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◇そばに居る意味

「へんな気分」

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「そろそろヤバいよな。行くか」
「……うん」

 そう言った玲央の手に引かれて、ベッドから下ろされる。
 玄関に向かう途中で、玲央が苦笑しながら言った。

「結構前にチャイム鳴ったよな……」
「ここ、チャイム聞こえるの?」
「ん、静かな時間は聞こえる。……もしかして、さっきの、聞こえてねえの?」
「いつ?全然聞こえなかった」

 玲央が、玄関に置いてた鞄を渡してくれながら、にや、と笑った。


「ちょうど最後イった時」
「――――……っっっ」

 ……もう。真っ赤になるしか、無いと、思う……。
 エレベータに乗ると、玲央が、そっと頬に触れてきた。

「優月」
「うん?」

「今日、バンドの練習20時くらいまで。優月は?」
「明日の10時に新宿行く……家帰って、スーツ着てからだけど」

 そこまで聞いて、玲央がふ、と笑んだ。

「そこまで空いてるって事?」
「うん」

「じゃあ5限終わったら――――……」
「クロのとこに居るね」

「分かった」

 最後に一度キスされて、エレベーターを出た。
 校舎の外で玲央と別れて、授業の校舎へ急ぐ。人、まばらなので、ほんとに結構遅刻かも。

 ……ていうか。チャイム……オレ、全然、聞こえてない。
 どんだけ、必死かな……。ちょっと、恥ずかしいな。玲央は、ちゃんと聞こえてるし……。


 急ぎながら。
 このお昼時間に言われた、様々な事が、頭にぐるぐるしてて。


 しかも。

 ……………………玲央と、しちゃった。


 うわーうわーうわー……。
 やばい。1人なのに。顔、熱い……。

 かああああああ。 顔が真っ赤になっていく。
 早足で歩きながら、俯くしか、ない。


 わー、もう、無理……。
 何も考えないで、授業いかなくちゃ。考えない考えない……。


 教室にそっと入ると、もう教授は居たけど、まだ中はざわざわしてて。
 滑り込んだ席の隣に座ってた友達に「どした遅刻。午前も居たのに」と言われて、ちょっとね、と苦笑い。「まだ出席取ってねーから良かったな」と、教えてくれた。

 あ、良かった。
 ほっとしながら、筆記具を出していると。

 友達がじー、と見つめてくるので、ん?と首を傾げたら。

「なんか、優月、すげーぽわーんとしてね?」
「え。 そ……そう? そんなこと、ないけど……」

「さては……」

 ……なななななに? さては、なに??
 ヤバいことしてたのって、まさか、顔でバレるの??

 ドキドキしながら、かなり引きながら、言葉を待ってると。
 友達は、クスクスと笑って。

「昼寝しちゃったんだろー、それで遅れそうになったんだろ」
「――――…………う、ん。そう……」

「まあ、分かる。食事の後って、眠くなるよなあ~」

 強張ってた力がふ、と抜けて。

 はー。良かった。
 思いながら、うんうんそうだよね、と頷く。

 ああ、良かった。昼寝ってことにできて。


 …………あんなこと。バレたら……。


 ………………って、あんなこと……って……。
 ――――………………うっわ。やばい。



 なんか。
 ――――…………中、ぞく、ってする。



 手で口を押えて、少し俯く。
 教授が話し出したから、皆の視線は、前。

 それだけが救い。

 顔、熱いし。
 ――――……ぞくぞくするし。

 気付くと、手が震え出しそうで。ぎゅ、と握り締める。


 なんか、ヤバい。
 …………こんなとこで、オレ――――……へんな気分になるとか……

 わーん、もう、病気かな、これ…………。



 ……っ皆がまじめに勉強してるのに、なんか、ごめんなさい……。


 もう。
 玲央が、やらしすぎるから。毎日色んな事するから……。
 オレ、性欲どこかに落としてきたのかなと、思ってたレベルの、草食の人種だと思ってたのに。
 1週間前のオレとは、全然違う気がする。


 ……玲央のエッチ。
 ……………………玲央に文句を言いながら、玲央を思い浮かべてると。


「――――……」


 うー……。

 ……なんかもう。
 こんな風にでも、顔思い出すだけで、嬉しくなるって。



 ………………大好き。
 どーしよ。ほんとに。


 玲央が、ずっと、今みたいに、オレと居てくれたら。
 ……本気で、他に何もいらないかも。


 居てくれようとしてるのは。
 なんかさっき、すごく分かった。




 そんな事をぼーっと考えてたら、すこし落ち着いて。
 顔の熱も戻った。


 とりあえず。あとで会えるまで、ちゃんと勉強しよ。
 気合入れて、前を向いた。







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