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◇週末の色々

◇解ける

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「雪ちゃん、キツイなあ」
 勇紀が笑いながら、雪奈ちゃんに突っ込んでる。

「んー……だって、優月くんが、玲央が最高みたいな感じだから。つい……」

 あは、と雪奈ちゃんが笑う。

「玲央は友達だと良い奴だけどさ――――……でも、そういう相手からしたら、ずっと一緒にとかいう人じゃないと思っちゃうんだけど」
「玲央と恋人になりたいって言い出す子も、色々やばくなっちゃう子も多かったけどね……」
「それはちょっと別の話だけど……どっちにしても、玲央の気持ちはそこには全然無かったしさ」

 雪奈ちゃんは、クスクス笑いながら、オレを見つめる。

「あたし、玲央が、誰かに信じて欲しいとか、そんな事言う日がくるなんて思わなかったの。 超びっくり」
「――――……」

「でも、玲央が、優月くんのこと大好きなのは、すごく分かったというか…… 何て言ったらいいんだろ?」

 んー、と考えながら、勇紀に視線を向けてる。

「玲央、優月の事、可愛くてたまんないって顔するから。もう、びっくりもなく、オレは納得してきたけどね?」
「あ、それは、あたしも、さっき玲央と話してて思ったよ」

 雪奈ちゃんは、じー、とオレを見つめて。ふふ、と笑った。

「あたし、昔から玲央の事知ってるけどさ。あんな玲央は、初めてなの」
「――――……」

 ……あ。また、だ。

 あんな玲央は初めて、こんな玲央は初めて。色んな人がそう言う。
 玲央自身も、自分の事、意味が分かんないって言うし。

「――――……」

 初めて、かあ……。

 ――――……この1週間。玲央とずっと一緒に過ごしながら。
 玲央の周りに居る人達と、なんかものすごく絡みながら。ずっと玲央の事、見てきて。

 「オレにとっての玲央」は、
 皆にとっては、「初めての玲央」らしいけど――――……。

 んー…………。
 なんか、あと少し、で。すごく、思ってること、はっきりしそう。

「優月くん?」

 呼ばれるけど、少し俯いたまま考えていたら。 

 ふ、と、急に、解けた気がした。

 ――――……ああ。
 そっか。

 なんか、今。
 急に、すとん、と自分の中に、色々、落ちた気がした。


 今の玲央は、周りの人達にとっては、知らない玲央、みたいだけど。
 玲央自身にとっても、おかしいなって思う玲央、みたいだけど。

 ――――……玲央は、もともとは、オレにとっての玲央みたいな人だったんじゃないのかな。

 詳しい事は聞いてないけど、色々理由があって、ドライな関係が楽だって思ってただけで。
 ――――……もともとは、すごく優しくて、愛情深い人、なんだと思う。

 じゃなかったら、あんなに、優しく触らないし、あんな風に瞳を優しくして笑ったりできないと思うし。

 本気になってない、皆が言うところの「冷めてる玲央」に、それでも本気になっちゃう子達が多いのは、玲央がそういう人だって、きっと、気付いてるからだって、思う。

 ――――……最初に会った時に玲央がつぶやいてた、ぼっちって言葉も。ずっと、心の中に引っかかってたけど。

 何となく、意味が、分かったような、気がする。

 もともとそういう人なのに、結構長いこと、ずっとドライな関係続けてきてて。ちょっと、疲れてたんじゃ、ないのかな。

 楽でいいって、思いながらも。


 そこに、今まで、関わらなかったオレみたいなのがひょっこり居て。
 ……タイプじゃないし、好みでもないけど、とか言って、関わって。

 よく分かんないけど、何かを気に入ってくれて。
 一緒に居たいって、思ってくれて。
 好きって、思ってくれて。

 オレは、そんな玲央が――――……すっごい、好き、で。
 めちゃくちゃカルチャーショックを受けながらも。そばに、居たくて。

 オレは、今の玲央が、すごくすごく好きで。
 ――――……一緒に、居てほしくて。

 オレと、一緒に居たいって言ってくれてる、玲央。
 ずっと玲央と居た勇紀達が、玲央がオレと居ると楽しそうって言ってくれて。 オレが、玲央の側に居る事で、玲央が楽しいって思ってくれるなら、ずっと側に居たいとも、思って。


 先の事とか。今迄のこととか。いっぱい考えてきたけど。
 不安になったり。してたけど。



 でももう。
 ――――……それで、いいのかも。


 先の事、信じる信じないなんて、いくら言ったって、分かんないし。
 過去のこと、気にしてても前に進めないし。

 ……オレが玲央を好きな気持ちは、今は絶対だし。

 ただ、お互い、一緒に居たい間は、一緒に居れれば。
 なんかもう。

 一緒に居られる間はきっと、すごく、幸せだと思う。


 この1週間、ずっと優しくて、ずっとまっすぐオレと向かい合ってくれてた玲央が、何だかいっぱい頭を過ぎって。

 もうなんか――――…… やっぱりオレ、すっごく、玲央が好きだなあ、と。思っていたら。
 

「……優月、くん?……」

 雪奈ちゃんの、めちゃくちゃ戸惑ったみたいな声。

「?」

 びっくりしてる顔をまっすぐ見つめ返して。ん?と首を傾げて、瞬きをした瞬間。ぼろぼろっと、涙が溢れた。


「――――……あ……と……」


 ……なんかオレ今日、涙腺、壊れてるな……。
 泣いてる事にも、驚かなくなってきちゃった……。

 ぐい、と手の甲で涙を拭う。


「大丈夫、優月?」

 勇紀が、ふ、と苦笑い。

「……ん。大丈夫」
「どしたの?」

 勇紀にそう聞かれて。


「ん――――……なんか、やっぱり、玲央が好きだなって思ってたら……」


 言った瞬間。
 あ、と、勇紀が、オレの背後、少し上向いて、苦笑い。


「――――……何、また泣いてんのかと思ったら……何言ってんの、優月?」

 背後で、すごく、笑いを含んだ、玲央の優しい声がして。
 あ、と振り返って見上げると。


「お前、どんだけ今日泣くの」

 クスクス笑う玲央が、オレの頭をクシャ、と撫でた。





 
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