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第113話 濃かった昼休み
しおりを挟むあれ。そんなにいう程、普通しないこと?
友達のことは推薦するけど、自分の旦那さまとかはしない??
まあ……確かによく考えると、結構恥ずかしかったりするのかな。
でも、別に……颯、めちゃくちゃカッコいいし、推薦するくらい良いと思うんだけど。と心の中で思っていると。
「先輩、旦那さんのことが大好きみたい」
匠が言うと、女子が余計きゃあきゃあと喜んでいる。
「……っ」
オレは、匠の腕を掴んで引き寄せ、匠の友達たちに背を向けたところで、キッと見つめる。
「匠、それもう、超ハズいから、内緒にしといて?」
「――――……」
近くで目線を合わせると、匠は少しの間オレを見つめて、それから、クッと笑いだした。
「ん、分かりました。言わないです」
「絶対な。なんか、めちゃくちゃ恥ずかしい気がしてきたから」
「分かりましたって」
ん、と見つめあって、腕を外すと、匠の手が背中に置かれて、ぽんぽん、とたたかれた。
「……何?」
「いや、別に。もう言わないですよって意味で」
クスクス笑う匠に、ん、と頷く。
「じゃあオレ、授業行くね。――あ、匠、さっきほんと、ありがと」
「いえいえ」
「じゃな」
そう言ってから、周りの子たちにも笑って見せて、離れようとした時。
「あ、先輩、明日、ここに来ます?」
匠に呼び止められて、首を傾げる。
「うん、出しに来ると思うけど」
「オレも来るんで、絶対来てくださいね」
「? どういうこと?」
「ちょっと確認したいことがあるので、オレも一緒に上行きます」
「あ、うん。わかった」
頷いた時、チャイムが鳴った。
「じゃあ明日ね」
手を振って別れて、階段を駆け降りて、授業の教室に滑り込んだ。
見知った顔の友達の隣に座ると、「超ギリギリ」と笑われる。ちょっと話してて、と笑い返す。
すぐに教授が入ってきて授業が始まって、なんとなく、小さくため息。
……なんか昼休み最後、すげー濃かったな。
颯の元カノ、近くで見ちゃったし。近くで見ると、すっごい可愛かったな。
颯は、あの子と付き合ってても、オレのことが気になって、別れたのか……って、なんか颯って……不思議というか、なんというか。
だって、あん時はオレはαだった訳だし。オレとどうなる気も無かったって言ってたのに、それでも別れたって。
教授の話を一応聞きながらも、なんとなく、続けて考えてしまう。
あの子だけは、颯と別れる時泣いたって、言ってたなぁ。……颯のことずっと好きだったのも有名だったって言ってたし。それでやっと付き合ったのに、誰かと付き合うとかじゃなく、ただ別れたいとか言われたら……そりゃ泣いちゃうよね。想像しただけで、なんかオレまで悲しい。
はー、とちょっと憂鬱な気持ちになってしまいながら、ふと、一緒に居た男が頭に浮かぶ。見たことあるけど、誰だろう。颯、仲良しかな……。
あと、匠。あいつ、多分、一年のすごい美形って言われてる奴、だよなぁ。
イケメンコンテスト出るのか。……まあでも、絶対颯のがイイ男だけど、コンテストってその時の雰囲気とか運みたいなのもあるから。うーん……。オレが颯にギリで勝った時も、ほんと、完全に運みたいなもんだったし。どう考えても、颯のが男っぽくて、カッコよかったし。まあ、あん時はオレってば、めーーっちゃ喜んでしまったけど。オレってば、アホだった……。
……今は、やっぱり、颯には負けてほしくないなあ。
明日さっさと応募出してこようっと。
そんな事を考えながら、午後の一コマ目を終えた。
(2023/12/25)
次は颯出てきます(★´∀`)ノ❤
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