【ひみつの巣作り】完結

悠里

文字の大きさ
上 下
51 / 216

第52話 好きって。

しおりを挟む

 昴とは。
 ずっと一緒に居た。

 オレが颯とバトルしてる間ずっと。中高六年間、ほぼ同じクラスだったし。部活も軟式テニス部で一緒。で、大学も学部一緒だから、一緒。
 颯はサッカー部だったから、テニス部のコートからも見えてて、オレはガキんちょだったから、そこからも、なんかちょっかい出してて。

 その横にずっと居たのが、昴。
 ……そりゃ納得いかないよねと思う。

「あのさあ、誠」
「ん?」
「お前、オレがαん時、好きだった?」
「んん? まあ。好きだったけど」
「オレがΩになったら? 好き、変わる?」
「……変わんねえけど?」
「昴も絶対一緒だから、変なこと言うなよな?」
「……ま、分かった」

 頷いた誠に、ん、と笑って、二階の教室に上がる階段を上り始める。

「つかさ、オレをそういう風に見る奴、居ないと思うし」
「そう?」
 誠は上っていた階段をぽん、と最後勢いをつけて上に立って、オレを振り返った。

「慧は、αん時から、なんか可愛かったけど?」
「げ」
 とっさに漏れた一言に、誠は、可笑しそうに笑い出した。

「なんか、颯に負けるかー!って、頑張ってるとこ、面白くて、なんか可愛くて、よかったよね……ああ、そうか、颯は、そういうのが気に入ってたのかな?」

 クスクス笑いながら、ドアを開けて、教室に入る。

「自分に必死で向かってくる奴、なんか可愛く見えるのも分かるね」
「分かる?…… ていうか、あの頃の颯が、オレを可愛く見てた雰囲気は、全くないけど」
「ははっ。でも、言ってたじゃん、αでも慧が良かったって」
「言ってたけど……」

 席に二人で座って、ペンとノートを出して、まだ先生が来ないので、ちょっと机に肘をついて、誠を見つめた。

「……誠って、好きな子に、好きって言えるの?」
「当たり前じゃん。ていうか、女の子皆好きだけど」
「後ろから刺されないでね?」
 言うと誠は苦笑いして、それから、ああ、と微笑む。

「颯に好きって言ってないの?」
「え、すご、何で分かるの??」
「……分かんない奴居たら変って位、誰でもわかる……」

 誠も肘をついた状態で、オレを見つめてニヤニヤしながら、そう言う誠に、そう? と首を傾げてしまう。

「……オレ、まだ何もちゃんと言えてない。なんか、颯が言ってくれてる時、自分の中でずっと返事してるのに、口から出ないんだよね……」
「あらら。……意地張っちゃってる感じ?」
「意地?」
「負けたくないって頑張ってきたわけじゃん、ずっとさ。好きって言ったら、負けーみたいな?」
「……颯は、言ってくれてるから。負け、とか思ってはないんだけどなぁ」

 んー……。ちょっと困るんだよな。誠みたいに、ほいほい言えたらいいのに。

「……ていうかさ。慧は、颯を好きなの?」
「……っ」
 ぼっ。一気に熱い。

「――――……」
 オレの顔をマジマジと見つめていた誠は、ははっ、と笑った。

「なんか、慧は言えてなくても大丈夫な気がする」
「え……え? そう?」
「うん。大丈夫きっと」
「……? でもちゃんと答えた方が、いいよね?」
「大丈夫、絶対」

 何だかすごく自信をもって、そんな風に言われてしまい、大丈夫なのかな、とまた首を傾げたところで、教授が入ってきた。 



しおりを挟む
感想 411

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...