公爵令嬢の辿る道

ヤマナ

文字の大きさ
上 下
82 / 139
花枯れた箱庭の中で

手放され、手招かれ

しおりを挟む
不変を留めるこの花園に来てどれくらいの時間が経っただろうか。 

ここは、小さな光達の舞う、曇天広がる真昼時の世界。
そんな場所で私は、咲き誇る花々の世話に勤しんでいる。
時の概念や景観の移ろいさえも無いこの空間の中で、私の現は意識の内より薄れていて、どこか懐かしい夢を見ているような気分だ。
頬を撫でる優しげな風に、眼下に広がる色取り取りの花々とその香り。
それらは全て、いつか見た夢の具現のようであった。

「お嬢さん、そろそろ休憩にしよう。 儂とてそう長くはあるまいが、世間話の一つくらいはよかろうよ」

花に水をやったり、時に花がらを摘んだりと花園の庭師としての仕事に勤しんでいると、この花園の庭師としての先人たるお爺さまが休憩を提案してきた。

「はい、分かりました」

この花園に夜が訪れる事は無く、そして私達も同じように疲れる事はおろか睡眠の必要さえ無い故に、休息は特に必要としない。 
けれど、お別れの近いお爺さまと語らう時間を無碍にするほど、私は野暮ではない。 
この方は花園に囚われてからの長い時の中で孤独に奉公を成し遂げた、尊敬すべき御方なのだから。 労われて然るべきだろう。
それに、お爺さまは私が花園の庭師としての仕事を引き継ぐ間の指南役で、教えを請う私を実の孫子の如く可愛がってくれた。
幼少の砌より母と2人きりで過ごし、その母が亡くなって以降はずっとアリーに依存していた頃を思い出して、もしもあの頃に現実のそれとは違う、お爺さまのような祖父がいればと考える程には情も深まっていた。
……いや、本当はそんな綺麗事だけではない。 今更、私の依存気質を見て見ぬ振りをしようだなんて思わない。 
私の心の本質は、その喪失感をお爺さまで埋めようとしているだけなのだ。
この花園に招かれる直前に失った、私自身さえも情を持てていなかった最後の関係性。
そんなものでさえも、失くしてしまえば胸の内には虚無感が巣食ったのだから。
何もかも無くなってしまったから、せめて、もうすぐ消えてしまうお爺さまを看取り、弔いたい。 
胸の内に、思い出として留めておきたい。
ただ、それだけの事なのだ。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


私がなぜ、よく分からない場所で庭師の真似事などしているのか。
その顛末は、ジークと朝食を共にして何か伝えたい事があるから待っていてくれと言われてよく分からないまま別れた、その少し後の事だった。

私はいつもの通り図書館へと入り浸っていた。
日に日に深緑の宮と石碑への興味は深まるばかりで、けれど調査の結果はそう易々と深まらぬまま。 
本を漁り、読み返し、新たな知見と共に宮へと赴く日々を繰り返している。
なぜ深緑の宮と石碑がこうまでも気になるのかは分からないけれど、まるで手を引かれるように探究の手を止める事は出来なかった。
その日も、昼に庭園の手入れをしてから宮の探索に行こうと計画していて、昼食の準備で側を離れているサリーの帰りを待っていた。
王城の図書館には様々な本が納められており、私ほどに入り浸る者はそう居ないけれど、本を探して訪れる王城の勤め人は多くいる。
実際、本を一冊棚から取り出してはペラペラと流し読みをしている間だけでも、数人が出入りする気配があった。
それでもその時の私は、通り過ぎるだけの余人を気にする事なく本を読み進めていた。
そんな時であった。

「いい加減にしろ。 決定は覆らない」

普段であればその程度の、図書館を訪れた他人の会話や独り言など気にも留めない。
けれど、その時聞こえた不愉快そうな声の主に思い当たり、不躾ではあると分かりつつ棚の隙間からそちらを見やる。
するとそこには案の定、父が……ユースクリフ公爵がいた。
近くに誰かいるのか、苛立ちを隠そうともしない形相で舌打ちを一つして、その後に公爵は言葉を続ける。

「あの娘の……エリーナの勘当は決定事項だ。 いい加減、我が家から追放したあの娘の話をするのはやめろ!」

苛立ち、言葉を荒げ、そして最後には怒鳴るように言い放つ公爵。
誰に対しての言葉かは知らないけれど、私はその場にいる事が耐え難くなって、公爵に存在を気取られないよう、ひっそりと図書館を抜け出した。
そうして当ても無く彷徨って、道中で胸がムカムカとしてきてトイレで吐いて、胃の中身を全て吐き切るとまた歩きはじめる。
吐いて体力と水分を失って、軽い脱水症状を起こして朦朧としはじめた意識の中で思うのは、知らぬ間に公爵から捨てられていた事に対する衝撃と納得であった。
勘当、決定事項、公爵家からの追放。
つまりはまあ、捨てられたと。 そういう事である。
まあそもそも、私自身、ユースクリフ公爵家の面々に対して家族の情を持てていたかなんて疑わしいし、特に公爵には間違いなく失望感を持っていた。 
いずれは何処ぞの家に嫁がされて、あの家から追い出されるのだろうとすら考えていた。
ましてや、今の私はいくら法的に裁かれておらずとも人殺しである事に変わりはない。 
それは公爵にとって、私を追い出す都合のいい理由となった事だろう。 体裁よく、邪魔者を家から追い出す好機なのだから。
思えば、罪を裁かれる事もなく、そして法的には無罪とされている私がいつまでもユースクリフ公爵家に帰されず、いつまでも王城に置かれているのもそういう事だったのだ。
既に私には帰る事の出来る場所は無く、故にどう扱うべきかと処置に困っていた事だろう。
全くもって、ジークも人が悪い。 王族である彼とて、私が公爵家を勘当されていると知らされていたのだろうに。 
ならば状況を教えてさえくれれば、修道院なり次の住まいくらい自分で探したというのに。
自然と湧いた乾いた笑いと共に、そう独りごちる。
そうして気付けば、ふらりふらりとあの深緑の宮を目指して歩いていた。
サリーに言葉も告げずに出たから怒られるだろうなとその時になって思い至ったけれど、まあいいかと深く考える事をやめた。 
思考は鈍り、胸中には虚無感が広がっている。
大罪を犯し、大切なものを失い、贖いの機会を与えられず、そして、最後に残った帰る事の出来る場所も失くした。
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフはその立場を失い、名を剥奪されて、ただのエリーナとなったのだ。
……実の父である公爵が嫌いだったし、息の詰まるあの家が嫌いだった。
けれど、そんなものでさえも失くしてしまえば喪失感はあるものらしい。 それは心の内の、ほんの僅かな隙間が空白になったような、そんな些細な喪失感だった。
別に悲しくも何ともない。
ただ虚しいだけなのだ。 
私が嫌いだと思っているように、公爵もまたその嫌悪感から私の事などすぐに切り捨てられると知っていた筈なのに。 
今居る王城とて所詮は一時の仮住まいでしかなく、帰る場所を失くした私に寄る辺は無い。
貴族令嬢から堕した今の私では、いくら良くしてくれるジークやサリーとてやがては離れざるをえないだろう。 貴族と、そうでない者とでは、生きる世界が違うのだから。
公爵家を勘当された時点で、それまでに培ってきた全ては失せたのだ。

だから、あの宮だけが今の私に残された、最後のよすがだった。 
何故かは分からないけれど、その時の私はそう思っていた。
足は自然と宮へ向かい、庭園を抜け、鬱蒼と生い茂る緑の中を石畳を頼りに進む。 
たとえ朦朧とした意識であっても、何度も通ったその道は間違えよう筈もなく、やがて宮へと辿り着いた。
そこで、違和感があった。
いつもであれば、生い茂る緑に阻まれて昼間でさえも薄暗いこの場所に、微かな光が灯っている。 その光は空間の中で小さく、けれど無数に漂って、不気味な宮の周辺を幻想的に照らしていた。
その光景に魅入っていると、光は一つ、二つと私の周りに集まって、まるで戯れるかのように漂いはじめた。
戯れる光に連られて自然と、一歩、二歩と歩んで、気付けば石碑の前まで来ていた。
漂っていた光は石碑に収束していき、自然と私も意識とは関係無くそこへと手を伸ばす。 
触れた石碑は冷たくて、けれどもなぜか、胸の内に広がる虚無感を埋め得る温かさと嘆くような悲愴感があった。 
そして、それを感じると同時に、石碑の正体も悟った。
けれど、合点がいくよりも先に、収束する光の群れはその光量を強めていき、やがて私の視界を奪っていくほどの光となった。
あまりの光に目が眩み、私は瞼を下ろした。

やがて、瞳を焼かんとせんばかりの光が瞼の裏から観測できない程に収まった事を認識し、恐る恐る眼を開く。
瞳を焼くような強烈な光は既に消え、けれども代わりに、視界いっぱいに広がる景色は先程までいた筈の、緑生い茂る深緑の宮のそれではなくなっていた。
荒廃していたはずの宮はかつてそうあったであろう綺麗な景観を保ち、鬱蒼と広がる木々の緑は姿を消して代わりに空には曇天が広がり、足元には雑草の代わりに色取り取りの花々が咲き乱れていた。
深緑の宮で一際大きな古木だったそれは、大樹としての生命を有しているように見える。 そして、その根本にはあの石碑も存在していた。
所々、深緑の宮と類似している点はあるけれど明らかに景観が違いすぎる……いったい、ここは何処なのか。

「……ああ、次の庭師が来たのかね」

状況を判断する間も無く背後から聞こえた声にそちらを振り向けば、そこには車椅子に乗った真黒なボロのローブを身に纏う老人がいた。

「来てしまったのなら、仕方あるまい。 その血の罪を贖いたまえよ」

無機質な声音で業務連絡を告げるようにそれだけ言うと、老人はキコキコと車椅子を動かし、やがて、瞬きの間に姿形さえ残さず消えていった。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


状況を飲み込めず、あの車椅子の老人が誰なのかさえ分からないままこの花園を彷徨って、そこではじめてお爺さまに出会った。
そして、ここがどういった場所であるか。
私達がなぜ囚われたのかという事を、宮に残されていた、過去に同じように囚われていたらしい先人達の日記の記述と共に教えられて、ようやく理解した。
初代国王の血を引く血族と、その罪。
血族が贖いのために至る、罪人の終の場所。
元いた場所に帰れもせず、役目を終えれば消えるのみ。 お爺さまも私に全てを伝えれば、やがてこの場所から消え去る運命にある。
そうして贖いの役目は私に移り、また次に引き継ぐ者が現れるその時まで、私がこの花園を維持し続ける。
それが、血族の贖いにして罰。
かつてこの場所で亡くなった、血族の罪の被害者にして石碑の……いや、墓石の主への弔い。
それこそが、捨てられて帰る場所を失くした、『ただの』エリーナが至った道行きの先であった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...