【ひみつの巣作り】完結

悠里

文字の大きさ
上 下
191 / 216

第191話 呼び出し

しおりを挟む

「――――……先輩ってさ」
「うん」

 匠はオレを見て、なんだか眉を寄せる。

「オレが過去に出会った人の中で、いっっちばん、鈍い」
「えっ! なにそれ。ひどくない?」
「ひどくないです」

 はー、と深いため息をつきながら、フランクフルトを保温の箱に移していく匠。

「つか、オレ、かなり上位ランクのαですからね。家柄的にもね。つーかモテないはずないし。はーもう、その質問されたの、はじめてかも。はーもうマジで、先輩、無理」
「……ええ……なんかごめん……」

 そんなはーはー言わなくても……。
 
「いや、モテるんだろうなぁって、普通に思ってるよ? ごめん、変なこと、聞いて」
「はー、もういいです。もうマジで」
「なんかごめんって……」

 とそこへ、昴が「慧、次焼いて。このストックもらってく」とやってきた。

「うん。分かったー」
 頷いて、次の焼きそばを焼く準備を始めたオレの横で、昴が匠を見て、さすが気付くみたいで、ん? と首を傾げた。

「お前は何でそんな仏頂面で、フランクフルト焼いてんだ?」
「……もう、先輩の親友がむかつくんですよ」
「――慧、なんか言ったのか?」

「えー……匠って、モテるの? って聞いただけなんだけど」

 それだけだよねぇ、オレが言ったの。
 モテるよって言ってくれればいいだけじゃんね。

 すると、昴はちらっと匠を見て、匠の背中をポンポンたたいた。

「お前がモテるのは、コイツ以外は、全員知ってるから」
「ですよね……」

 なんかその会話も、変だと思うんですけど。
 と思うけど、なんか言う雰囲気ではない。

 ていうか。なんか面白い。

「なんでそんな仲良いの??」
 くすくすと笑ってしまうと、二人はちらっと顔を見合わせて苦笑する。


「仲良いか、オレら」
「……まあ。仲悪くはないんじゃないですか?」

 そんな二人のやりとりを見て、「仲良すぎるかんじだけど」とオレが言うと、昴がさらに苦笑い。

「とりあえず、次焼いて」
「はーい」

 昴と匠が離れていく。仲良しだよなぁ。ちょっと似てるとこもある気がするような。顔が綻ぶ。

 油をしいて、肉を焼いてた時、スマホが鳴った。
 知らない番号。――なんだろ。

「はい。もしもし?」
「神宮寺慧さんのお電話ですか?」
「はい。そうですけど……」

 肉をジュウジュウ焼きながら、なんだろ、と首を傾げると。

「イケメンコンテストの実行委員会です」
「あ。はい。何ですか??」
「すみません、あとでそちらのお店に行ってもいいですか? お話したいことがあって」
「いいですけど……あ、でも忙しかったら話聞けないかもなので……オレの方から行きますか? 空いたら行きます」
「あ、分かりました、お手数ですけど、よろしくです」
「あ、それって、颯は一緒じゃなくていいんですか?」
「――あ、言い忘れてました、すみません、むしろご本人には内緒で来て下さった方がいいです」

 電話の向こうの声が、なんだか楽しそうな笑いを含んだ。
 
「あ、はーい」

 電話を切って、ジュウジュウしつつ。
 ……はて。何だろう???

 既に颯の優勝が決まりましたー、とか?
 ……ないか、最終的に、ネットの投票を集計してからって言ってたもんな。
 なんだろ。まあいっか、あとでいっとこ。



 にしても。
 匠ってば。
 ……どこ行った?

 見回すと、昴の隣で、売り子をしてる。
 フランクフルトも焼いとくか……。

 横の空いてるところに、フランクフルトを並べて、焼きそばと一緒に焼きながら、なんとなくさっきのことを思い起こす。

 はーもうはーもうって。
 そういう感じで、なんか面白いから、ちょっと、モテるのかなーってききたくなっちゃったんじゃん。

 あいつ、黙って立ってたら、相当イケメンなんだけど、なんか絡んでると、ちょっと面白いんだよな。ふふ。昴と仲良いのも、なんか面白い。


「昴―」
「ん?」
「ここ、少し落ち着いたら、オレちょっとだけ離れるね」
「ん。どした?」
「颯に内緒で、運営来て、だって。イケメンコンテストで」
「ふうん。いいよ、今行ってくれば?」
「じゃあこの焼きそば焼き終えたら行ってくる」

 すると、持ってたヘラを奪われた。

「気になるなら先行ってこいよ」
「――ん、分かったー行ってくる。よろしくー」

 昴にバイバイしつつ、オレは、早足で歩き始めた。すごい人なので、避けながら、十号館を目指す。

 


(2024/10/25)


お知らせ。11月のコンテストについてです。
読みたい方だけおすすみください(´∀`*)。

また詳しくまとめてお話しますが、
あるふぁポリスのBL大賞というコンテストに、颯×慧をエントリーしました。11月がコンテスト期間なので、そこまでにこのお話の本編。完結させられるように。…………とりあえず、目指して!頑張ります。
アルファポリス・悠里で検索してもらえたら、私のページが出てくると思うので(´∀`*)ウフフ 応援に来ていただけたら嬉しいです。

私このお話、去年完結させるつもりだったんですけどね笑
皆さまが、伸びていいよーってどこまでも伸びていいよーって言って下さる方が多かったため、こんなところまで好き放題に書いてきました。(これ!人のせいにしない!)笑

このお話は、書いててすごく幸せなので。
幸せなハッピーエンドにしたいです(*´艸`*)
しおりを挟む
感想 411

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)
BL
アシェルはオルシア大国に並ぶバーチェラ王国の侯爵令息で、フィアナ王妃の兄だ。しかし三男であるため爵位もなく、事故で足の自由を失った自分を社交界がすべてと言っても過言ではない貴族社会で求める者もいないだろうと、早々に退職を決意して田舎でのんびり過ごすことを夢見ていた。 しかし、そんなアシェルを凱旋した精鋭部隊の連隊長が褒美として欲しいと式典で言い出して……。 静かに諦めたアシェルと、にこやかに逃がす気の無いルイとの、静かな物語が幕を開ける。 「望んだものはただ、ひとつ」に出てきたバーチェラ王国フィアナ王妃の兄のお話です。 このお話単体でも全然読めると思います!

処理中です...