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第2章 王様ゲーム
「一緒に寝る」*樹
しおりを挟む蓮が淹れ直してくれたコーヒーを飲んで。
さっきの会話を、ぼー、と思い出す。
ずっと、続く。
……って。
そのずっとって……いつまでの事だと思ってるんだろう。
大学、出るまで?
……その後、も?
うーん。 分かんない、なあ。
でも、今の気持ちがずっと続いていく未来なら。
……大学とか関係なく、ずっと、なんだろうけど――――……。
「…蓮ってさ」
「ん?」
「結婚て、何歳位にしたい?」
「――――……」
蓮が、オレを見て、しばし無言。
え、何。この沈黙は。
オレも何も言えなくなり。
相当な沈黙の後、蓮は、ため息とともに。
「――――……オレ、そんなにはっきりした結婚願望、無い」
「……あ、そう、なの?」
何だか、ほっとして。
……ほっとするって、おかしいのだけど。
……でもなあ。
一番、同居できなくなる原因って。
恋人とか。結婚とか。きっと、そういうのだと思うから……。
「――――……黙ってたと思ったら、その質問って……」
蓮が、急に、ぷっと笑い出した。
「樹、何考えてたんだよ?」
「――――……んーと……」
「ん?」
「――――……結婚とかが、一番離れる原因ななあと思ったから、ちょっと聞いてみた」
「――――……結婚、ね」
今度は蓮がそう呟いたまま、何も言わなくなってしまった。
「――――……樹は、どうなんだよ」
「んー?……蓮より、絶対オレの方が、無いと思わない? 考えた事も、なかったけど……」
「ふうん。そっか」
2人とも、なんだか沈黙のままコーヒーをすする。
「……明日も学校なんだよなー」
「ん。寝る?」
「……蓮は?」
「樹が寝るなら、オレも寝る」
「――――……じゃ寝よっか」
コーヒーを飲み干して、二人で一緒に片づけて。
寝る準備やら、明日の用意やら色々した後。
リビングにいた蓮に、「おやすみ、蓮」と声をかけると。
振り返った蓮に、「樹」と呼ばれた。
「ん?」
蓮の言葉を待ってると。 数秒の沈黙の後。
「一緒に寝ない?」
「え?」
びっくりして。
聞き返すと。
「……嫌じゃなかったら――――…… 一緒に、寝ないか?」
「…………せ、まくない?」
「……樹がいやじゃなければ、いい」
「――――……んー……寝てもいいけど……」
「じゃ、枕もってこいよ」
「あ、うん」
自分の部屋に戻り。
複雑な気持ちで、枕を抱える。
えーと……。
一緒に、寝るの?
別に、嫌ではないけど……。
――――……絶対狭いから、くっついちゃうよな……。
それも嫌な訳じゃないけど……。
「蓮……?」
枕を持って、蓮の部屋をのぞき込むと、蓮はもうベッドに入ってて。
壁側の半分が空いていた。
「枕貸して」
言われて渡すと、ふたつ並べて置かれる。
「入れよ」
「……うん」
蓮の足元の方からベッドに乗って、壁側の半分に横になる。
「電気消すよ。いつもまっくらにしてる?」
「うん」
蓮がリモコンで電気を消す。
カーテンの隙間から、月あかりが入ってきていて。
顔は見えた。
「おやすみ、樹」
「うん。 おやすみ」
横になって、布団を肩まであげる。
――――……なんか変な感じ。
別に隣に寝ても、話すわけでもなく、すぐ、おやすみ、なんて。
話した方がいいのかな。
でも蓮、おやすみって言ったしなあ。
しばらく無言で息を殺していると。
すー、と、蓮の寝息が聞こえてくる。
ぎし、と小さくベッドを軋ませて。少しだけ起き上がって。
蓮を見つめた。
「――――……」
かわいーなー……蓮。
寝つき、いいんだなあ。
すっごく、スヤスヤ寝てる。
――――……なんだかな。
一緒に寝る時がくるとは――――……思わなかった。
蓮のベッドは、オレのベッドより少し大きいみたいで、思っていたよりは狭くなくて。別に密着する訳じゃなかった。
寝顔。
こんなふうに見る時がくるなんて。
不思議。
――――……寝てても、カッコイイんだなあ、蓮。
くす、と笑ってしまう。
「……」
寝る時まで一緒ってなると――――……。
トイレと風呂以外のすべての時間が一緒、のような……。
そんな風に思うと、ちょっと可笑しい。
あ、でも、これって、今日だけ、かな?
どうなんだろ。
一緒に居る居ないとか、あんな話ばっかりしてたから、
一緒に眠りたくなっちゃったのかな。
――――…… 蓮……。
そーと、その頬にぷに、と触れてみた。
なんか、寝てると、無防備で、可愛い……。
ふ、と笑んで。
指を離すと、もう一度枕に頭をのせて横になった。
蓮の横顔をなんとなく眺めながら。
いつしか、眠りに、おちていた。
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