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花枯れた箱庭の中で
弔いて、先思う
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朝も、夜も、晴れも、雨も、この花園には訪れない。
ここにあるのは、過去ただそこに在った一つの瞬間だけを永遠に切り取ったかのような停滞だけであった。
故に、この花園は不変の場所であるらしい。
異質で、そして誰かの願いを映したようなこの場所に囚われた私は、贖いのために庭師として在り続けるのだ。
けれど、いかに一時が留められた花園といえども、いかに時の概念と移ろいが無い場所といえども、いつだって刻まれる瞬間は無慈悲なものだ。
人の命。
その残された灯火は須く、終わる時を迎えるものである。
「ああ、もうお嬢さんに教えるような事などありはしないのか………。 儂も、どうやらこれまでのようだの」
お爺さまに庭師としての仕事とその在り方を教わり、習い、そして学ぶべき全てが終わった。
それは即ち、お爺さまとの別れの時。
新たな庭師の役目を担う私がここに在り、そして過去の存在であるお爺さまより全てを受け継いだ。 故に、お爺さまの負うべき役割はもうここに在りはしない。
不要となれば、この花園に存在する事は出来ないのだ。
「短い間でしたが、ご指導ありがとうございました」
「ああ。 役目とはいえ、儂もお嬢さんと話す時間は楽しかった。 儂の亡き後のアリステルの世の話は特にな……どれ、儂が消える時までお嬢さんが生きたアリステルでの事をまた話してはくれぬかの。 どうやら、まだ猶予はあるようでな」
お爺さまは私に庭師としての仕事をご教授下さる合間の休憩時に、今のアリステルがどうなっているかとよくお尋ねになられる。
きっと、自身が生きられなかった世の行く先を見る事が叶わなかったと、一つの未練でもあったのだと思う。
だから尋ねられるままに、私が生きて、見たままの姿を話す。
綺麗な景観を持つ王都。
自然が多い田舎の領地。
昏い澱のような富める貴族の世と、明るく温かい日々を細々と生きる平民の世。
二つが混じわる事など無いけれど、どちらも等しくアリステルの在り方であるのだ。
話すために思い出すたび過っていく思い出は、今やこの手より擦り抜け落ちた過去のもの。 そして残ったものは、記憶のみ。
それを、聞かれるままにお爺さまに話す。
時に客観的判定を、時に私自身の感想を。
話に一つ区切りがつく度にお爺さまは「ああ」と短く相槌を打ち、私は思い付く限り全てを話す。
一つ、また一つと語り、その都度お爺さまは相槌を打つ。
けれどやがて、私が一つの話を終えても相槌は返ってこなくなった。
そして隣を見れば、隣に並び座っていた筈のお爺さまは始めからそこに存在していなかったかのように居なくなっていた。
お爺さまは、天に召されたのだ。
「お爺さま、長い間お疲れ様でございました。 どうか、安らかにお眠りくださいませ」
両手を組み、冥福を祈る。
そして、お爺さまが座っていたそこに、転がっている石を積んでいく。
粗末ではあるけれど、お墓のつもりだ。
大樹の根元の墓石のように立派な細工も無ければ、少し蹴られるだけで崩れてしまいそうな稚拙な造りではあるけれど、何も無いよりは、形が残らないよりは、マシだと思う。
結局最期まで、お爺さまの名も、誰であったのかさえも分からぬまま、別れの時を迎えてしまった。
せめて、名前だけでも知りたかった……。
項垂れ、お爺さまが消えたその場所に建てたお墓を呆然と見やる。
長い長い年月をたった独りで在ってきたお爺さまの心境など、今の私には到底理解出来ようはずもない。 けれど、これから辿る道行きで、私も同じようにこの場所に在り続けるのだ。
それこそ、今の私のような庭師としての新参者が現れるその日まで。
……その日まで、時の概念が無いこの場所で、どれだけ独りで在る事になるのだろうか。
どれだけ、自らが消えるその時を待ち続ける事になるのだろうか。
今は亡きお爺さまが至った結末は、まるで想像もつかない程に長い道のりの果てであり、私も其処に至るにはあまりにも先行きが長過ぎる。
けれど、それもまた、私に課せられた贖いの道なのだろう。
「天より見ていて下さいませ、お爺さま。 私も、立派に成し遂げて見せますから」
そして、その果てには……また、そちらでお会いしましょうね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
庭師としての役割を終えた老人が今し方、消えた。
それは、罪人達の長い贖いの中で、必ず訪れる解放の時。 新たな罪人と入れ代わり、赦される瞬間であった。
そんな老人の消える瞬間を、車椅子の老人は最期まで見届けていた。
罪人にして新しい庭師たる少女でさえ見逃したかの老人の消えゆく様を、既に曖昧なモノながらも確かにこの花園の根幹に根付く車椅子の老人は、一瞬でさえ見逃さずにいた。
この場所へと至ってしまった哀れな罪人の末路を、せめてただの一人であっても見送る事。
それは、彼がこの場所に根付いた長い年月の中で、いつしか心に決めた弔いであった。
これまでどれだけの罪人を見送ってきた事か。
……どれだけ、続いてきた事か。
今や彼の望みはただ一つだというのに。
車椅子をキコキコと鳴らしながら、朧気な彼は大樹の根元の墓へと向かう。
これもまた、庭師が一人消える度に繰り返してきた事。
己が胸の内を墓前で吐露して、そこにて眠る者に再会を乞うのだ。
どれだけ繰り返してもただの一度だって再会が叶う事など無かったけれど、それだけが彼の望みであるのだから。 それが赦しになると、信じるより他に無いのだから。
それは、既に精神さえ擦り切れて、廃人同然に枯れ果てて、けれどいつまでも役割に呑まれたままの車椅子の老人の最後の希望だった。
故に前の庭師である老人が消えてそれで終わりと墓前に参ろうとした彼は、けれどもその時だけは動きを止めた。 この花園で多くの罪人の最期を見届けてきて、その中で初めての事であった。
止まった彼の視線の先では、新たな庭師である少女が小さく粗雑な墓を造っていた。
墓前に添える花は仕事の中で摘んだ花がらで、死者を弔うにはあまりにも不相応である。
けれど、弔いに外観や見栄など不要なもの。 弔うための意志と想いこそが肝要だ。
色取り取りに花々が咲き誇る園の中で、一人の少女が自作の粗雑な墓でもって亡き者を弔う姿は、車椅子の老人に、かつて在りし日を思い出させる程に鮮烈なものだった。
友達だと言っていた小鳥が死に、亡骸を埋めて冥福を祈っていた彼女の悲し気な横顔。
そんな、些細な記憶だ。
「ぁ、ぁ……あぁぁぁ」
役割に呑まれ、罪悪感から哀れな罪人を弔う事にすら感情を揺らせはしない車椅子の老人は、その些細な記憶ーーー思い出に、その懐かしさに、聴解不能の呻き声を漏らす。
けれどそれは苦悶の声ではなく、喜びの声。
長い時の中で、何一つとして叶う事のなかった願いが成就する予感が、少女の弔いの姿にはあった。
枯れ果てて痩せ細った腕を伸ばし、筋力が削げ落ちて震える腕で虚空を掴む。
掴んだ虚空には何も無いけれど、車椅子の老人にとっての希望はその掌に収まっていた。
小さく粗雑な墓で眠る者を、弔う少女。
その周辺を、無数の小さな光達が漂っていて、その様はまるで先の孤独を覚悟する少女の傍に光達がそっと寄り添っているかのようで。
そして、それは遥か昔に失われた神秘の具現たる光景でもあった。
ここにあるのは、過去ただそこに在った一つの瞬間だけを永遠に切り取ったかのような停滞だけであった。
故に、この花園は不変の場所であるらしい。
異質で、そして誰かの願いを映したようなこの場所に囚われた私は、贖いのために庭師として在り続けるのだ。
けれど、いかに一時が留められた花園といえども、いかに時の概念と移ろいが無い場所といえども、いつだって刻まれる瞬間は無慈悲なものだ。
人の命。
その残された灯火は須く、終わる時を迎えるものである。
「ああ、もうお嬢さんに教えるような事などありはしないのか………。 儂も、どうやらこれまでのようだの」
お爺さまに庭師としての仕事とその在り方を教わり、習い、そして学ぶべき全てが終わった。
それは即ち、お爺さまとの別れの時。
新たな庭師の役目を担う私がここに在り、そして過去の存在であるお爺さまより全てを受け継いだ。 故に、お爺さまの負うべき役割はもうここに在りはしない。
不要となれば、この花園に存在する事は出来ないのだ。
「短い間でしたが、ご指導ありがとうございました」
「ああ。 役目とはいえ、儂もお嬢さんと話す時間は楽しかった。 儂の亡き後のアリステルの世の話は特にな……どれ、儂が消える時までお嬢さんが生きたアリステルでの事をまた話してはくれぬかの。 どうやら、まだ猶予はあるようでな」
お爺さまは私に庭師としての仕事をご教授下さる合間の休憩時に、今のアリステルがどうなっているかとよくお尋ねになられる。
きっと、自身が生きられなかった世の行く先を見る事が叶わなかったと、一つの未練でもあったのだと思う。
だから尋ねられるままに、私が生きて、見たままの姿を話す。
綺麗な景観を持つ王都。
自然が多い田舎の領地。
昏い澱のような富める貴族の世と、明るく温かい日々を細々と生きる平民の世。
二つが混じわる事など無いけれど、どちらも等しくアリステルの在り方であるのだ。
話すために思い出すたび過っていく思い出は、今やこの手より擦り抜け落ちた過去のもの。 そして残ったものは、記憶のみ。
それを、聞かれるままにお爺さまに話す。
時に客観的判定を、時に私自身の感想を。
話に一つ区切りがつく度にお爺さまは「ああ」と短く相槌を打ち、私は思い付く限り全てを話す。
一つ、また一つと語り、その都度お爺さまは相槌を打つ。
けれどやがて、私が一つの話を終えても相槌は返ってこなくなった。
そして隣を見れば、隣に並び座っていた筈のお爺さまは始めからそこに存在していなかったかのように居なくなっていた。
お爺さまは、天に召されたのだ。
「お爺さま、長い間お疲れ様でございました。 どうか、安らかにお眠りくださいませ」
両手を組み、冥福を祈る。
そして、お爺さまが座っていたそこに、転がっている石を積んでいく。
粗末ではあるけれど、お墓のつもりだ。
大樹の根元の墓石のように立派な細工も無ければ、少し蹴られるだけで崩れてしまいそうな稚拙な造りではあるけれど、何も無いよりは、形が残らないよりは、マシだと思う。
結局最期まで、お爺さまの名も、誰であったのかさえも分からぬまま、別れの時を迎えてしまった。
せめて、名前だけでも知りたかった……。
項垂れ、お爺さまが消えたその場所に建てたお墓を呆然と見やる。
長い長い年月をたった独りで在ってきたお爺さまの心境など、今の私には到底理解出来ようはずもない。 けれど、これから辿る道行きで、私も同じようにこの場所に在り続けるのだ。
それこそ、今の私のような庭師としての新参者が現れるその日まで。
……その日まで、時の概念が無いこの場所で、どれだけ独りで在る事になるのだろうか。
どれだけ、自らが消えるその時を待ち続ける事になるのだろうか。
今は亡きお爺さまが至った結末は、まるで想像もつかない程に長い道のりの果てであり、私も其処に至るにはあまりにも先行きが長過ぎる。
けれど、それもまた、私に課せられた贖いの道なのだろう。
「天より見ていて下さいませ、お爺さま。 私も、立派に成し遂げて見せますから」
そして、その果てには……また、そちらでお会いしましょうね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
庭師としての役割を終えた老人が今し方、消えた。
それは、罪人達の長い贖いの中で、必ず訪れる解放の時。 新たな罪人と入れ代わり、赦される瞬間であった。
そんな老人の消える瞬間を、車椅子の老人は最期まで見届けていた。
罪人にして新しい庭師たる少女でさえ見逃したかの老人の消えゆく様を、既に曖昧なモノながらも確かにこの花園の根幹に根付く車椅子の老人は、一瞬でさえ見逃さずにいた。
この場所へと至ってしまった哀れな罪人の末路を、せめてただの一人であっても見送る事。
それは、彼がこの場所に根付いた長い年月の中で、いつしか心に決めた弔いであった。
これまでどれだけの罪人を見送ってきた事か。
……どれだけ、続いてきた事か。
今や彼の望みはただ一つだというのに。
車椅子をキコキコと鳴らしながら、朧気な彼は大樹の根元の墓へと向かう。
これもまた、庭師が一人消える度に繰り返してきた事。
己が胸の内を墓前で吐露して、そこにて眠る者に再会を乞うのだ。
どれだけ繰り返してもただの一度だって再会が叶う事など無かったけれど、それだけが彼の望みであるのだから。 それが赦しになると、信じるより他に無いのだから。
それは、既に精神さえ擦り切れて、廃人同然に枯れ果てて、けれどいつまでも役割に呑まれたままの車椅子の老人の最後の希望だった。
故に前の庭師である老人が消えてそれで終わりと墓前に参ろうとした彼は、けれどもその時だけは動きを止めた。 この花園で多くの罪人の最期を見届けてきて、その中で初めての事であった。
止まった彼の視線の先では、新たな庭師である少女が小さく粗雑な墓を造っていた。
墓前に添える花は仕事の中で摘んだ花がらで、死者を弔うにはあまりにも不相応である。
けれど、弔いに外観や見栄など不要なもの。 弔うための意志と想いこそが肝要だ。
色取り取りに花々が咲き誇る園の中で、一人の少女が自作の粗雑な墓でもって亡き者を弔う姿は、車椅子の老人に、かつて在りし日を思い出させる程に鮮烈なものだった。
友達だと言っていた小鳥が死に、亡骸を埋めて冥福を祈っていた彼女の悲し気な横顔。
そんな、些細な記憶だ。
「ぁ、ぁ……あぁぁぁ」
役割に呑まれ、罪悪感から哀れな罪人を弔う事にすら感情を揺らせはしない車椅子の老人は、その些細な記憶ーーー思い出に、その懐かしさに、聴解不能の呻き声を漏らす。
けれどそれは苦悶の声ではなく、喜びの声。
長い時の中で、何一つとして叶う事のなかった願いが成就する予感が、少女の弔いの姿にはあった。
枯れ果てて痩せ細った腕を伸ばし、筋力が削げ落ちて震える腕で虚空を掴む。
掴んだ虚空には何も無いけれど、車椅子の老人にとっての希望はその掌に収まっていた。
小さく粗雑な墓で眠る者を、弔う少女。
その周辺を、無数の小さな光達が漂っていて、その様はまるで先の孤独を覚悟する少女の傍に光達がそっと寄り添っているかのようで。
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