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第3章 キャンプ

「翌朝」*樹

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「――――……」


 鳥の鳴き声に目が覚めた。
 すごい、鳥の声、する……。

 ――――……ぁ、そっか。
 キャンプに、来たんだっけ……。



「……目ぇさめた?」

 目を開けて、ふ、と息をついたら。
 優しい、声が聞こえてきた。


「――――……うん、さめた」

 ゆっくり起き上がると、もう着替えていた蓮が、近寄ってきた。


「……昨日のこと、覚えてる?」
「……全部、覚えてるよ」

 クスクス笑う。


「――――……樹……」


 オレのベッドに腰かけた蓮が、ふ、と笑って、髪の毛に触れてくる。
 よしよし、と撫でられたところで、ドアが急にがばっと開いた。


「おっはよー! 起きてるかー!」

 山田だった。
 ぱ、と手を離して、蓮が振り返る。


「……朝からうるせーな」

 蓮の苦笑いを含む一言に、山田は。

「いやいや、なんでお前は横澤のベッドの上にいるんだよー」

 意味不明な事を言ってる。
 

「人聞きの悪い…… 樹を起こしてた所だよ」

 蓮が言いながら立ち上がって、荷物からタオルを取り出した。

「樹、顔洗いにいこ」
「うん」

 蓮に言われて、オレも立ちあがった。


「山田、皆もう起きてんの?」
「佐藤と森田は今起こした。 女子部屋はノックしたら起きてたけど、準備中だって」

「了解……朝食、あの入浴施設のレストランって言ってたよな」
「そうだって。8時からだって。あと30分」
「分かった。つかお前も準備してこいよ」

「へーい。つか、加瀬だけだな、ほとんど準備できてんの」

 笑いながら、山田が出ていった。


「樹、着替える?」
「……うん」


 昨日用意していた服をベッドの上に一度置いて、着ていたシャツを脱いで、着替える。


「――――……蓮、何時に起きたの?」
「6時位かな」

「いつも早いなー……」
「……高校ん時の朝練の癖、抜けないんだよなー……」

 高校の頃は。すごく派手な感じで、遊んでそうに見えたんだけど。
 ――――……まじめに部活やってたんだなあって、蓮と話すようになって知った。そういう所も。やっぱり、すごい好き、だなあ、なんて思ったりして。

 ぼんやり思いながら、着替え終わって、タオルを手にしたところで。


「――――……いつき」
「ん?」

 くい、と引かれて。
 ドアに、軽く押し付けられた。


 向こうから開けようとしても、2人の体重で、とりあえず開かない。
 ぎゅ、と抱き締められて。頬にキスされた。


「おはよ、樹」
「……おはよ、蓮……」


 クスクス笑って、すり、と額をすり合わせてくる蓮。

 くすぐったい気分で、ほんわか、幸せな気がして笑うと、もう一度、頬にキスされた。





「いこ、樹」

 蓮がドアを開けてくれたので、先に廊下に出る。


「お。樹ー。おはよー」

 ちょうど隣の部屋から、森田が出てきた所だった。

「山田が、お前が加瀬に襲われてたって言ってた」
「……意味わかんない」

「ほんと、意味わかんねーな……」

 後ろから出てきた蓮が、樹の後ろに立って、森田に突っ込む。
 突っ込みながらも蓮が笑ってたので、森田はべ、と舌を出した。


「……加瀬が樹を可愛がり過ぎだからだろ」
「しょーがねーじゃん。可愛いし。つかお前も可愛がってるよな?」

「――――……なんか、開き直った?」

 クスクス笑って、森田が蓮を面白そうに見てる。


「別に。 顔洗いにいこーぜ」
「おー」

 洗面台に皆で行く。ひとつしかないので、順番に。蓮に背を押されて、オレが一番先に顔を洗うことになった。その後ろで、蓮と森田が話してる。


「森田、今日何するんだっけ」
「あー、巨大迷路いかねえ?」
「巨大迷路?」

「うん。楽しそうじゃねえ?」
「女子とかにも聞いてみよ。まあでも 面白そうだな」
「うん」

 蓮と森田の会話に、頷きながら、歯ブラシをくわえた。
 後ろに下がると、次、森田が洗面台。



「――――……」


 蓮と――――…… 恋人……か。
 ――――……恋人。


 めちゃくちゃ、キス――――……しちゃったなあ……。
 歯を磨きながら、昨日の事、ぽーーーー、と思い出していると。


「……よな、樹?」

 蓮に振り返られて、驚く。



「……あ。ごめん、聞いて、なかった」
「なに、ぼーとしてンの?」

 ふ、と優しく、蓮の目が緩む。


「午前中迷路行って、時間余ったらまたどっか寄って昼食って、午後は買い物いって……そんなんでいいよな?って言ってた」

「あ、うん。いいんじゃない?」
「樹は、どっかいきたい所、ある?」

「んー……あ。昨日のお風呂でたとこに、いっぱいパンフレット置いてあったから後で見てみる?」
「ん、見てみよ」


 森田が同じように歯ブラシをくわえてオレの横に並んで、今度は、蓮が顔を洗い始める。


「樹は、迷路好き?」

 森田に聞かれて。

「巨大迷路、テレビで見た事しかない……」
「やった事ない?」

「うん。ずっと出られなかったらやだなー」
「……トイレ用の緊急避難口とかあるから」

「え、そんなの使っては出たくない……」
「いざとなったらってことだって」

 森田は、おかしそうに笑う。



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