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◇週末の色々

◇好きなとこ*玲央

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 最後に振り返った優月が可愛くて。
 ――――……その姿が消えるまで見送ってから、ふと辺りを見回した。

 コーヒー飲めて、長居できそうな所……。
 近くのコーヒーショップを見つけて、そこに入った。

 ブラックを注文して、スマホを手に取る。
 一番何が伝わるか、しばらく考えて。


『急で悪いけど、好きな奴が出来たから、もう今迄みたいには、会えない。
 今までありがとうな』

 スマホのメッセージ欄に、そう打ってみた。

 ごめんな、もおかしいよな……付き合ってた訳じゃないし。
 ありがとうでいいよな……?

 ――――……これ以上、書く事、あるか?
 

 少し引っかかるのは、大学で関係がある奴だけど。
 授業とかでも会うし。

 でもまあ、もともとそういう約束での付き合いだったっていうのがあるから、恋人と別れるという程の気負いはいらない奴も居る。全然気にせず、分かったって言いそうな奴も浮かぶし。逆に、何でと言いそうな奴も浮かぶけど――――……。とりあえずこれで送って、あとは返ってきた相手によって、個別対応だな……。


 はあ、と息をついて。
 ここ半年以内に会ってた相手に向けて、送信した。
 


 


 で。
 2時間。ずっとやり取りした結果。


 ――――……昨日のライブに来てた奴らや、SNSを見てる奴は、何となく察知してたらしく、分かった、しょうがないね、のような反応。さよならと書いてくる奴もいれば、またライブ行くよ、と、友達感覚の奴もいた。

 ……雪奈が流した片思い説が、結構ファンの間で流れてるらしい。 
 後で、礼言っとこ……。


 なんで? 別に本命居てもいいよ、どうせセフレなんだし、みたいな奴も居たけど。けじめだから、と送ると、大体が分かった、となった。


 つか。
 もともと、セフレ、なんだよな。
 ――――……わざわざ言わなくても良い事なのかもしれない。

 わざわざ良いのに、と言う奴もいて、それも分かる。
 本当に返信は様々。


 やり取りしてる間に、なんかオレ、ほんと何してたんだろうな、なんて、思ってきた。

 虚しく感じながらも、あんまり深く考えもせず。
 どうせ相手も遊びだし。恋人も居ないんだから自由でいいとか。
 


 ほんと。
 考えれば考えるほど、どんよりした気分に襲われてくる。



 ――――……優月、何でオレなんか、好きになったかなー。

 などと、今まであんまり考えた事の無い事まで、考えてしまった。




◇ ◇ ◇ ◇

 またスマホが震えて、誰かからの返信かと画面を見たら、優月だった。
 なんだか、一瞬で緩んだ感情に、苦笑いが浮かんでしまう。


『玲央、今、電話で話せる?』

 そんなメッセージが届いて、少し周りを見回す。
 ランチをとる客も増えてて騒がしいし、席は一番奥で、電話をしても見えなそうだ。少し位、平気か。そう思って、優月に向けて発信する。


『あ、玲央?』
「お疲れ、優月。どうした?」

『オレね、今から、1人でお昼出るんだけど……』
「あぁ、じゃあそっち行く。今コーヒーショップに居るから会計してすぐ出る。さっき別れたとこで待ってて」
『うん。分かった』

 優月の声に、疲れていた心が和んだ。
 ……現金だなー、オレ。

 会計を済ませて、足早に階段を下りて、通りに出ると、優月がスマホを見ながら、立っているのが見えた。軽く、駆け寄ると。
 ぱっ、と優月が笑顔になる。


「――――……」

 ダメだ。
 ……すげー可愛いし。


 何なんだろうなお前。
 子供じゃねーんだから、そんな素直に、嬉しそうな顔で笑うとか、
 ほんと――――……。


 可愛すぎ。
 こんな風に人に思った事が無くて、何だか、本当に、自分がおかしくなってるような気がする。

 ……何なんだろう、これ。
 マジで、どーかしてるか??


「玲央、おなかすいた? ごめんね、ちょっと忙しかったから、連絡も出来なくて」

 ちょっと眉を困ったように寄せて、オレを見上げてる。


「全然平気」
 
 休日の、都内の街。人が多い。まわりに変に思われない程度に、肩に手を回して、近くに引き寄せた。

「……玲央?」

 きょとん、として、優月が見上げてくる。

 だめだ。どーかしててもなんでも、可愛いと思うのはどうにもできない。

 ――――……すげーキスしたいんだけど。
 さすがに、優月が赤くなって憤死しそうだから、しないけど。


「……何、食べたい? 優月」
「何でも。1時間で戻らないとだから、近くがいいな」
「昨日は何食べた?」
「昨日は……あそこのファーストフードにしちゃった。目の前にあったから」
「そっか。今オレが行ってた店の近くに洋食屋があったけど行ってみる?」
「うん」

 嬉しそうに優月が頷くので、一緒に歩き始めた。


「玲央、何してたの?」

 無邪気に聞いてくる優月。

「まあ色々。あとで話すよ」
「? うん、分かった」

 全部片付いたら、話そうと思って、そう言うと、優月は不思議そうにしながらも、笑顔で頷く。


 ――――……あー。なんか。
 こういうとこ、ひたすら可愛いのかも、


 ……色々、とか。後でな、とか。

 そういう少し隠すような事言うと、大体、「色々って何?」とか「隠すの嫌だ」とか、そういう風に言われた気がする。

 ……まあ、今落ち着いて色々考えてみると、信用が無かった、ていう事なのかもしれなくて、そもそも信用ないオレが悪かったのかも知れないとも思うけど。


 優月、疑わない、というか。
 ……嫌な風に取らない、というか。

 ……素直、なんだよな。

 多分、オレ、優月のこういうとこも、めちゃくちゃ、好きなんだと、ふと、1人で実感してると。


「なんか玲央、笑ってる」
「え」

 見上げた優月が、クスクス笑う。


「笑ってた?オレ」
「え、気づいてないの?」

 あは、と楽しそうに笑う優月。
 

「気づかない内に笑っちゃうって、楽しくていいね」


 そんな風に言われると。
 ――――……何かますます愛しくなるんだけど。



 こっちのこんな気持ち、全く、優月は分かってないと思うけど。





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