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第2章 王様ゲーム
◇
しおりを挟む「樹、チョコのと、あとは?」
蓮がカウンターでオレを振り返る。
「せっかくだから食べたいの、いくつか買ってこ」
「…蓮も食べる?」
「ん。樹が好きなの選んで。適当に一緒に食べるから」
言われて、チョコケーキと、チーズケーキと、いちごのショートケーキを選ぶ。
「いいよ、払うから。 さっきの、お詫び」
「お詫び?」
蓮を振り仰ぐと、蓮はクスクス笑いながら、べ、と舌を出して、唇を指さした。 さっきのディープキスの話だと分かって、ぐ、と言葉に詰まる。
「こちらでよろしいですか?」
店員の女の子が、蓮に笑いかけている。
イケメンだ~とか、思ってるんだろうなあ。
蓮と居ると、女子の視線がちらちらと飛んでくる。
まあ。やっぱ、目立つもんね。背はまあ高い方だと思うけど、そこまでずば抜けて高いって訳でもないのに。何でこんなに目立つのかなあ? 不思議。
「お待たせ。 帰ろ、樹」
ケーキを受け取って、蓮がオレのもとに歩いてくる。
「ありがと」
言うと、蓮は、ふ、と笑む。
「オレもちょっと食べるし」
そんな風に言う。
――――……絵美は、綺麗な子で。
派手な印象はあったけれど、二人で居ると、結構可愛いとこもあって。
流されてしてたとは言ったけど、まあそりゃしたら気持ちはよかったし。
一年半楽しい事もあったけれど。
やっぱり、人って、もともとの相性ってあると思う。
黙ってても疲れないで居られる、とか。
ひとつひとつの言葉が、好きだなー、とか。
そばに居るだけで、なんか、あったかく感じる、とか。
最近、蓮と暮らすようになって、なんだか実感している事。
無理しなくても、いられるって。
――――……すごく貴重だなって。
「樹、どした?」
駅に向かって歩き出した数歩、すこし蓮の背中を見つめながら歩いていたら、すぐ、蓮が振り返って、そう言った。
「ううん。別に」
数歩足を速めて、蓮の隣に並ぶ。
「ケーキ持つよ。 蓮、食器も持ってるから、ケーキが揺れそう」
「ん。じゃ、はい」
紙袋を受け取って、ありがとう、と蓮に告げると。
「ん?何が?」とのぞき込まれた。
「――――…ケーキ。買いにいこって、言ってくれてありがと」
「……はは。 お前、ほんと、可愛い」
クスクス笑う蓮。
……可愛いってなんだ?
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