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「ほんとに可愛い」2*司

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「……司」
「ん?」

「もう、行かないといけない?」
「――――……んー。でも、もう少し、居る」

 もう少しだけでも、一緒に居たい。


「――――……少しだけ、聞いてくれる?」
「うん。なに?」

 可愛い顔して、なんだろう。
 まっすぐに、湊を見つめて、言葉を待っていると。


「……今日オレ、クラスの奴と、すこし話したんだ」
「ん?」

「……話しかけられる用事があって…… 普段だと、頷いて終わりなんだけど…… 司が昨日、話してみなって言ってくれたから」
「それで?」

「すこし話したら……――…… 久住、普通に話すんだなって、笑ってくれてさ」

 ――――……話を聞きながら、ふ、と笑んでしまう。

 頑張って、話したんだろうなあ。

 オレとは話すから、あそこまで苦手だとは思っていなかったのだけれど。
 昨日あんなに話すの苦手って言ってたし。

 オレの言葉で話せた――――……とか、結構すごい事な気がする。


「湊」

 オレが言ったから、ていうのが、余計に嬉しくて。湊の頭をよしよし、と撫でた。


「えらい。頑張ったな、湊」
「――――……」

 言うと、湊が固まってしまった。


「あ。頑張ったってのもおかしい?」

 子供扱いしすぎ? と心配になって、言ったオレに、首を横に振って。


「……ありがと、司」

 ものすごく嬉しそうな顔で、めちゃくちゃ微笑まれた。

 
「――――……みなとー……」

 湊の頭をぐりぐりと撫でて。思わず、苦笑いを浮かべてしまう。

 ……キスしたい。
 ここじゃ無理だけど。


「……可愛すぎて困る、湊…… そんな顔で見ないで」

 恥ずかしそうな顔をするのがまた可愛いけど。仕方ない。
 触れたい気持ちを抑えながら、立ち上がった。


「湊、また後で連絡する。塾頑張って」
「司も。サッカー頑張って」


「ん! じゃあな。塾帰り、気をつけろよ?」
「うん」


 もっと一緒に居たいけど。
 仕方ない。

 湊と別れて、走り出す。
 走りながらも、湊との会話が浮かぶ。



 ――――……恋人、か。
 ――――……恋人。


 やばい。すげー嬉しいかも。

 いつもより相当軽く走り、学校に戻る。
 グランドで、キーパー練習をしてた颯太が1人だったので、そこに向かってまっすぐ駆け寄った。

 げ、という顔の颯太がめっちゃ引いてたが、気にせず、突撃。

「うっわ、お前、一体何?」

 オレに抱き付かれた聡太は、めっちゃ嫌そうだったけど。


「なあ、オレ……――――……湊と恋人になった」
「……ああ、今デートしてきた訳ね」

 颯太が苦笑い。

「なに、昨日の今日で、オッケイでたの?」
「出た!」

「……まあ良かったな。とりあえず、お前練習戻れ。先輩こっち見てるぞ」
「あ。やべ」

 颯太が笑いながら、早く行け、と言う。
 練習に駆け戻りながら。


 離れたばかりの湊に、早く会いたいなと思ってしまった。


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