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◇お互いに。

「悔しいな」*優月

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 朝、連絡がきて、お昼は智也と美咲とご飯を食べる事になった。
 ほんとはお昼、クロの所に行こうと思っていたけど行けないな、と思っていたら、1限が少し早く終わった。

 ダッシュでコンビニに行って、運良く会えたクロにエサをあげていると。
 玲央から、連絡が来た。

 今日も、玲央の事、待ってて良いって。
 今日も一緒に、居てくれるんだ。でも、毎日だけど、いいのかな……と一瞬思ったけど、玲央から言ってくれてるのだから良いんだろうと思って。

 大好きって、入れたら。
 オレも好き、て、返してくれた。


 ――――……玲央って。
 好きとか、返してくれる人なんだ。

 なんか嬉しすぎる。
 滑り込みセーフで入った2限の教室で、いつものメンバーの近くに座ると。

「優月、なんかすげーご機嫌じゃねえ?」
「なんか一目でわかる位ってどーなの」

 周りの友達たちに、笑われる。

 え。そんなに?  
 オレそんなに、ご機嫌??


「なんかお前今週おかしくない?」
「……おかしくは、ないけど」

 なんとなく浮かれてばかりもな、ちょっと気分を引き締めないと。と思いながら、そう返事をしていると。


「あ、なあなあ、優月さあ」

 1人が、そういえば、という顔で、オレを見つめてくる。

「? 何?」
「お前今朝さ、あいつと居ただろ」
「……?」

「あれあれ。去年の学祭のイケメン投票一位の…」
「ああ、バンドやってる奴?」
「名前…… そーだ、神月玲央」
 
 ドキ。
 名前、出てくるだけで、ドキドキしてしまう。

「うん。居たけど……?」
「あいつと、仲いいの?」

「……うん、まあ。最近知り合って」

 頷いてると、周りの皆が、へー、と不思議そう。

「なんか、接点無さそうだけど」
「あいつどんなやつ?」

「え。……んー。優しい、かな」

 そう言ったら、さらに不思議そうな顔をされる。

「えー?優しいとか、かけ離れてそうだけど」
「すげえ派手なイケメンで、バンドやってる奴、優しいとかあんの?」

「……それ、偏見じゃない? すっごく、優しいよ?」

 言い切るけれど、さらに皆の不思議そうな顔。

「優月、なんか、ころっと騙されてそうで心配」
「大丈夫か?」

「ていうか、皆、玲央の事、全然知らないで言ってるじゃん……」

 むー、と思わずちょっと睨むと、皆が苦笑い。
 その中で、一人だけ。

「オレ、あいつ、幼稚園から知ってるけど」

 吉原は、玲央と一緒の、幼稚園からのエスカレーター組なんだ。
 そう思いながら、視線を向けると、皆も、吉原を見る。

「どんな奴?」
「うーん……別に悪い奴ではない、かなあ」

 と吉原は、言いながらも。

「でも、チャラいし。すげーモテるけど、高校位からは相手構わずだし。超冷めてるし。あいつの周りって派手な奴ばっかりでさ。 なんで優月が仲良いのか、正直不思議だけど」

 そんな言葉に、周りの皆は、なるほどー、と言って頷いてる。

「……やっぱそういう奴じゃん」
「優月、友達は選べよ?」

「でも……」

 ほんとに優しくて、一緒に居ると楽しいし。全然冷めてなんかないし。バンドだって派手なだけじゃなくて、すごく一生懸命練習してたし。オレは、玲央の事、大好きだし。

 オレが口を開こうとした瞬間。
 教授が遅れて申し訳ない、とか言いながら、入ってきてしまった。

 もー。このタイミングで来なくてもー!
 どうせなら、もう少し遅れてほしかった。

 仕方なく、出そうとした言葉を飲み込む。

 授業、受けながら、カチカチ、とシャーペンの芯をだして、そのまま固まる。

 ……何か悔しい。
 玲央。優しいのに。

 派手でイケメンなのは、玲央のせいじゃないじゃん。……せいじゃないとかいう言い方もおかしいけど。

 チャラいって、それも見た目からだろうし。
 周りが派手って。 そりゃ玲央みたいな感じの人の周りに、派手そうな人が集まるのは、何か分かる気もするし。

 ……今皆が言ってたの、ほとんど見た目じゃん。

 相手構わずは、まあ……否定できないというか、玲央が言ってるから、そうなんだろうけどさ。 

 ……そうだ。玲央が何で恋人作らないのか聞きなって、蒼くんにも言われてたんだっけ。……何でなんだろう。いつか聞けたら聞いてみよ……。


 さっきまで、玲央の「オレも好き」にウキウキしてたのに。
 それとは全然別の気分で、ふ、とため息をついてしまう。


 ……玲央が、大好き。
 オレにとっての玲央は、ほんとに優しくて、あったかいのに。

 カッコよくて。
 ……何か、たまに、可愛い時も、ある位で。



 別に、皆がそう思ってなくても、関係ないけど。
 でも……ちょっと……ていうか、かなり、悔しいな……。





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