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辿り至ったこの世界で
昏き澱
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ジークが先行し、エリーナがその後ろに着くという形で、2人は脱出を決行する。
2人が閉じ込められている部屋の窓には板が打ち付けられていて其処から外に出る事は出来そうになかったが、幸い部屋は施錠されているような事も無く、また、見張りも酔っているのかフラつきながらあくびを連発しているような人間であったためにジークが不意打ちで気絶させて、捕らえ、拘束する事によって難無く部屋から逃げ出す事に成功した。
しかし、閉じ込められていた部屋から出ようとそれで脱出が完遂出来た訳でなし。
全ては、連れ込まれたこの建物より逃げられてこそである。
「今、俺達が居るのは……高さからして3階くらいかな。 エリーナ嬢を抱えて飛び降りるには、少し危険だな」
廊下より窓の外を覗いたジークがそのように言った。 曰く、建物から外に逃げるだけならば窓から飛び出すのが手っ取り早い、との事である。
しかし、ジークの言うように2人で飛び降りるのはリスキーだ。
なのでエリーナも「やめましょう? け、怪我でもしたら逃げられませんよ」とその案を否定して、最終的に2人はなるべく足音を殺して建物の探索を始める事とした。
上手く逃げ出す為には2人を拐った誘拐犯に見付からず、騒ぎも起こさず、それでいて静かに速やかに逃げられるのであればそれが最適である故に、出口までの探索は必至である。 そうでなくとも、少なくとも再度捕まる事だけは絶対に避けなければならない。
なので、建物の中を誘拐犯達に見付からぬよう隠れながら探索してまわって、それで幾つか判った事があった。
それは、2人が連れて来られた場所は、元は貴族か金持ちの商家か何かの所有していた屋敷であったと思われる廃屋であるという事。
その証拠として、幾つかの部屋や調度品の意匠には凝った細工が施されていたり、荒れた廊下には埃を被った古い絵画や割れた壺らしい陶器が散見された。
そして、そうしたこの廃屋のかつての面影を思わせる痕跡を見たジークが、この場所について思い当たる節があると言うのだ。
曰く、アリステルにある貧民街にはかつて爵位を賜る直前に不正・犯罪行為を暴かれて逮捕された大商人が住んでいた屋敷があり、家主が逮捕され、その家族も離散してそれ以降誰も住まわず廃屋となったその場所は、今となっては犯罪者達の溜まり場となっているのだと。
「およそ20年前に件の商人が摘発され、逮捕されたという事件の記録は、実際に俺も見た事がある。 最終的には商人と一部の従業員が逮捕され、商家は潰れて一家は離散したらしい」
「その屋敷が、此処だというのですか?」
「恐らくな。 だが噂がある以上、放っておく訳にもいかないからと以前よりそうした犯罪者の溜まり場となりそうな廃屋は、この屋敷を含めて騎士団に巡回させて警戒していたんだが……」
何故か、今はこうして堂々と誘拐犯達が利用して、のさばっている。
騎士団の怠慢が原因か、巡回している騎士の見逃しでもあったか。 もしくは……犯罪行為の黙認をしていた騎士がいるのか。
浮かぶ可能性に歯噛みしながら、しかしジークは現状を忘れてなどいない。
今は、一刻も早くエリーナを連れて逃げる事が先決である。
故に、側で不安そうにジークの様子を伺っているエリーナに「行こう」となるべく穏やかな声音を選んで声を掛け、再度先導を開始する。
進めば、それなりには誘拐犯の仲間らしき人間と遭遇する。 そしてその度、ジークはそれら全てを締め上げて、時には背後から襲い掛かって首を絞め落とす。
敵を倒す度、それだけ脅威は減っていると、ジークは認識していた。
けれど、それはあくまでジーク側の認識。
エリーナはジークの邪魔とならないように口に出す事なんてなかったけれど、先に進めば進むほど、彼女の中で嫌な予感は大きく膨らんでいっていた。
それは、身震いする程に恐ろしくて、血の気が引く程に昏い。
あくまで予感でしかなくて、確証の無いただの不気味。 恐れるに足らぬ、ただの気鬱のようなもの。
それは当然、こんな状況に陥っているのだから無理もない事だし、そもそもエリーナ自身は零落したと言ってもつい最近までは貴族のお嬢様であり、こんな暴力と悪意に塗れた危険な非日常とは無縁の存在だったのだ。
如何にエリーナが、家から勘当されたと聞かされようと、自らが殺人を犯したと聞かされようと、まるで動じる事など無かったと言えど、間接と直接と、実感の有る無しとでは違い過ぎるだろう。
それに、恐怖とは理屈ではない。
エリーナは理屈でもって恐怖に抗おうと思考を回すけれど、心の内より湧き上がる感覚は、まるで『染み付いた』かのような恐怖だけは、拭い去る事など出来はしない。 それらは、言わば本能にも近い感覚なのだから。
忘れてしまった彼女には、到底超えられやしない。
……ただ、縋るより他には。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やがて探索を続けていると、より強い光が漏れ出ている扉を発見した。
2人は扉に近寄って、ジークが半開きになっている扉から顔を覗かせ中の様子を伺うと、其処には火のくべられた暖炉を前にして向かい合ったソファに腰掛けて談笑をしている男女と、女の傍に控える付き人のような男の姿があった。
片や、軽薄に笑う、2人を誘拐した首魁の男。
そして向かい合う女は、ジークの除く場所からでは顔は覗けず、しかし身形からして高貴な身分の人物であるように見えた。
「しかし、前に世話になってたヤザルの旦那が死んだと聞いた時は商売畳むしかねェと思ってたんだがなァ。 姐さんみてェなロクデナシがいてくれてよかったぜェ」
「あんな輩と一緒にしないでくれるかしら。 まあ、ワタシとしても渡りに船だったから構わないけれど」
愉快そうに、女は笑う。
それよりの会話の流れから、この女こそが此度の誘拐事件の主謀者であるのだとジークは悟った。
それも女は、誘拐した2人、特にエリーナだけでも必ず『約束の場所』へ連れ行くようにと念入りに首魁の男に指示を出していた。 わざわざ伏せて言うのは、誰にも聞かれたくない話が故か。
首魁の男はそれに納得したように頷くと、女に「どうせなら捕まえてきたモン見とくかァ?」と提案し、女も「そうね」と受けて2人して席を立って、部屋を出ようと扉の方へと寄ってくる。
話を全て聞いていたジークは、その内容に色々と思う所はあれども、現状の猶予の無さにその場よりの離脱を判断してエリーナの手を引き「行こう」と言ってその場を離れようと動き出した。
……けれど、エリーナはその手に引かれる事は無かった。
「ヤザ、ル………?」
そう呟くエリーナは、茫然自失としていた。
彼女は「それは、確か」と言葉を続けようとして、しかし途端に音に出そうとしたそれは途端に口の中で雲散霧消し、代わりに苦虫を噛み潰したような悍ましい感覚がその身に、その思考に侵蝕するのを感じていた。
その名に感応するように、彼女の脳裏には獣の如き男が浮かんだ。
更に、次いで浮かぶのは、醜く歪んだ男の顔が2つ。
そして、涙で歪んだ視界の先には汚れた天井ばかりが広がり、身体の芯を貫くような痛みと、心を腐食させるような不快感、後は……ただただ、喪失感ばかりがあった。
大事なものを1日で2つ3つ失くし、喪くし、無くした。
裏切られた、奪われた、壊された。
そんな、そんなそんなそんな……受け入れ難い幻実。
「ぅ……ぇぇ…」
別に、エリーナは全てを思い出したわけではない。
ただ、全てを忘れてしまっているからこそ、今の彼女にとって相当にショッキングな『何か』であったのだ。 故にこそ、それは無垢で脆弱な心には耐え難い光景となる。
血の気が引いて、先ずは平衡感覚が。
次いで足から力が抜けて、最後には自我の糸が切れる。
そうなれば肉体を制御する精神のリソースもまた尽きて、後はその場に倒れるのみ。
ジークはそれに一瞬遅く気付いて手を伸ばすけれど、その時にはエリーナは既に床の上に崩れ落ちた後であった。
そして、廃屋はどこもかしこも実に脆く、たったそれだけの事でも木造りの床は軋む。
「誰だァ!!」
当然、その存在は敵に気取られる。
そうなれば後は、エリーナと共に居るジークに残された手は逃げるのみ。
顔は青褪め、そして怯えているのか酷く震えるエリーナを横抱きにして、軋む廊下を全速力で駆けていく。 逃げて、逃げて、逃げて行くより他の手なんて無いのだから。
「おォう、探せェッ!! なんなら『アレ』でドンパチかましても構わねェからよォ、とっとと捕まえて連れ戻せェ!」
そうまで騒げば、ジークとエリーナが逃げ出した事なんて考えるまでもなく分かる事。 故に首魁の男は、大声をあげて屋敷の仲間全体に指示を出す。
そうなれば、これまで酒を飲むなり馬鹿笑いをしてカードゲームに興じていた輩であっても武器を手に取り外に出る。
逃げた獲物を捕まえようと、その手に自信の得物を携えて。
逃げようとも、悪漢達は追い掛けてくる。
当然だ。
だって、悪夢の夜はまだ始まったばかりなのだから。
2人が閉じ込められている部屋の窓には板が打ち付けられていて其処から外に出る事は出来そうになかったが、幸い部屋は施錠されているような事も無く、また、見張りも酔っているのかフラつきながらあくびを連発しているような人間であったためにジークが不意打ちで気絶させて、捕らえ、拘束する事によって難無く部屋から逃げ出す事に成功した。
しかし、閉じ込められていた部屋から出ようとそれで脱出が完遂出来た訳でなし。
全ては、連れ込まれたこの建物より逃げられてこそである。
「今、俺達が居るのは……高さからして3階くらいかな。 エリーナ嬢を抱えて飛び降りるには、少し危険だな」
廊下より窓の外を覗いたジークがそのように言った。 曰く、建物から外に逃げるだけならば窓から飛び出すのが手っ取り早い、との事である。
しかし、ジークの言うように2人で飛び降りるのはリスキーだ。
なのでエリーナも「やめましょう? け、怪我でもしたら逃げられませんよ」とその案を否定して、最終的に2人はなるべく足音を殺して建物の探索を始める事とした。
上手く逃げ出す為には2人を拐った誘拐犯に見付からず、騒ぎも起こさず、それでいて静かに速やかに逃げられるのであればそれが最適である故に、出口までの探索は必至である。 そうでなくとも、少なくとも再度捕まる事だけは絶対に避けなければならない。
なので、建物の中を誘拐犯達に見付からぬよう隠れながら探索してまわって、それで幾つか判った事があった。
それは、2人が連れて来られた場所は、元は貴族か金持ちの商家か何かの所有していた屋敷であったと思われる廃屋であるという事。
その証拠として、幾つかの部屋や調度品の意匠には凝った細工が施されていたり、荒れた廊下には埃を被った古い絵画や割れた壺らしい陶器が散見された。
そして、そうしたこの廃屋のかつての面影を思わせる痕跡を見たジークが、この場所について思い当たる節があると言うのだ。
曰く、アリステルにある貧民街にはかつて爵位を賜る直前に不正・犯罪行為を暴かれて逮捕された大商人が住んでいた屋敷があり、家主が逮捕され、その家族も離散してそれ以降誰も住まわず廃屋となったその場所は、今となっては犯罪者達の溜まり場となっているのだと。
「およそ20年前に件の商人が摘発され、逮捕されたという事件の記録は、実際に俺も見た事がある。 最終的には商人と一部の従業員が逮捕され、商家は潰れて一家は離散したらしい」
「その屋敷が、此処だというのですか?」
「恐らくな。 だが噂がある以上、放っておく訳にもいかないからと以前よりそうした犯罪者の溜まり場となりそうな廃屋は、この屋敷を含めて騎士団に巡回させて警戒していたんだが……」
何故か、今はこうして堂々と誘拐犯達が利用して、のさばっている。
騎士団の怠慢が原因か、巡回している騎士の見逃しでもあったか。 もしくは……犯罪行為の黙認をしていた騎士がいるのか。
浮かぶ可能性に歯噛みしながら、しかしジークは現状を忘れてなどいない。
今は、一刻も早くエリーナを連れて逃げる事が先決である。
故に、側で不安そうにジークの様子を伺っているエリーナに「行こう」となるべく穏やかな声音を選んで声を掛け、再度先導を開始する。
進めば、それなりには誘拐犯の仲間らしき人間と遭遇する。 そしてその度、ジークはそれら全てを締め上げて、時には背後から襲い掛かって首を絞め落とす。
敵を倒す度、それだけ脅威は減っていると、ジークは認識していた。
けれど、それはあくまでジーク側の認識。
エリーナはジークの邪魔とならないように口に出す事なんてなかったけれど、先に進めば進むほど、彼女の中で嫌な予感は大きく膨らんでいっていた。
それは、身震いする程に恐ろしくて、血の気が引く程に昏い。
あくまで予感でしかなくて、確証の無いただの不気味。 恐れるに足らぬ、ただの気鬱のようなもの。
それは当然、こんな状況に陥っているのだから無理もない事だし、そもそもエリーナ自身は零落したと言ってもつい最近までは貴族のお嬢様であり、こんな暴力と悪意に塗れた危険な非日常とは無縁の存在だったのだ。
如何にエリーナが、家から勘当されたと聞かされようと、自らが殺人を犯したと聞かされようと、まるで動じる事など無かったと言えど、間接と直接と、実感の有る無しとでは違い過ぎるだろう。
それに、恐怖とは理屈ではない。
エリーナは理屈でもって恐怖に抗おうと思考を回すけれど、心の内より湧き上がる感覚は、まるで『染み付いた』かのような恐怖だけは、拭い去る事など出来はしない。 それらは、言わば本能にも近い感覚なのだから。
忘れてしまった彼女には、到底超えられやしない。
……ただ、縋るより他には。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やがて探索を続けていると、より強い光が漏れ出ている扉を発見した。
2人は扉に近寄って、ジークが半開きになっている扉から顔を覗かせ中の様子を伺うと、其処には火のくべられた暖炉を前にして向かい合ったソファに腰掛けて談笑をしている男女と、女の傍に控える付き人のような男の姿があった。
片や、軽薄に笑う、2人を誘拐した首魁の男。
そして向かい合う女は、ジークの除く場所からでは顔は覗けず、しかし身形からして高貴な身分の人物であるように見えた。
「しかし、前に世話になってたヤザルの旦那が死んだと聞いた時は商売畳むしかねェと思ってたんだがなァ。 姐さんみてェなロクデナシがいてくれてよかったぜェ」
「あんな輩と一緒にしないでくれるかしら。 まあ、ワタシとしても渡りに船だったから構わないけれど」
愉快そうに、女は笑う。
それよりの会話の流れから、この女こそが此度の誘拐事件の主謀者であるのだとジークは悟った。
それも女は、誘拐した2人、特にエリーナだけでも必ず『約束の場所』へ連れ行くようにと念入りに首魁の男に指示を出していた。 わざわざ伏せて言うのは、誰にも聞かれたくない話が故か。
首魁の男はそれに納得したように頷くと、女に「どうせなら捕まえてきたモン見とくかァ?」と提案し、女も「そうね」と受けて2人して席を立って、部屋を出ようと扉の方へと寄ってくる。
話を全て聞いていたジークは、その内容に色々と思う所はあれども、現状の猶予の無さにその場よりの離脱を判断してエリーナの手を引き「行こう」と言ってその場を離れようと動き出した。
……けれど、エリーナはその手に引かれる事は無かった。
「ヤザ、ル………?」
そう呟くエリーナは、茫然自失としていた。
彼女は「それは、確か」と言葉を続けようとして、しかし途端に音に出そうとしたそれは途端に口の中で雲散霧消し、代わりに苦虫を噛み潰したような悍ましい感覚がその身に、その思考に侵蝕するのを感じていた。
その名に感応するように、彼女の脳裏には獣の如き男が浮かんだ。
更に、次いで浮かぶのは、醜く歪んだ男の顔が2つ。
そして、涙で歪んだ視界の先には汚れた天井ばかりが広がり、身体の芯を貫くような痛みと、心を腐食させるような不快感、後は……ただただ、喪失感ばかりがあった。
大事なものを1日で2つ3つ失くし、喪くし、無くした。
裏切られた、奪われた、壊された。
そんな、そんなそんなそんな……受け入れ難い幻実。
「ぅ……ぇぇ…」
別に、エリーナは全てを思い出したわけではない。
ただ、全てを忘れてしまっているからこそ、今の彼女にとって相当にショッキングな『何か』であったのだ。 故にこそ、それは無垢で脆弱な心には耐え難い光景となる。
血の気が引いて、先ずは平衡感覚が。
次いで足から力が抜けて、最後には自我の糸が切れる。
そうなれば肉体を制御する精神のリソースもまた尽きて、後はその場に倒れるのみ。
ジークはそれに一瞬遅く気付いて手を伸ばすけれど、その時にはエリーナは既に床の上に崩れ落ちた後であった。
そして、廃屋はどこもかしこも実に脆く、たったそれだけの事でも木造りの床は軋む。
「誰だァ!!」
当然、その存在は敵に気取られる。
そうなれば後は、エリーナと共に居るジークに残された手は逃げるのみ。
顔は青褪め、そして怯えているのか酷く震えるエリーナを横抱きにして、軋む廊下を全速力で駆けていく。 逃げて、逃げて、逃げて行くより他の手なんて無いのだから。
「おォう、探せェッ!! なんなら『アレ』でドンパチかましても構わねェからよォ、とっとと捕まえて連れ戻せェ!」
そうまで騒げば、ジークとエリーナが逃げ出した事なんて考えるまでもなく分かる事。 故に首魁の男は、大声をあげて屋敷の仲間全体に指示を出す。
そうなれば、これまで酒を飲むなり馬鹿笑いをしてカードゲームに興じていた輩であっても武器を手に取り外に出る。
逃げた獲物を捕まえようと、その手に自信の得物を携えて。
逃げようとも、悪漢達は追い掛けてくる。
当然だ。
だって、悪夢の夜はまだ始まったばかりなのだから。
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