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三章 精霊姫 側妃になる

結婚式

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 正妃の結婚式とは違い、国民へのお披露目もなく、王宮内にある教会で、重要ポストにいる臣下と王家と辺境伯という限られた人数で式が行われた。

 これについては、特に不満はない。
 国民へのお披露目パレードなんて見せ物みたいで嫌だし、窮屈なドレスを何時間も着ていたくないので、ささっと式が済ませられるならば、それに越したことはない。

 ただ、精霊達が、キャッキャと興奮して、式の間教会内がキラキラ輝き、精霊達の祝福が凄かったので、参列者達が絶句していた。
 
 ・・・まぁ、これもしょうがないかな。

 王太子殿下とは、教会で、ヴェールをあげた時に2度目の顔合わせになったが・・・精悍な顔立ち、切長の目元がセクシーなイケメン。
 これなら、産まれてくる子は美形だわ!

 ヴェールを上げた王太子殿下は、嬉しそうに目を細めて、優しく唇に口付けを落とした。

 ・・・ん?唇?

 そう!『唇に口付け』をしたの!
 普通でしょ?って思う?思うよね?
 でもね。事前に『式では、額に口付けをします』って、殿下の側近から説明があったのよー!

 アレかな?殿下も緊張して間違えちゃった感じかな。

 私に説明した側近の彼、殿下が唇に口付けしたのを見て、驚愕してたよ。

 殿下のエスコートで、教会から出て行く時は、臣下の人達が、私を値踏みする様に見てきて辟易したな。
 まぁ、夜会には一度だけ出ただけで、お茶会とか社交を一切してこなかったから、初めて見る顔で、こんなの居たか?ってなるのも、しょうがないかな。

 教会から出て、扉が閉まって少し緊張が緩む。
 静かに息を吐き出し、心を落ち着ける。

 ・・・斜め上から視線を感じる。

 話したことないから、もう一度挨拶しておこう。

 「王太子殿下。スティーリア・マグニートでございます。」

 さっとドレスを掴み、カーテシーをする。
 辺境伯滞在中に、しっかり礼儀作法を身に付けたので、完璧でしょ!

 静まり返った廊下で、息を飲む音が聞こえる。
 えーっと、早くなんとか言って欲しいのですけどー。

 「・・・王太子のレオニード・ヴァン・ライオネルだ。此度は、まだ年若いそなたに、側妃として嫁ぐ事になり申し訳ないと思っている。不便がない様、出来るだけ意思を尊重して行こうと思っている。何か希望があればすぐに言ってほしい」

「はい、ありがとうございます」

「疲れただろう。水晶宮でゆっくり過ごすといい。では、先に失礼する。」

 黒髪に金色の瞳。すらっと長い手足、剣術に長けてるだけあって、鍛えあげられた体躯。いやー、イケメンだわー。彼に似た子供産んだら、めっちゃ美形だと思う!

 元々口数の多い人では無いと聞いていたし、女性を侍らすような好色王子でも無い。
 いつも笑顔なキラキラで、なよっとした王子という訳ではなく、精悍で威厳が感じられる王太子。中々好印象だ。
 普段は、余り笑顔を見せることはないが、付き合いの長い側近や正妃の前では、笑顔を見せることもあるとか。

 中々ガードが堅そう。
 今夜は、初夜だけど、大丈夫なのかな。
 流石に、私が嫁ぐ意味もわかってるよね?
 なんなら、私が身籠るまで、正妃との閨は禁止されてるから、私を避けることは出来ないはず。

 まぁ、王家に生まれたものの宿命だよね。

 それにしても、あっさりしてたな。
 私って見染められて嫁いできたんだったよね?

 「姫様。水晶宮へご案内致します」

 辺境伯領から連れてきた侍女が声を掛ける。

 「ここでは、姫様呼びは駄目よ。側妃様呼びが良いかもしれないわね」

 辺境伯領では、精霊姫として、姫様呼びを容認していたが、流石に王宮でその呼び方は不適切だろう。

 「畏まりました。では、側妃様参りましょう」
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