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第2章 王様ゲーム

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「樹、チョコのと、あとは?」

 蓮がカウンターでオレを振り返る。

「せっかくだから食べたいの、いくつか買ってこ」
「…蓮も食べる?」
「ん。樹が好きなの選んで。適当に一緒に食べるから」
 
 言われて、チョコケーキと、チーズケーキと、いちごのショートケーキを選ぶ。

「いいよ、払うから。 さっきの、お詫び」
「お詫び?」

 蓮を振り仰ぐと、蓮はクスクス笑いながら、べ、と舌を出して、唇を指さした。 さっきのディープキスの話だと分かって、ぐ、と言葉に詰まる。

「こちらでよろしいですか?」

 店員の女の子が、蓮に笑いかけている。

 イケメンだ~とか、思ってるんだろうなあ。
 蓮と居ると、女子の視線がちらちらと飛んでくる。

 まあ。やっぱ、目立つもんね。背はまあ高い方だと思うけど、そこまでずば抜けて高いって訳でもないのに。何でこんなに目立つのかなあ? 不思議。


「お待たせ。 帰ろ、樹」

 ケーキを受け取って、蓮がオレのもとに歩いてくる。

「ありがと」
 言うと、蓮は、ふ、と笑む。

「オレもちょっと食べるし」

 そんな風に言う。


 ――――……絵美は、綺麗な子で。
 派手な印象はあったけれど、二人で居ると、結構可愛いとこもあって。
 流されてしてたとは言ったけど、まあそりゃしたら気持ちはよかったし。

 一年半楽しい事もあったけれど。
 やっぱり、人って、もともとの相性ってあると思う。


 黙ってても疲れないで居られる、とか。
 ひとつひとつの言葉が、好きだなー、とか。
 そばに居るだけで、なんか、あったかく感じる、とか。

 最近、蓮と暮らすようになって、なんだか実感している事。


 無理しなくても、いられるって。
 ――――……すごく貴重だなって。



「樹、どした?」


 駅に向かって歩き出した数歩、すこし蓮の背中を見つめながら歩いていたら、すぐ、蓮が振り返って、そう言った。

「ううん。別に」
 数歩足を速めて、蓮の隣に並ぶ。


「ケーキ持つよ。 蓮、食器も持ってるから、ケーキが揺れそう」
「ん。じゃ、はい」

 紙袋を受け取って、ありがとう、と蓮に告げると。

「ん?何が?」とのぞき込まれた。

「――――…ケーキ。買いにいこって、言ってくれてありがと」
「……はは。 お前、ほんと、可愛い」

 クスクス笑う蓮。


 ……可愛いってなんだ?



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