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◇お互いに。

「優月を観察」2*玲央

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「――――……ほんと、クロ、可愛いなー」

 クロに話しかけて、幸せそうな顔、してる。
 こういう時の優月は、無邪気で、純粋な感じで、何だか遠く感じる。

 最初に、乱したいと思ったのは――――……この優月だった気がする。


 でも、乱したいだけじゃなくて。
 あの笑顔をもうちょっと見ていたいとも、思ったっけ。

 乱す方は、叶ってる気がする。
 キスして、触れて、刺激すれば、すぐ快感に落ちる。

 唇を少し開いてキスに一生懸命応えて。頬を上気させて、涙を浮かべて。
 しがみついてくる。

 乱してみたら、ギャップにはまりすぎてしまったのは、オレの方。
 ゾク、と、特有の欲が、背筋を走る。


 あーやば。……なんか。
 ……また触りたい。


 スマホを取り出して。


『優月、今日何限まで?』

 今朝、それを聞くのを忘れていた。後で連絡すると言って別れたので、とりあえず何限までかを聞いてみる。

 ぴこん、と下の方で優月のスマホが鳴った。
 クロを膝に乗せて、ベンチに座りながら、優月がスマホを取り出した。


 スマホを見た瞬間。優月が、ふ、と笑った。


「――――……」


 嬉しそうな顔で。
 スマホを操作してるのが分かる。


 ――――……オレからの、連絡。
 あんな顔で、受けるのかと思うと。


 何だかくすぐったい感覚。
 1人、顔が綻んでしまいそうで、思わず手で口元を隠した。
 窓の方を見てるから、誰にも見られないのは分かっているのだけれど。感情を抑える為にも、手で押さえる。

 なんかほんと――――…… 可愛くてたまらない。

 そんな風に思っていると、すぐにオレのスマホが震えた。


『4限までだよ』
「その後は?」
『何もないよ』

「今日、オレ5限なんだけど」
『待ってていいなら、クロの所で待ってるよ』

 すぐにそう返ってくる。

「じゃあ、待ってて」

 そのメッセージを見た優月が。
 さっきよりも、嬉しそうに、ふわ、と微笑んだ。


『うん、待ってるね』


 笑顔と、素直な言葉に。
 何だか、よく分からない感情に、困って、返事が出来ないでいると。

 優月がまた、ニコニコしながらスマホをいじってる。
 少しして、スマホが震えた。スタンプか何かかなと、思って見ると。
 


『玲央、大好きだよ』という言葉。


「――――……」
 

 ……はー。

 何だかものすごく脱力。
 窓の下の壁に背を付けて、つい、しゃがんでしまった。


「玲央、何やってんの?」

 廊下を通っていく奴らに、笑いながら言われる。


「脱力中――――……」
「何それ」

 笑いながら通り過ぎていく。
 その時、チャイムが鳴った。

 ――――……あ。
 立ち上がって下を見ると。

 優月がめちゃくちゃダッシュで走っていく所だった。
 クロが、優月の後ろ姿を、見送っているように見える。

 クロも、優月が大好きなんだろうな…なんて思いながら、優月の方を見ると。

 あ、もう居ない。
 意外と、足速いよなあいつ。 オレも逃げられたっけ……。
 ぷ。と笑ってしまう。 

 そろそろ教授が来るだろうし、もう優月も居なくなったし、仕方なく教室へと向かいながらスマホを入力する。
  

「オレも、お前が好き」 


 入力画面に、入れた文字。送信を躊躇う。


 ――――……柄じゃない。
 全然、こんなの、オレの柄じゃない。

 言うだけならまだしも、文字として残るのは、何だか、ものすごく、躊躇う。


 でも。
 ――――……あんな嬉しそうな顔で、きっと読んでくれるんだろうと、思ったら。


 少しの覚悟と共に、ぽん、と送信ボタンを押した。


「――――……」


 ……やっぱり、柄じゃない。
 ヤバい。

 送信を取り消そうかと思った瞬間。
 ぱ、と既読がついてしまった。


 どき、と胸が弾む。
 どう、思ってるんだろう。


 すぐに、入ってきた返事は、「玲央、大大好き」だった。

 
「――――……」


 何だか、本当に、優月の事が愛おしいと。
 心から思ってしまうけれど。


 それはオレのせいじゃない。


 絶対こんなの、誰からしたって、可愛いに決まってる。













【後書きです】

◇ ◇ ◇ ◇

ふふ~書いててすごく楽しい…(´∀`)
こういう感じが、好きです。
相手が見てないとこで、相手を好きでたまんない、て感じ。
今回は玲央には見えちゃってますが笑
皆さまはこういうのお好きでしょうか?
それとも早く二人きりになって、て感じかなあ…とも思うんですが(;'∀')。

この先もこんな感じで、周りの人達巻き込みながら、進んでいきますので(^^)
お付き合いいただけますように♡

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