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第3章 キャンプ

「車中」*樹

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 佐藤祐さとう ゆうは、いつもなんかすごく優しい。ほわほわしてる。今回は、来れなかった橋本といつも仲良い。

 森田大地もりた だいちは、とにかくはっきりしてるイメージ。ズバズバ物を言う。
 このキャンプの発案者も森田だし、そういう騒ぐこと好きな蓮とは結構気が合うと思うけど……蓮は大学入ってからはあんまり参加してないから、一緒にいる所はあんまり見ないけど。

 ……ていうか、蓮、オレとばっかり居るから。

「横澤ってさ~ 加瀬と高校から仲いいの?」
「入試の時に初めて喋った。 高校の時は接点なかったから」

「え。それで、一緒に暮らしてんの?」
「……うん、まあ……利害が一致して」
「利害って?」

「オレは料理できなくて、蓮は、洗濯とか掃除が苦手って」
「へーーーー。 そんなんで暮らして、うまくいくわけ?」

 そんな風に言われてなんて答えようかと迷っていると、すぐに。

「うまくはいってそうだけど」

 森田は、はは、と笑う。

「パッと見、全然タイプ違うのにな」
「まあ。そうだよね……」

「でもオレ、樹と加瀬が二人でいるのは、なんかわかるけど」

 佐藤が前を見たままで、そう言った。

「分かる?」

「うん。なんか、穏やか。喧嘩とか、しないだろ?」
「――――……うん、まあ、しないかな……」

 なんとなく、前を走っている蓮の車を、眺める。


「そーいや、山田ってなんであっち乗ったか知ってる?」
「?」

「女子3人の中に好きな子でもいんのかな」
「……全然知らないんだけど」

 苦笑いで答えると、森田も「オレも知らないんだけど」と言って笑う。


「今回、あの3人連れてきたのは山田だからさ」
「あ、そうなんだ」

「オレは別に誰でも良かったんだけど……」
「そういえば、蓮が言ってた。今日の女子の中に誰かと付き合ってる子がいるのかなって」

 まあ、一人は蓮のことが好きな子だから……それで山田経由でお誘いしたのかも、しれないけど。

「そういや、2人は彼女居るの?」
「オレは居ないよ」

 森田に聞かれてそう言ったら。森田はふ、と笑った。

「お前にできないのは加瀬が邪魔なんじゃねえ?」
「え、そんな事ないと思うけど。 オレ、好きな子、今居ないし」
「あんだけ加瀬が張り付いてたら、女子もいけないんじゃないの?」
「……オレ、そんなモテないし。 いけないとか、そういうんじゃないと思うけど」

 何言ってるんだろう、この人は。
 そんな気持ちで、森田を振り返ると。

「うっわ、にぶいのな。 なるほど……」

 クスクス笑う森田に、隣の佐藤が、「そういう言い方すんなよ」と苦笑い。

「樹はモテると思うよ。 あのゲームの後だって」
「――――……」

「……加瀬のこと好きな女子にも悲鳴が上がってたけど、 樹を好きな女子からも悲鳴が上がってたし」

 佐藤の言葉に、特に違うとの根拠もないから何も言い返さないけれど、つい、首を傾げてしまう。

 ……誰、オレのこと好きな女子って。
 心当たりがまったくないんだけど。……謎。


「オレそのクラス会、休んだんだよなー、つまんね、見たかった」
「……見なくていいって。なんで見たいの」

 苦笑い。
 すると、森田は、おかしそうに笑って。


「横ざわ……言いにくい、樹って呼ぶことにする。いい?」
「え。あ、うん」

「…樹が、加瀬にキスされて、どんな顔してたのか。見てみたかったな~」
「え、それ、マジで意味が分かんない」

 すぱ、と切ると。 またおかしそうに笑う。


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