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二章 精霊姫 人間界に降りる

お仕置き

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 ロイ義兄様に連れられて戻ると、ミリア達が心配そうに待っていた。

 「リア義姉様!大丈夫でしたか?何もされませんでしたか?」

 「えぇ、大丈夫よ?ちょっと彼の周りに結界を張ってあげてただけだから」

 「そうでしたか。でも、1人で男性に近付くなんて危ない真似はもうしないで下さいね」
 
 「そうね。心配を掛けてごめんなさいね。次からは気をつけるから」

 「本当に気を付けてくださいね。もうリア義姉様が居ないと気付いた時のロイ義兄様本当に怖かっただから!」

 「・・・そう。ロイ義兄様本当にごめんなさい。」

 「もう良いよ。さぁ、夕食の準備を始めようか」

 ロイ義兄様の声掛けから、夕食の準備をそれぞれ始めたところで、フォルス様が近寄ってきて小声で話しかけられた。

 「スティーリア様、先程貴方が男性と2人で話している所を見たロイド様・・・彼を殺してしまうのでは?と思うほど、殺気に満ちていましたよ。これからロイド様から離れないように気をつけてください」

 「・・・分かったわ。教えてくれてありがとう」

 フォルス様は、ニコリと微笑み離れていった。

 ロイ義兄様そんなに怒っていたなんて・・・。
 それに、顔を見られたことも怒っていたと思う。
 彼には忘れろと言っていたけれど・・・。まぁ、彼が私の顔を見たところで、どこの誰かなんて分からないから大丈夫かな。

 ◇◇◇

 夕食を済ませ、各自テントに入る。

 テントに入って、ソファーに腰をかけた所で、すぐにロイ義兄様が転移してきた。

 「ロイ義兄様、早いですね。少し自分のテントで寛いでから来るのかと思ってました」

 ロイ義兄様は良い笑顔で歩いてきて、私のすぐ横に腰をかけ、腰に手を回してくる。
 まるで逃さないと言っているようだ。

 「リアは目を離すとすぐ何処かに行ってしまうからね。見ておかないと」

 「・・・先程の事なら反省してます。もうしません」

 「うん、そうしてくれると助かるかな」

 ちゅっとこめかみに口付けられる。
 それは止まる事なく、顔中に口付けられ、徐々にクッションに押し倒され、深く深く口付けられる。

 身体を撫でる手は徐々にショートパンツの隙間から滑り込んでくる。
 
 「ん、ぁ、ロイ義兄様・・・だめっ」

 「うん、だめじゃ無いよ」

 私の言葉をスルーし、手は止まる事なくシャツのボタンを外していく。

 「ロイ義兄様っ!ダンジョンではしないと約束したはずです!」

 「んー・・・その予定だったのだけどね。リアは悪い子だし、お仕置きが必要かなと。それに私以外の男に触れられそうになったのを見るとね・・・我慢ならないんだ」

 「ロイ義兄様・・・」

 「自分でも驚いたよ。私はこんなにも狭量だったのかと。まだ触れられていないのに。ただ触れられそうになっただけで、こんなにも怒りが湧くなんてね。だから、今夜は私が気が済むまで付き合って貰うよ」

 ロイ義兄様は、とても良い表情で微笑んだ。
 満足するまで・・・それって夜明けまでとかって事じゃないよね・・・。

 そして、その予想は的中する事になり、途中で水分補給などで休憩を挟んで貰えたが、朝まで離して貰えなかった。

 ◇◇◇

 【フォルス視点】

 「フォルス、入っても良い?」

 テントに戻って1時間程経った頃、婚約者のミリアが訪ねてきた。

 「どうぞ、どうしたの?」

 「えっとね、まだ眠くないし、特にする事ないから一緒にカードゲームでもしないかなと思って」

 「あぁ、いいよ。」

 「それでね、折角ならお兄様とリア義姉様も一緒に4人でどうかなって思ったんだけど・・・」

 「あー・・・分かった。じゃ、私がまずロイド様に声を掛けてくるから、ここで待っててくれるかな?」
 
 「うん、分かった。」

 ミリアの頭を撫でてから、テントを出る。
 隣にあるテントへ向かいながら考える。

 (ロイド様テントに居るのかな・・・なんとなく、今までの様子を見る限りスティーリア様のテントに居そうなんだよな)

 ロイド様のテントの前で声を掛けるが、やはり応える声はない。
 念のため、テントの中を確認する。

 「ロイド様、フォルスです。中入りますよー」

 声を掛けながら、入口をチラリと開ける。
 中は真っ暗で誰もいない・・・。

 (はぁ、やっぱり・・・)

 自分のテントに戻るとウキウキと楽しそうなミリアが出迎えた。

 「あれ?お兄様達は?」

 「・・・ロイド様は既に休まれていたよ。きっとスティーリア様もお疲れだと思うから、今日は2人でカードゲームをしよう」

 と、嘘を吐く。
 明日朝早くに、ロイド様に説明して話を合わせて貰わなければ・・・。
 ミリアはきっと2人の関係に気付いていない。

 初めてミリアからスティーリア様の話を聞いたのは一年と少し前。
 綺麗で優しいお義姉様が出来たと喜んでいた。

 確かに、初めてお会いしたときは、美しく、そして儚く、捕まえていなければ消えてしまう様な、まるで精霊の様な人だと思った。

 童話の中の人物の様で、現実味のない人だった。
 だが、ロイド様と話しているのを見ていると、精霊ではなく、人間なんだなと感じられた。
 
 そして、ロイド様のリア様への接し方・・・
 それはそれは、大切にしている。妹を溺愛する兄といえば、言えなくもないが、スティーリア様は養子だ。
 義理の妹になる。実際には血の繋がりのない義妹。そこに溺愛という言葉は似つかわしい。
 
 普段は、気をつけているのか、ロイド様からスティーリア様への熱を感じることはない。
 が、今日だけで既に確信出来る程の変化が見られる。

 スティーリア様には決して誰も近付けさせない。
 先程も冒険者の男と話してるのを見ただけで、殺しそうな程の殺気を放ち、魔力がパチパチと弾けていた。
 そこで、冒険者の男がスティーリア様に触れようとしたものだから、瞬時に身体強化をして飛び出したロイド様を見た時は、相手を殺してしまうのではと、本当に心配になった。

 スティーリア様を連れて帰ってきたロイド様は笑顔だったけれど・・・きっと今頃はお仕置きをしているのだろうなと簡単に想像出来た。

 ロイド様と奥様は上手く行っていると思っていただけに驚いたが、貴族なんてそんなものだ。
 側から見て分かるものなど、大したことはない。
 貴族は仮面を被って生きる生き物なのだから。

 私には、ミリアリア以外は要らないよ。
 だから、ミリアリアも私だけを愛していて。 
 

 
 
 
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