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第77話 コンテスト
しおりを挟むなんとなく完全に眠るほどでもなく、颯の腕の中で、ぼーとしていると。
「慧、起きてる?」
「……うん?」
「学園祭、でさ」
「あ、うん。再来月のでしょ」
「またイケメンコンテストやるんだってさ」
「そうなんだ。……颯、去年、優勝してたよね」
まあ参加を聞いた時に、優勝するだろうな、と思ったけど。
「去年、慧は何で出なかった?」
何で出なかったって……うーん。理由があるとするなら。
「……颯と張り合うの疲れてた、からかも」
「まあ……中高ん時も勝ったり負けたりしてたよな」
「えーでも、オレが勝ったのは一回だけだよ。しかもギリギリ。皆好きだよねー、イケメンコンテスト」
「そーだな」
苦笑いで頷く颯。
「ほんと……慧とオレが一緒に居るのを、皆がなかなか信じないのも分かるよな。ライバルだったもんな、ずっと」
「うん。仲悪いと思われてたよね……犬猿の仲、みたいなことよく言われてた」
「まあ……その内分かるだろうから良いけど」
颯の苦笑いに、オレも、笑いながら頷いた。
「颯、出るの? 今年も」
「……オレ、チェスのサークルに入ってるのって言ったっけ?」
「ちぇす……? あ、あれ? ナイトとかキングとか」
「そう。それ」
「……なにそれ。なんか、サークルまでカッコいいってどういうこと」
むむむ、と何だか怒って颯を見上げると、颯は、ぷ、と笑う。
「何その怒り方」
笑いながら、オレの膨らんだ頬を手でぷにぷにと潰す。
「高校ん時週一でクラブ入ったろ。ボードゲームのクラブ選んだんだよ。その先輩達がチェスのサークル作ってて、たまに来てくれたらいいから入ってって頼まれて」
「うん。……それで??」
今イケメンコンテストの話じゃなかったっけ?
「イケメンコンテスト、優勝すると」
「うん」
「サークルに部室が貰えるんだよ」
「部室……ああ、サークルは、部室ないのか」
「そう。部は部屋貰えるけど、サークルはもらえないンだよ、本来は」
「うん。あ、その部室が、優勝するともらえるの?」
「そう」
「それで出たんだ? うわーお疲れ様ー」
そう言うと、颯はクスクス苦笑い。
「推薦者、サークルの先輩だからな」
それを聞いて、オレはふと思った。
「ねね、それ、今年、オレが推薦してもいい?」
「慧が?」
「推薦文とか書くんでしょ? オレが書くー」
「まあ、いいけど……サークル名はチェスって書いといて?」
「うん、分かった。楽しみー。颯また優勝するかなあ」
うきうき楽しみになりながら言うと、「慧は出ないんだろ?」と聞かれる。
「出ないよ、颯と戦うことになっちゃうじゃん」
「慧が出ないなら、オレ、勝てるんじゃねえの?」
「……んん? そう、なの?」
「慧以外に負ける気しないし」
「……オレって、そんなに、イケメン?」
「負けたことあんの、慧だけだし」
……じっと颯を見つめて。
良く勝てたなあ、ギリギリとはいえ。
なんてしみじみ思う。
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