78 / 216
第78話 颯のいいとこ
しおりを挟む「あっでもさ、一年にすっごく美形のα入ってきたって、聞いたことない?」
「ある。つか、見かけたことあるよ」
「へえ~、どんなだった?」
どんなって言われてもな、と颯が笑って、「まあ、美形だったけど」と言うので。
「もしそいつもイケメンコンテストに出てきたら、颯さんは勝てますか?」
そう聞いたら、クスクス笑って、見つめられる。
「慧の推薦文が良ければ、勝てるんじゃねえの?」
「えっ、そこ重要??」
「さあ? 大事かも?」
颯は、ふ、と笑って、そんな風に言ってくる。
「えーオレ立候補したけど、何も考えてなかった……颯のいいとこなら、いっぱい書けると思って……」
「――――……」
「何書こう~。まだ時間あるよね?」
「来月くらいかな」
言いながら、颯はオレの脇に手を入れて、よいしょと上に持ち上げた。枕にとふ、と寝かされて、ん? と上向くと、「キスしていい?」と聞かれる。
「え。……うん。いい、けど」
なんだか、ちょっとその気っぽい颯の顔。
急になんだろう、と思いながら見つめていると、顔の横で、手を繋がれる。
うわ。照れる……。
一瞬でカッと赤くなったオレに、両手を繋いだまま、颯の顔が斜めに近づいてくる。
「――――……」
柔らかく、優しく、触れる唇。
「……お前、何でそんな、可愛いのかな」
「――――……?」
何が。どれが……。
颯の可愛い、は、何をそう思うのか、よく分かんないことの方が多い気がする。
「――――……オレのいいとこって、何?」
ちゅ、と唇にキスされながら、聞かれる。
「ん……?」
見上げて、聞き返すと、颯は、ふ、と微笑んだ。
「さっき言ったろ。颯のいいとこなら、いっぱい書けるって」
「え。…………あ」
言った。かも。
……あ、それ。可愛い、て……?
「ん、ン」
ちゅ、ちゅ、と、唇や頬にいっぱいキスされて、恥ずかしすぎて、ぎゅ、と目を閉じる。顔の横で、両手をしっかり繋がれてるから、顔ちょっとしか背けられないし。
「そういうのぽろっと言って、自分がそういうのを言ってることに全然気づいてないのが、すげえ可愛いんだよな……」
「……?」
今言ったの良く分かんない。
「……気づいてないのが、可愛いの?」
「そう。自分が結構すごい殺し文句的なこと、言ってるのに、いっつも慧は、気付かない」
「……オレいっつも言ってる?」
そんな恥ずかしいことしてる? つか、さっきのって、殺し文句って言うの?
「……いい、気付かなくて。そのまんま言ってろよ」
クスクス笑いながら、颯はオレにキスの嵐。
わーん、なんかくすぐったいし、恥ずかしいし。これなら、思い切り、口にキスされた方がいいんじゃないだろうか……。
多分、真っ赤になって、ぎゅう、と目を閉じていると。
颯が、ふ、と笑う気配。
目を開けると、手が解かれて、頬に触れられた。
「……キスしよ。慧」
「――――……」
なんかオレを、優しく見つめて、キラキラする瞳。
またキュン病が。
……もうキュンキュン病。
胸が、ドクドク、うるさい。
「……颯が勝てるように、頑張って書くね」
言ったら、颯、一瞬キスしようとしてた顔を引いて、オレをまじまじ見つめると。ぷ、と笑って、「頼んだ」と言うと。
今度こそ、ゆっくり、唇が、重なった。
まさかそこからまた抱かれちゃうとは思わなかったけど。
……颯って、そういうの、強すぎるよな。
応えちゃうオレもオレだけど……。ていうか、颯に迫られて、応えないとか無理だな、オレ……。
なんかもう。
自分で言うのもなんだけど。
結婚して過ごす二回目の週末も。
なんだかとってもラブラブ(?)に過ごしそうな気がする。
707
お気に入りに追加
4,097
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる