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第3章 キャンプ

「オレ、やばくないか?」*蓮

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 樹に謝って、仲直りが出来て。
 ……まあ別に喧嘩してた訳じゃないんだけど。

 やっと、樹が、ほわほわした顔で笑ってくれて。
 一安心。

 焼きそばの後、皆で片付けをして、入浴施設まで、歩いた。

 歩いているその間に突然、ふっと、気づいてしまった。

 ――――……樹と、風呂に入るって、初めてかも。
 高校の時、プールあったけど、一緒になった記憶もないし。


 ……裸。
 見るのって、初めてじゃねーか……?


 突然意識してしまったら、なんだか動揺。
 大浴場の前で、男子と女子に別れる。

「出たらそっちの休憩所で待ち合せなー」
「はーい、じゃーねー」

 山田の声に女子が答えてるのを聞きながら、「男湯」と書かれた暖簾をくぐって、中に入る。

 やばい。
 ……緊張してきた。

 少し、樹と離れた所のかごに、持っていた袋を置いた。


 意識しない。意識しない。
 あんまり見ないで済まそう。


「樹、腰、細すぎ」
「――――……うるさいなあ」

 山田の声に、樹が嫌そうに言ってるのが後ろで聞こえる。

 ――――……見ない、見ない。


「いいの、お前、そんな細くて。 彼女より細かったんじゃねえ?」
「……森田、もー見るな、近寄んな」

 樹が森田から離れて、荷物を持って、オレの近くに来た。

 ……ごめん、樹。
 いまだけ、来ないで。

 もう、さっさと中に入ってしまおうと、上を脱ぎ捨てた。


「加瀬、もっと樹に飯食わせろよ」
「……つか、樹、ちゃん食ってるし」

 そう答える。

「オレ、太らないだけだから」

 樹が嫌そうに、そう言ってる。

「ていうか、甘いものとかも好きだし、太らないのが不思議な位」
「ふーん」

 ベルトに手を掛けながら、そう言って振り返ると、森田はそんな返事。

「食ってんのに、そんな細いのか」

「先行くぞー」
 佐藤と山田はさっさと脱いで、行ってしまった。


「加瀬って、良い体。嫌味だな」
「……それはどーも」

「筋肉ついてんなー」
「高校、陸上だからな」

「蓮は筋トレ、続けてるもんね。えらすぎる」

 横で樹がそんな風に言ってる。

 全部脱ぎ終えて、先に行こうかと思ったけれど、なんとなく森田と2人で残したくなくて、用意してるふりで樹を待つ。

「蓮、サウナあるって書いてある。行く?」

 ふっと止まって、壁の張り紙を見てた樹が、嬉しそうな声。

「サウナ、好き?」
「うん。好きだけど、なかなか行かないから、嬉しい」
「確かになかなか行かないな……」

「大学の近くにスーパー銭湯あるじゃん。そこにサウナあるよ」

 森田の声。

「そうなんだ。 スーパー銭湯あるのは知ってたけど…… なかなか大学のそばって、行かないよね? 授業終わったら帰るし」
「え、オレ結構行くけど。一人でも行っちゃう」
「そうなんだ」

 ふ、と樹が笑う。

「今度行こうぜ」
「うん。いいよ」

 森田の誘いに、樹がすぐ答えてる。

 ――――……ほんと。
 今日1日で、ずいぶん仲良くなったな……と純粋に思いつつ。


 ……2人で風呂とか、あり得ない。
 絶対行かせないし。
 

 などと思っていると、横から樹がオレを覗いてくる。


「蓮も行く?」

 すっかり脱ぎ終えた樹に、下からのぞき込まれて。

「そう……だな」

 何とか答える。


「早く入ろうぜ」

 言って、オレは大浴場への扉を開けた。
 中は結構広くて、露天やサウナや水風呂、打たせ湯もあった。

 佐藤達が洗い場で流してるのが見える。

「おっせーな、お前ら」
「露天いってるねー」

 2人がさっさと消えていく。
 樹と森田が歩いてくるのを横目に、椅子に腰を下ろした。

 つか。
 ……樹の方を、ちゃんと見れない。



 ――――……つか。オレ。
 ……樹のことが、大好きだけど……。


 頭撫でたいとか。頬に触れたいとか。抱きしめたいとか。
 ……キス、したいとか。
 ――――……もっと、思うまま、キス、したいとか。

 確かに思ってるけど。




 ――――……体、見れないって。

 やばくないか。




 なんで見れないかも、分かってる。


 ――――……完全に、ヤバい意味で、意識、してしまいそう、だから。


 一緒に同じベッドで寝ても、キスだけで、止めていられるのは、
 それ以上は、考えちゃいけないと思って、タブーにしてて。
 それが、なんとかうまくいってるから。


 ――――……裸を見て、男って事で、ちゃんと認識して、
 逆に意識しなくなれば、それはそれで、いいと思うんだけど。

 ……どう考えても、今見たら、意識しない方にはいけない気がする。


 なのに、樹が隣にきて、さらにその隣に森田が並ぶ。

 ……今だけは隣とか、ほんと来ないでほしい。



「おまえって、男だよなー?」
「……は?」

「なんか白いしキレイだよな――――てか、エロイ?」
「……ぶんなぐっていい?」

 樹の口から、樹にしてはびっくりな発言が飛んで、森田が大笑いしているが、その前の森田の発言。

 ……ほんと、許されるなら、オレがぶん殴ってやろうかな。
 物騒な考えが浮かんでしまう、


「蓮、森田どーにかして……」
「無視しな、樹……」
「そっか、わかった」

 オレの言葉に、樹がうんうん頷いて、頭からシャワーを浴びてる。


「山田たちは露天?」

 森田に聞かれて頷くと、オレも外行ってくるなーと、早々に消えていった。


 樹と二人。洗い場に残される。
 正確には、周りに他の客がいるので二人きりではないのだけれど。


「蓮、サウナ、行く?」
「すぐそっち?」

「うん、行きたい。蓮行かないなら一人で行ってくるからいーよ」
 そんなことを言いながら、樹が立ち上がる。

「行くよ」

 あんな個室に、樹一人で行かせられないし。


 樹の方を見ないようにしながら、一緒にサウナに向かった。





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