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三章 束の間
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クラスTシャツは、左胸に直径十センチほどの私が描いたロゴマークを印字し、後ろにはアルファベットで学校名とクラス全員の名前を入れることになった。
Tシャツの色は、青色と水色で意見が割れたけど、ポップなイラストに合うのは青色より水色じゃない? という意見が多かったため、水色になった。
そして、女子は髪型をポニーテールで揃えることになった。
それぞれが水色のシュシュを作ってくるように言われたため、家に帰ったらお母さんに余ってる生地がないか聞かないと。
自分で作ろうと思ったことなかったからシュシュの作り方知らなかったけど、調べてみると直線に縫っていくだけだったので、私でもすぐ出来そうだと安心した。
「香織は、リレーと二人三脚かー。昔から足速かったもんね」
「任せて! 私が優勝に導くから!」
「ふふっ、応援頑張るね」
柊真はなんの競技に出るんだろう。
今日は部活がない日だから帰りに聞いてみようかな。
私は競技に参加出来ないかわりに、応援グッズ作りを頑張ることにした。
応援用のメガホンを百円均一で購入し、私が描いたロゴを印刷したシールを貼って、クラスオリジナルメガホンを作っていく。
みんなで一緒に何かを作るって楽しいな。
体育祭は六月だけど、そこそこ暑いだろうということで、うちわも準備することになった。
「うちわって骨組みだけで売ってるものなんだね」
「オリジナルの作りたいって人多いからじゃない?」
「そっか」
うちわのデザインも任せてもらったため、クラスTシャツと同じように、一面には学校名とみんなの名前をアルファベットで印刷したのを貼り付け、もう一面にはロゴとクラスを入れたものを貼り付けた。
ミニサイズのうちわはとても可愛くて、意味もなく手にとってしまう。
「うちのクラスは、如月さんが率先して準備を手伝ってくれたので、めちゃくちゃ進みが早いです」
「え、いや、私はこれくらいしかできないから……」
「とても助かってるよ。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
体育祭では競技に参加できず、クラスに貢献することは出来ない。
だから、せめて他のことで役に立ちたいと率先して準備を手伝っていただけだけど、みんながありがとうって言ってくれるから、涙が出そうになった。
「美月、うちのクラスって仲良すぎじゃない?」
「ね、私も思ってた。みんな良い人すぎて、このクラスで良かったなーってしみじみ思うよ」
「ちょっと、感動しすぎじゃない? 泣きそうじゃん」
「ふふっ、本当にクラスメイトに恵まれたなって嬉しいんだよ」
このクラスで一年間過ごしたかったな。
みんなと過ごせるのもあと少し、夏休み明けには私は入院しているか、もうこの世にいないかもしれない。
体育祭の準備で賑わうクラスで、自分の周りだけ音が消えたような錯覚に陥り、腕をさする。
「美月……? 顔色悪いけど、大丈夫?」
「あ、うん。少し寒気がしただけ。風邪引いちゃったかな」
「えー、私のパーカー着る? 寒かった時用にロッカーに入れてあるけど」
「ううん。そこまでじゃないから大丈夫だよ。ありがとね」
「無理しないでよ? ちゃんと言ってね」
「うん、わかった」
楽しい時間のはずなのに、ふとした瞬間に気持ちが急降下してしまう。
クラスを見渡し、この時間を大事にしないとと気持ちを改めた。
柊真と帰りにアイスを食べていたら「なんの競技に参加するんだ」と聞かれてしまった。
なんの競技にも参加はしないけど……
「香織と二人三脚に出るよ」
「お前ら本当に仲良いよな。体育祭まで一緒に競技出るってさ」
「へへ、仲良しだもん」
咄嗟に、香織が出ると言っていた二人三脚に出ると言ってしまったけど……本番は、捻挫したことにして、見学ってことにしよう。
柊真に嘘をつくのは心苦しいけど……
ちょうど、手芸屋さんの前を通ると端切れが売られていて、そこに水色の生地も見つけたため、見ていくことにした。
「へー、女子はお揃いのシュシュか。そういうのもなんか祭り感あっていいな」
「ね! 私もそう思う。水色であれば、あとは少し模様が入っててもいいみたいなんだよね」
「へー、じゃあ、この水玉模様とかありなの?」
「うん。水色で白の水玉模様の二枚買っていって、一枚は香織にあげてお揃いにしようかな」
「本当に、美月はあいつのこと好きだよな」
「うん、いつも元気貰ってるからね」
「俺からじゃ元気貰えないのか?」
「え……柊真からは元気というか癒し? うーん、なんだろう。満たされる何かかな?」
「なんだそれ」
「こうやってぎゅって抱きついてるだけで、心が満たされるんだよ」
「ちょっ、おまっ、こんなところでやめろよ」
「へへー」
流石にお店でいちゃつくのも駄目かなと思い、すぐ柊真から離れる。
本当に、手を繋いで歩いてるだけでも心が満たされる気がするんだよ?
心の中を取り出して見せられたらいいのにね。
Tシャツの色は、青色と水色で意見が割れたけど、ポップなイラストに合うのは青色より水色じゃない? という意見が多かったため、水色になった。
そして、女子は髪型をポニーテールで揃えることになった。
それぞれが水色のシュシュを作ってくるように言われたため、家に帰ったらお母さんに余ってる生地がないか聞かないと。
自分で作ろうと思ったことなかったからシュシュの作り方知らなかったけど、調べてみると直線に縫っていくだけだったので、私でもすぐ出来そうだと安心した。
「香織は、リレーと二人三脚かー。昔から足速かったもんね」
「任せて! 私が優勝に導くから!」
「ふふっ、応援頑張るね」
柊真はなんの競技に出るんだろう。
今日は部活がない日だから帰りに聞いてみようかな。
私は競技に参加出来ないかわりに、応援グッズ作りを頑張ることにした。
応援用のメガホンを百円均一で購入し、私が描いたロゴを印刷したシールを貼って、クラスオリジナルメガホンを作っていく。
みんなで一緒に何かを作るって楽しいな。
体育祭は六月だけど、そこそこ暑いだろうということで、うちわも準備することになった。
「うちわって骨組みだけで売ってるものなんだね」
「オリジナルの作りたいって人多いからじゃない?」
「そっか」
うちわのデザインも任せてもらったため、クラスTシャツと同じように、一面には学校名とみんなの名前をアルファベットで印刷したのを貼り付け、もう一面にはロゴとクラスを入れたものを貼り付けた。
ミニサイズのうちわはとても可愛くて、意味もなく手にとってしまう。
「うちのクラスは、如月さんが率先して準備を手伝ってくれたので、めちゃくちゃ進みが早いです」
「え、いや、私はこれくらいしかできないから……」
「とても助かってるよ。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
体育祭では競技に参加できず、クラスに貢献することは出来ない。
だから、せめて他のことで役に立ちたいと率先して準備を手伝っていただけだけど、みんながありがとうって言ってくれるから、涙が出そうになった。
「美月、うちのクラスって仲良すぎじゃない?」
「ね、私も思ってた。みんな良い人すぎて、このクラスで良かったなーってしみじみ思うよ」
「ちょっと、感動しすぎじゃない? 泣きそうじゃん」
「ふふっ、本当にクラスメイトに恵まれたなって嬉しいんだよ」
このクラスで一年間過ごしたかったな。
みんなと過ごせるのもあと少し、夏休み明けには私は入院しているか、もうこの世にいないかもしれない。
体育祭の準備で賑わうクラスで、自分の周りだけ音が消えたような錯覚に陥り、腕をさする。
「美月……? 顔色悪いけど、大丈夫?」
「あ、うん。少し寒気がしただけ。風邪引いちゃったかな」
「えー、私のパーカー着る? 寒かった時用にロッカーに入れてあるけど」
「ううん。そこまでじゃないから大丈夫だよ。ありがとね」
「無理しないでよ? ちゃんと言ってね」
「うん、わかった」
楽しい時間のはずなのに、ふとした瞬間に気持ちが急降下してしまう。
クラスを見渡し、この時間を大事にしないとと気持ちを改めた。
柊真と帰りにアイスを食べていたら「なんの競技に参加するんだ」と聞かれてしまった。
なんの競技にも参加はしないけど……
「香織と二人三脚に出るよ」
「お前ら本当に仲良いよな。体育祭まで一緒に競技出るってさ」
「へへ、仲良しだもん」
咄嗟に、香織が出ると言っていた二人三脚に出ると言ってしまったけど……本番は、捻挫したことにして、見学ってことにしよう。
柊真に嘘をつくのは心苦しいけど……
ちょうど、手芸屋さんの前を通ると端切れが売られていて、そこに水色の生地も見つけたため、見ていくことにした。
「へー、女子はお揃いのシュシュか。そういうのもなんか祭り感あっていいな」
「ね! 私もそう思う。水色であれば、あとは少し模様が入っててもいいみたいなんだよね」
「へー、じゃあ、この水玉模様とかありなの?」
「うん。水色で白の水玉模様の二枚買っていって、一枚は香織にあげてお揃いにしようかな」
「本当に、美月はあいつのこと好きだよな」
「うん、いつも元気貰ってるからね」
「俺からじゃ元気貰えないのか?」
「え……柊真からは元気というか癒し? うーん、なんだろう。満たされる何かかな?」
「なんだそれ」
「こうやってぎゅって抱きついてるだけで、心が満たされるんだよ」
「ちょっ、おまっ、こんなところでやめろよ」
「へへー」
流石にお店でいちゃつくのも駄目かなと思い、すぐ柊真から離れる。
本当に、手を繋いで歩いてるだけでも心が満たされる気がするんだよ?
心の中を取り出して見せられたらいいのにね。
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