【ひみつの巣作り】完結

悠里

文字の大きさ
上 下
95 / 216

第95話 仲間との飲み会 5

しおりを挟む



「αん時から変に危なっかしかったから」
「……あぁ、なんか分かる」
「一応色々守ってたんで」
 昴の意味の分かんない言葉に、なぜか颯は、ああ、と笑って、ありがとな、とか言ってる。

「……オレ なんか守られてた??」
「いーよお前は、知らなくて」
「そうだな」
 昴と颯に言われて、納得いかないオレを一人残して、なんか皆は、そうだね、うんうん、みたいなノリ。どういうこと。何なの。

「いいよ、慧はもう颯に守られときな」
「…………」

 守られる……??
 誠の言葉に首を傾げながら、颯を見ると、颯はクスクス笑って、守られといて? と笑う。

「別にオレ、か弱くないし……」

 むむ、とむくれながら呟くと。

「でもさ、慧。実際、もうΩなんだし、今までよりももっと、色々気を付けた方がいいよ?」
 誠がちょっと真面目な顔でそう言う。

「ヒートとかも大変なんだろうし。フェロモンが番以外効かないってだけで、別になんだってできるんだから。どんなもんか、様子見ながら、だよな」
「困ったら言えよ。今まで通り」

 健人と昴もそう言って、オレを見つめる。
 ……その心配の感じは、ほんとに心配してくれてるとしか思えなかったので、うん、とだけ頷く。


「なあ、もう二人で暮らすのは慣れた?」

 誠に聞かれて、颯とオレ、顔を見合わせる。

「オレはもともと自分ちに慧が入ってきたからな。すんなり入ってきた気がして、ただ楽しいだけだから。慧は慣れた?」
「――――……」

 ただ楽しいだけ、とか。
 嬉しすぎてニヤついてしまいそうで、顔を引き締めるためのしばしのインターバル。

「あ、まだ慣れてない?」
 オレのちょっとの真顔の沈黙を勘違いした颯に、そう聞かれて焦る。

「もう慣れた」
「ほんとに? いいよ、まだ慣れてなくても全然」
「慣れたよ、楽しいもん」

 とっても焦ってそう言うと、なら良かった、と颯。オレがホッとしたところで、昴が笑う。

「つか、今の焦り方から見ると、どーせ今のは、颯がただ楽しいだけとか言ったから、嬉しすぎて答えられなかっただけだろ?」

 昴の、ニヤニヤした感じの言い方に、むきー、と睨むと。
 颯が、オレを見つめて、そうなのか? と笑う。
 違くないので違うとも言えないし、あってるとも恥ずかしいから言えないし、むー、昴めー。

 颯にもよく色々バレるけど、昴にも……ていうか、誠にも健人にもか。あれ? おかしいな。んー……。

「こういうとこ、ほんと可愛いよね」
 誠がケタケタ笑いながら言う。

「αん時から変わんないけど」
「なー。別にΩになったからとかじゃないよな、慧のこういうの」
「だな」

 昴と誠と健人の三人はなんだかとても面白そうに笑いながらそう言うと。

「まあ、可愛がってあげて、こういうとこ」

 誠が颯に向かってそう言うと、颯は、「分かってる」と即答。

「…………」

 なんか良く分かんないけど、もういいや、ツッコむと、色々恥ずかしいことになりそうな気しかしないし。スルーしよう、スルー。

「まあでも、二人で暮らすのにも慣れてるっぽいし。指輪で、ほんとに結婚してるんだってアピールもできてたし、落ち着くかな」

 誠の言葉に、ん、と颯が頷いて。それから、ふ、と気づいたように。

「でも来週金曜からオレ、二泊三日のゼミ合宿でさ。居ないんだよな」
「へー。じゃあ、慧、一人で留守番なんだ」
「うん」
「落ち着いたばっかの頃に泊りで居ないとか慧には悪いけど」

 颯の言葉に、オレはブンブン首を振る。

「ゼミ合宿はしょうがないじゃん。大丈夫、もう何がどこにあるかは大体分かったしさ」
 オレがそう言うと、昴はククっと笑いながら。

「とか言って、寂しくて泣いてんじゃねーの?」
「しないっつの!」

 怒ってるオレをスルーして、「確かに」と誠と健人も頷いてる。
 颯はそのやりとりを見ながら、あーなるほど、と何かを納得してる。

「……颯、何がなるほどなの?」
 オレがそう聞くと、颯は、オレを見て、クスクス笑う。

「ここ四人で居るの、よく見てたけど。関係性が、大体分かった」
「…………」
 
 ここでのやりとりを見て、関係性がって言われると。
 ……なんか、オレの立ち位置が微妙すぎる気がするので、ちょっとむむむ、と黙っていたら。ぷは、と三人が笑い出す。

「そうそう、こんな感じで超仲良しだよなー?」
「そうそう」
 誠と昴が笑いながら頷いてそれから、健人が颯を見つめながら。

「颯の取り巻きとかとは大分違うけど。でも、慧の周りは大体こんな感じで仲良しっつーか、なんか人が周りにいるよな」
「……なんかオレで遊んでない?」
「可愛がってるの間違いじゃね?」

 健人は言うけど、笑ってるし!
 もー! と健人を見てると、オレの隣で颯が。不意に。

「まあ。……すげー可愛いもんな、慧」

 ふ、と笑いながらそう言って。
 ……何やら、めちゃくちゃ愛おしそうに見つめられてしまい。

 一瞬で、止めようもなく、ぼっと火を噴いたオレ。

 三人に可愛いとか言われれても、全然で、むしろ怒ってたのに。
 ……颯の可愛いは、無理だー。

「…………っっ」

 テーブルに突っ伏して、もう何も聞こえない状態で、しばし、時を過ごした。
 

 オレの仲良し三人と。颯の、初めての飲み会は。
 なんかずっとそんな感じで時が過ぎて。

 始まるまで喧嘩腰っぽかった昴もなんだかすっかり仲良くなって、無事(?)終了した。






しおりを挟む
感想 411

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...