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0歳〜10歳

異世界転生

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 「ふえぇぇぇ、ふぐ、ぇっ」

 何処かで赤ちゃんが泣いてる。
 1人で寂しいのかな?

 誰も近くに居ないのであれば、私が抱っこして慰めてあげよう。

 あれ、真っ暗?
 あぁ、目を閉じていたのね。

 寝ちゃってたのかしら。

 目を開けると・・・。

 見知らぬ天井が視界に入る。

 (えっ、ここ何処!?)

 周りを見ると、柵のあるベッドに寝ているのが分かる。
 
 (えっ、柵!?介護ベッドとか?)

 起き上がろうとするが、何故か起き上がれない。
 
 (・・・怪我して起き上がれないとか?でも、何処も痛くない)

 身体は捻れるみたい。
 寝返りをうって、視界に入った手にギョッとする。

 ぷくぷくの小さな手。
 手に力を入れると、シーツを握り皺が寄る・・・。
 
 (これ、私の手だ・・・私赤ちゃんなの?さっきの泣き声は私?)

 余りの出来事に、自然と涙が溢れてきて、大きな声で泣いてしまう。
 赤ちゃん故の癇癪という事にして欲しい。

 「ふぇぇぇぇーん、ふぇっ、うぅ、ふぇっ・・・」

 バタバタッ

 ガチャッ

 扉が開く音がする。

 20歳位の若い女性が入ってきて、私を抱き上げる。

 「まぁまぁ、お嬢様どうしましたか?オムツかな」

 あぁ、デリケートな部分の匂いを嗅がないで欲しい・・・。

 「オムツじゃないみたいですね。目が覚めて1人だったから寂しくなってしまいましたかね」
 
 ガラガラと音の鳴るオモチャを手に握らされ、手を揺らされる。

 「こうやって遊ぶんですよー。ほら、綺麗な音がなりますね」

 (・・・お嬢様。もしかしなくても私は金持ちの娘なのかな。この人は私の世話係かな)

 「そろそろ旦那様が帰ってくる時間なので、一緒にお出迎えに行きましょうか」

 (旦那様、ということは私の父親かな?)

 どんな人か見てみたかったので、手を上げて返事をする。
 
 「だぁ!」

 「まぁ、お返事ですか?ふふっ、言ってること分かっているみたいな反応ですね」

 (あー、私は今赤ちゃん。大人の言ってる事が分かるわけ無いものね)

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 エントランスに向かうと、1人の男性がコートを脱いでいる所だった。
 男性は、此方に気付き近寄ってくる。

 私のほっぺをぷにっと触り

 「シア、ただいま。今日は何をして過ごしたのかな?」
 
 と話しかけてくる。

 勿論、私が答えられる事もなく、父親と思われる男性の指をギュッと握る。
 
 「シアは本当に可愛いな。ほらっ、お父様のところにおいで」

 世話係から父親に移動し、抱っこされる。
 
 父親の顔をジッと見つめる。

 翡翠色の瞳に、銀色の髪は短く整えられている。
 
 (私の父親美丈夫過ぎない!?)

 「そんなにお父様の事見詰めてどうしちゃったのかい」

 私の額にチュッとキスされる。

 バチンッ

 驚いて、両手で父親の顔を叩いてしまった。

 「・・・・・・」

 シーン

 静まり返るホール。

 「・・・シアは、恥ずかしがり屋さんだな。お父様が悪かったよ。許しておくれ?」

 返事の代わりに、ギュッと指を握る。

 「ははっ、許してくれるのかい?さぁ、お母様に会いに行こうか」

 (そういえば、母親が出迎えていない。体調が悪いのかな?)

 歩きながら、父親は私の世話係に話しかける。

 「アナ、シアは今日は何をして過ごしていたのかな」

 (この世話係アナって言うのね)

 「お嬢様は、寝返りをうったり、音の鳴るおもちゃで遊ばれたり、後は絵本の読み聞かせをしました」

 「そうか。特に問題は無さそうだな」

 「お嬢様は本当に手の掛からない良い子です」

 「可愛い上に良い子とは、我が姫のこれからが楽しみだ」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 母親と思われる部屋に入る。

 天蓋付きのベッドがあり、父親が私を抱き上げたままベッドに腰を掛ける。

 「ラルフ様お帰りなさいませ。お出迎え出来ず申し訳ございません」

 「いや、いい。ファミリアは、ゆっくり身体を休める事だけを考えるんだ」

 「はい。フェリシアも会いに来てくれて嬉しいわ」

 多くのクッションに身体を預けた母親の腕に下ろされる。

 ラルフお父様、ファミリアお母様・・・世話係のアナ。そして、私の名前はシアではなく、フェリシア。
 聞き覚えのある名前。

 銀髪にアメジストカラーの瞳のお父様。
 黒髪にルビーカラーの瞳のお母様。
 世話係のアナ。

 チラリと周りに目をやると鏡に映る私が見えた。

 黒髪にアメジストカラーの瞳。名前はフェリシア。

 (あぁ、これお姉ちゃんがやってた乙女ゲームの世界だ・・・)

 赤ちゃんの頭では、処理出来ない内容に、グッタリとしてしまう。

 「・・・フェリシア?ラルフ様っ!」
 
 「これはっ、直ぐに侍医を呼べ!」

 赤ちゃんには、現状を受け入れるだけのキャパシティがなく、異世界転生のお決まりの如く、熱に倒れる事になる。

 高熱が2日続き、その後も微熱が3日程続き、6日目にやっと動ける様になった。
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