52 / 822
◇2人の関係
「何でこんなに」*玲央
しおりを挟むもうすぐ着く、と連絡が来て、改札に向かう。
もう優月が、改札の外に立っていた。なんだか少し、気持ちが、浮つく。
「優月」
近付きながら、名を呼ぶと。
「玲央…」
すごく嬉しそうに、ふわりと笑う。
……目立たないとか。素通りするとか。言ってたけど。
今となってはなんだかもう――――……そんな訳ない、気がする。
人が大勢いる中でも、すぐに見つけられてしまいそうな、気がする。
……可愛くてたまんねえのって……何でだ?
勝手に動いた手が、優月の頭を撫でていた。
撫でると、また嬉しそうに、微笑む。
「……早く、いこうぜ」
何でこんな、可愛いと思うかな……。触りたくてしょうがない。
優月の背に手を置いて、歩き出す。
途中で一瞬、優月が歩くのを止めたというのか、緩めたというのか。何だかあらぬ方を向いていて。
「……優月?」
聞くと、ん?と逆に不思議そうな顔で振り返ったのが可愛くて。つい、笑んでしまう自分に気づいては、いる。
見つめあうと、少しして、ふ、と視線を逸らされる。
照れてるんだろうなと思うしかない仕草なので、逸らされても、可愛い。
「可愛い」が、自分の中に積もってく気がして、戸惑う。
何でこんなに、可愛いんだろう。
普通に男だし。背も別に小さいとか、めちゃくちゃ華奢だとか、そんなんではないし。……ぱっと見は、やっぱり普通だし。
「――――……」
マンションについてエレベーターに2人になる。
口元少し笑んだまま、優月が見上げてくる。
やっぱ――――…無邪気。
同じ年でも、表情はすごく、子供っぽい。
でも――――……。
「――――……」
そっと、頬に触れて、なぞると。ぴく、と肩が揺れる。
ここで触んないでみたいな顔して、少し退いていく。
普段こんな顔してるくせに、 触れるとすぐエロい顔をする。
赤くなって、涙ぐんで、すぐ息があがって。
ぞく、と背筋を走る、感覚。
――――……やば。
玄関を開けて、優月が靴を脱いで、荷物を下に置いた。
首筋が、やたら綺麗に見えて。
――――……ダメだ。
顔を上げた優月の頬に触れて、口づけた。
「……ん……?」
不思議そうな声。
……やっと、触れた気がする。
深くキスしながら、優月の背を壁に押し付ける。
逃げられないように。
「――――……れ お……」
名を呼ばれて、少しだけ唇を離す。
少しの間、見つめあう。
ふ、と瞬きをして、潤む。 浮かされたみたいに。
「……優月」
「――――……」
唇を深く重ねて、好きに、舌を絡める。
昨日から、何回、こんなキスしたかな。
――――……普段ここまで、キスしねーのに。
「……ん、ン……――――……は……っ」
漏れる声が可愛いから。
――――……声、出させるためにキスしてる気もする。
しがみついてくる、優月の脚を割らせて脚を入れる。
崩れそうな体を支えようとしたのだけれど、もう反応してるのが分かって。刺激したら、唇が離されて、顎が上向いた。びっくりしたみたいな顔。
昨日、初めて色々したけど――――……まだ全然慣れてないだろうし、少し、勢いを緩めないととは、思う。
「――――……優月……」
「……っ……」
思いは、するのだけれど――――……。
「……もっとキスして……お前に触って、いい?」
「――――……っ……」
……ダメだな、もう、早く触りたい。
自分の声が――――…興奮して、少し上がってるのが分かる。
「……嫌なんて……言うわけ、ない……」
赤くなってるくせに、返ってきたのは、そんな言葉。
「――――……ほんと、お前……」
――――…すげえ可愛いし。
306
お気に入りに追加
5,156
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる