって優月が天使だとしたら、玲央は逆側に居るじゃん」

 ――――……天使って。

 言い返す言葉も一瞬浮かばず、勇紀を見てると、颯也と甲斐が、ぷっと吹き出してる。

 あ、そうだまだ言ってなかった、と思って、こう口にしてみる。


「もー天使ではねえかな」

「え?」

 今なんつった? どーいう意味? と勇紀が首を傾げている。


「天使って、清いんじゃねーの?」
「え。……てことは、ついに――――……??」


「つかこれ以上叫ぶなよ」

 けん制してると、颯也が完全に普通の顔で。

「まあ土日一緒だったんだし、これでまだだとか言われたら、それこそ、何でって感じだよな」

 そう言って、甲斐も「そーなったら玲央がやばいのかと思っちまうよなー」と笑う。

「んだよ、ヤバいって」

 聞くと。

「えー……そうだな、機能障害、的な?」

 クスクス笑って甲斐が言うので、は?と睨む。


「まったく問題ねーから。つーか、加減するのが大変」
「あーはいはい、分かってるよ」

 苦笑いの甲斐の横で、勇紀が、むー、と眉を寄せてる。


 思ってたより静かで良かったけど、その表情は一体、と思った瞬間。


「オレの可愛い優月を汚された感が……」
「は? 今更だな―お前」

 苦笑いしながら勇紀を見ると。


「そうだけど、先週最後まで手ぇ出して無かったし、やっぱり優月が可愛すぎて無理なのかなーって思ってたからさー。ついにかー」

「ていうか、お前のじゃなくて、オレのだし。 何言ってンの、マジで」

「……っ 玲央よりオレの方がずっと前から仲良いんだからねっ」

「そういう意味の仲良しじゃねーだろ、お前のは」
「まあそうなんだけどー。だって優月って、可愛いんだもん。あのままで居てほしい」
「別に変えるつもりねーよ。 可愛いまんまだし」

「もー、必要以上に汚すなよなー?」
「何だそれ。 アホか」


 黙ってそのやり取りを見ていた稔が、はーーーー、と大きなため息。


「オレ、マジで、玲央が言ってる事が信じらんない」


 ここ1週間、なんかよく言われてンなあ、その類のセリフ。
 思いながら、苦笑い。
 


 
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