159 / 822
◇そばに居る意味
「逆らえない」*優月
しおりを挟む「いこっか、居酒屋でいいよね? 電気消すから出てー」
勇紀がドアの所でそう言ってて、オレと玲央の先を颯也と甲斐が歩いて行く。
「玲央」
玲央の腕にすこしだけ触れて、玲央を呼んだ。
「ん?」と、見下ろしてくる、視線。
「オレ、なんないよ、嫌になんて」
さっき言われてから、考えてて。
オレに嫌だって思われたくないって。思ってくれるんだなーと思ったら、やっぱりすごく嬉しい。
玲央のまっすぐな視線を見てると、本当にこの瞳が大好きだし、と思って自然と微笑んだ瞬間。
「――――……」
優しく笑まれて。ちゅ、とキスされた。
「はー?! もー、はいそこー、外ではすんなよー」
キスされた瞬間、勇紀の声がして、甲斐と颯也が振り返る。
たぶん真っ赤になってるオレと、「邪魔すんな」と言ってる玲央を見て、何があったか悟ってしまったらしくて。
「……ほんと、あいつ、誰??」
甲斐が言って、颯也も、ふ、と笑いながら、また先を歩き始める。
「玲央、やっぱり、外は禁止……っ」
もう一度キスされて。玲央が笑った。
「帰るまでは、これで終わりにするから」
「…………っ……」
よしよし、と撫でられて。
文句も、封じ込められる。
勇紀が、オレと玲央が出ると電気を消してくれて、ドアを閉めてくれた。
「何なの? マジで我慢できないの、玲央」
並んで歩き出しながら、勇紀が玲央に呆れたようにそう言ってる。
「大変だねー、優月、こんな人の相手……」
そんな風に言われて、ますます恥ずかしい。
「いんだよ。お前らしか居なかったじゃん」
「ちょっとはオレらにも気を遣えよ」
「今更だろーが」
「いや、今更だけど……つか、優月、真っ赤だったし」
勇紀がクスクスに笑う。
「優月がすげー可愛いこと言うからだし」
え。オレ。……のせい?
びっくりして玲央を見上げてしまう。
「ふーん? 何言ったの、優月?」
……何言ったっけ。
キスされる前……。
あ。
「……? 嫌になんてなんないよって言ったこと……?」
そう言ったら、勇紀がじっとオレを見て。
それから、ぷ、と笑いながら玲央に視線を向けた。
「すっげー意外」
「何がだよ」
「玲央って、そーいうのを可愛いって思う奴なんだね」
「……」
「うんうん、分かる分かるー、オレも、優月の事ずっと可愛いと思ってたから。はは、可愛いよねー」
詰まった玲央に畳みかけるように、勇紀が楽しそうに言う。
そういえば、勇紀にはたまに、優月可愛いねとか言われてたっけ。全く意味が分からなかったから、全部スルーしてたけど……なんて思いながら、そのやり取りを見ていたら。
玲央がオレの腕を掴んだ。
「…やっぱ帰ろっか、優月」
「え」
驚いてるオレの手を勇紀が、ぱっと奪い返した。
「ダメ、行くって決めたもんな、優月?」
「あ、う、うん」
玲央が、はーとため息をつきながら、しょうがなさそうに歩いてくる。
「良いの? 行って」
勇紀に連れていかれてしまいそうなので、玲央を振り返ってそう聞くと。
玲央は苦笑い。
「いーよ」
「いーのいーの、玲央に聞かなくて。行こ、優月、どんなお店が良い? オレらいつも行く居酒屋が何こかあってさ。中華風とか洋風とか鳥メインとか…」
楽しそうに店の説明をする勇紀の話を聞きながら、振り返ると、玲央は後ろの方で、颯也と甲斐と歩きながらついてくる。
「いーんだよ、優月。玲央は嫌だったらそー言うからさ。ついてきてんだから、気にしなくて大丈夫」
勇紀がクスクス笑う。
「そっか」
ちょっと安心して笑うと、勇紀もうん、とにっこり笑った。
「それに、優月が言うこと、逆らえないんじゃない? 玲央」
「――――……」
なんか言われた事にビックリしすぎると、止まるんだな、人って。
と、思った。それくらい、固まってしまった。
……逆らえない。
……?? 玲央が、オレに??
すごい固まったオレに、勇紀は、あれ?という顔をした。
「そんな事ない?」
「逆らえないとか、そんな事絶対無いと思うけど……」
むしろ、オレのが、逆らえない。
逆らえないというか、好き過ぎて、言うがままになれちゃう気がする。
「今度なんか我儘言ってみなよ。絶対なんでも聞いてくれると思うよ」
ぷぷぷぷぷ、と、楽しそうな勇紀に、何だか可笑しくなってしまう。
281
お気に入りに追加
5,157
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる