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5度目の世界で
三つ目の罪
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目覚めた場所が自室のベッドの上だと気付くと、私は襲いくる恐怖心から布団を頭から被って泣きながら震えていた。
私を起こしに来たアリーが何事かと私を心配してくれて、少しだけ安心できた事を覚えている。
アリーは私の乳母で、幼い頃から私を見てくれなかった母の代わりに常に付き添ってくれた侍女で、私の大好きなもう1人の母親だ。
赤子の頃からアリーに育てられ、遊ぶ時も、お勉強の時も、お稽古の時も、食事の時も一緒に居てくれたし、お風呂の世話もしてくれて、シャンプーの時にアリーの指先でわしゃわしゃと頭を触られるのが好きだった。
今思えば、あれも全部侍女としての仕事であり、主従の一線は超えていなかったのだけれど、それでも、父にも母にも見向きもされなかった私はアリーのことが大好きだった。
アリーのおかげで心を落ち着かせることができた私は、アリーを部屋から下がらせて、これからどうするべきかを考えていた。
もうジークに愛されないことは知っている。
父はいざとなれば平気で私を切り捨てる。
屋敷でも、学園でも、どこに行っても対等な愛をくれる人は居ない。
そんな私に残されたのはアリーだけだった。
幼い頃から父にも母にも求められず、そしてもうジークに愛してもらえない事が確定したならば、私が縋れるのはもうアリーしかいなかった。
私を見てくれるアリーとなら、たとえ対等でなくとも、本物でなくとも、私を娘として愛してくれるだろう。
だって、アリーは私の乳母で、産みの母よりもずっと私の側に居てくれる、私の本当の母親。
主人と侍女という立場の壁こそあれども、私もアリーを母親として愛するわ。
だからお願いよアリー、私を愛して。
アリー、アリー、アリー、アリー………
「アリー、アリーアリー!! アリーどこに居るの!? ひとりぼっちは怖いの。 1人にしないでアリー!!」
「はい、お嬢様。 アリーはここにおります。 どうなさいましたか? 」
「ああ、アリー。 今日も1人で眠るのが怖いの。 だから私が眠るまで手を繋いでいてほしいの」
「はいお嬢様。 アリーの手でよろしければ、いくらでもお繋ぎしますよ」
私は、アリーに依存していた。
アリーが居ないと怖くて、不安に苛まれて、震えが止まらなくなる。
取り乱して暴れて、姿見を壊してそのガラス片で手を怪我したこともあった。 でも、その時もアリーが手当てしてくれたから大丈夫だった。
朝からアリーが起こしに来てくれて、そしてアリーを1日中、側から離さない。
アリーだって、お花を摘みに行ったりとか、ご飯を食べたりもしなければならないし、お風呂も入らないといけないから、それらを全て一緒にした。
一緒にご飯を食べて、一緒に付いて回って、一緒にお風呂に入って、トイレは流石に一緒に個室に入ることを私が我慢して、5秒に一度アリーがそこに居るか声をかけるにとどめた。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫………
私は誰の邪魔もしていない。
結ばれるべき運命の2人、ジークとあの令嬢の邪魔なんてしていない。
新しい世界で迎えた3度目の朝に目覚めてから一度だって学園には行っていない。
だから、絶対に2人の邪魔なんてし得ない。 あの取り巻きの令嬢達に責任を押し付けられたりして牢獄で凍え死んだり、毒を飲まされて処刑されるなんてあり得ない。
それに、私にはアリーがいる。 いてくれる。 だから大丈夫、大丈夫、大丈夫。
私は死なない、死なない、死なない……。
私は、日々襲いくる不安を拭うためにそう繰り返した。
繰り返した2度の死への時間。
それが私に与えたのは、ジークは私の運命ではないという事実の理解、そして死への恐怖心だった。
ジークに愛されず、あまつさえ軽蔑されたことも辛かったけれど、それ以上に1度目に牢獄での孤独に凍え死んだ結末と、罪人として多くの視線に嫌悪されながら毒杯を煽って逃げるように死んだ結末が怖かった。
凍える牢獄で灯火がフッと吹き消えるように私の命が潰えたことも、毒によって全身が焼かれるような熱に苛まれて命が燃え尽きるように死んだことも。
あれは全部、私が愚かな罪人だったから。 運命の2人を引き裂こうとした悪魔に成り果てたから、あんな死を迎えた。
だから、今回は大丈夫。 アリーの側で、アリーを愛して、アリーに愛されて、それで私は満足だ。
だからそれ以上は求めないし、要らない。
欲張るのが駄目だった。 欲張って求めたことが罪だった。
アリーがいれば大丈夫。 アリーがいるから私は大丈夫。
アリーがいれば、アリーがいれば、アリー、アリー、アリー、アリーアリーアリーアリー………
「………んぅぅ」
ある夜、私は少し催して、目が覚めてしまった。
その夜は少し蒸し暑く、だから寝る前に水を飲み過ぎたのがいけなかった。
不意に目覚めた夜は暗くて、私は恐怖心を掻き立てられて泣きそうになる。
いつもなら、照明を落とされても、寝入るまでアリーが手を繋いでいてくれるから、アリーの手の温もりに安心して眠りにつけた。
でも、目が覚めてもアリーはいない。
それはそうだ。 だって、いつもよりずっと早くに目が覚めて、今はまだ夜中なのだから。
アリーだって眠っている時間だろう。
すぐにでもアリーを呼びだしたくなったけれど、それはグッと我慢した。 だって、わがままを言って、アリーを困らせて、嫌われてしまったら私はまたひとりぼっちになってしまう。
それは嫌だ。 アリーという、唯一の愛を失いたくない。
暗闇の世界は恐ろしくて、でも粗相をするわけにもいかないから怖いのを我慢して、暗い廊下を窓から照らす月明かりを頼りに進んでいく。
暗い、怖い、怖い怖い怖い……
死の影が近付いてくる気がする。
死神が、今にも理不尽な死を振りまきそうな気がする。
あの闇の中から私を嘲笑う声がする。
あちらこちらから、私を蔑む視線を感じる。
死んでしまえ、死んでしまえ。 罪人など死んでしまえと声がする。
そんなはずはない。 だって私は、まだ何もしていない。 私は何もしない。 そんなことをすれば、後は死への道を歩むしかなくなると知っているから。
だから、あれらは全て幻覚、幻聴、錯覚だ。
私は死なない、死なない、まだ、死なない。
怖い、怖い、怖い……けど、我慢して、明日になったらアリーにこの事を褒めてもらうのだ。 アリーなら、きっと頭を撫でて頑張ったねって褒めてくれる。 怖かったねって抱きしめてくれる。だから我慢。
そう、自分に言い聞かせながら何とかトイレまで辿り着き、用を済ませて、また暗くて怖い廊下を今度は自分の部屋に向かって歩く。
また、行きしなと同じ不安に駆られながら歩く道は月明かりがあれども薄暗くて、今にも足元の闇の中に落ちてしまいそうだった。
「ーーーー……ぇ、はい。 その通りにございます」
でも、怖くて、泣きながら廊下を歩く中、聞こえてきたアリーの声。
ああ、そうだ。 私にはアリーがいる。 だから大丈夫なんだった。
アリーなら、アリーなら私を助けてくれる。 怖くて怖くて泣いて震えている私の手を握って、眠るまで一緒に居てくれる。 朝起きる時も、側で私が目を開けた時からおはようって言ってくれる。 食事も、お散歩も、お風呂も一緒で、でも私かアリーがお花を摘みに行く時は扉越しに声をかけて、でも一緒に居てくれる。
アリーがいる、アリーがいる、アリーがいてくれる、アリーが一緒、アリーを愛してる、アリーも私を ーーーー
「そうか。 学園に行かなくなったが、せめて我が家の益となる婚姻に使うくらいならできると思っていたのだが、仕方がないな」
……………え?
なんで………?なんでアリーがあの人と、父とこんな夜中にお話をしているの?
「アリー。 君には苦労をかけるが、あと一月の間はアレを見ていてくれ。 それだけ様子を見て、まるで改善の兆しが見て取れないようならば、ユースクリフの名を剥奪した上で領地近くの修道院に入れることとする。 それまでは、これまで同様アレの機嫌取りを頼む」
「はい。 かしこまりました、旦那様」
父の、私にさえかけられたことのない労うような口調の指示に、淡々とした様子でアリーは首肯する。
聞こえてきたアリーと父の会話は、とても残酷な内容だった。
今まで、私についていてくれて、怖くて震えている私を側で慰めてくれて、本当の母よりも私の母親でいてくれて、私に愛をくれていたアリー。
それが、嘘だと、知ってしまった。
嘘だった。 アリーがくれた全てが、私を癒してくれたあの手の温もりも、私を孤独から救ってくれていた愛も、全ては幻でしかなかった。 そしてその幻想は、瓦礫の山が如く音を立てて崩れていく。
私は、アリーと父のいる部屋の前から、なるべく音を立てないように静かに、息を殺して、自室へ戻る。
扉を慎重に閉めて、漸く気の抜けた私は、その場にへたり込んで、また泣いた。
ジークの愛を望んでいた。 でも、それは得られない。 得ようとすれば身を滅ぼす、パンドラの宝箱だった。
だから諦めて、それでもまだそこにあったアリーの愛情。 求めれば応えてくれて、私の望みを叶えてくれた。
でも、それは嘘っぱちの模造品。
その裏には愛情どころか私にくれた全てが無くて、ただの残酷な現実だけが残った。
………ああ、またか。 また、私は愛されないのか。
満たされない胸の内に僅かなりとも注がれていた、いや、注がれていたと思っていたものが偽物だと気付いてしまった。
そして私に残ったものは、何もない。
この胸の内に広がるのは、埋まった気になっていた全てが幻夢と消え去った虚無だった。
泣いて、泣いて、泣いて、そして涙さえも枯れ果てて、私はこのユースクリフ邸から逃げ出す決心をした。
ここに居ても意味はない。
このまま病んだ心を腐らせるか、ユースクリフ家のためだけに婚姻を結ばされて愛のない空虚な生活を強要されるだけだろう。
だったら、私は逃げて、王都からも出て、どこか知らない土地で細々と暮らしていこう。 私を愛してくれる素敵な方と出会って、結婚して、その方との子供を産んで、そして小さくても貧しくても暖かな家庭を築ければ、私の生涯はそれで満足だ。
学園で使う鞄に装飾品の宝石や、詰めれるだけの着替え、そして本棚から一番好きな小説を一冊放り込んで、私はユースクリフ邸から逃げた。
夜が明ける前だったから、アリーも他の使用人達も寝静まり、私はあっさりと逃げ出すことに成功した。
そしてしばらく歩いて、私は下町までやってきた。
庶民達が暮らすそこは、公爵令嬢だった私には縁のない場所のためどこに行けばいいのか分からない。 けれど、夜中だというのに出歩いている人はいて、とても親切な男性に夜中でも運行している供用馬車があると聞いた。
私は、その馬車が停まっている場所まで行くと御者に話をつけて乗せてもらった。
私が乗り込むとすぐに馬車は出て、行き先だと聞いたある辺境の田舎町に向かって走る。
そして、馬車に揺られるうちに私は眠くなって、そして夢の中へと落ちてしまった。
ーーー次に眼が覚めると、私は後ろ手に縛られて、どこかの部屋で床の上に転がされていた。
状況が飲み込めずに混乱していると、部屋に誰かが入ってきた。
私が乗っていた馬車の御者の男だった。
「おや、目が覚めたかいお嬢ちゃん。 しっかしなんだってあんな遅くにあんな場所を彷徨いてたのかねぇ」
俺らみたいなのの格好の獲物なのによぉ。
そう、くつくつと笑う御者の男を見て、私はそこで初めて人攫いに遭ってしまったのだと気付いた。
「にしてもお嬢ちゃん、身形からしてどっかのお貴族様のお嬢様だったんだろうねぇ。 綺麗な顔によく手入れされた長い髪、こりゃあ上物だぜ。 きっと高く売れるよなぁ」
男はまたくつくつと笑い、今度は私の身体をあちこちと触っていく。
撫で回すようないやらしい手つきの男はさらにヒートアップしていく。 そして、私はそんな男に恐怖して、逃げたいのに声の1つさえあげられず、身体も震えて動かない。
「怖がってんのかお嬢ちゃ~ん。 大丈夫、俺ぁ紳士だからよぉ、優し~くしてやるぜぇ? どうせまだ生娘なんだろぉ? 俺が手解きしてやっからよぉ」
何を言われているのか分からない。 けれど、すごく嫌な予感はした。
するとそこに、もう1人の男が現れた。
………私に、あの馬車を紹介した男だった。
「今戻ったぜい……って、早速手ェ出してんのかよ。 売りもんなんだから、壊すんじゃねェぞ?」
「いやいや、んなこたぁしねぇよこんな上物に。 ただこいつよぉ、生娘だからよぉ、俺が女にしてやろうってなぁ。 おめぇも参加するかぁ?」
「まぁ、上物なのは間違ェねェからな。 売りに出す前に楽しませてもらうくらいならバチも当たんねェよな!」
男2人は、そうして私の身体を触り、髪を、胸を、口を蹂躙する。
そしてその手がスカートに伸びて、私の秘部に触れた時に、途端に恐怖心が強くなった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……!! やめて、助けて、ヤダ……!
でも、そんな懇願は言葉にならず、ガタイのいい男達に私の抵抗が通じるはずもなく、私は、純潔を奪われた。
男達は、私を好きにして満足したのか、陽が昇ってきた辺りで行為をやめた。
その頃には私は息も切れ切れで、破瓜の痛みの衝撃が未だ残り、体中は私と男2人の体液が混じり合ったもので濡れていて、肉体的にも精神的にも、もう動くこともできない。
「お前みてぇな綺麗なガキが好きなお貴族様がいるんでなぁ。 今からそいつんとこ行くからよぉ、んな汚ねぇなりじゃ足元見られそうだからとっとと綺麗にしねぇ~となぁ」
そう言うと、男は私にバケツいっぱいの水をかけた。
おかげでススや埃の汚れや、ベトベトと身体を濡らしていた汗と男達の精が混じったものが流れ落ちる。 でも服も濡れてしまって、男達はボロボロの布切れをタオルとして、そして見窄らしいボロのシャツを一枚私に投げ渡してきた。
身体を拭き、シャツを着た私は男達に手枷と足枷をつけられて、そのまま昨日の馬車に乗せられた。
「伯爵さまぁ、今日はいい品を持って来やしたぜェ」
「ほう、それは期待してもよいのだな?」
連れて来られたのは、どこかの伯爵邸らしくて、そこの当主は私を見るなり目を細めて、まるで品定めするようにジロジロと視線を向けてきた。
「この娘、もしやユースクリフ公爵家の御息女ではないか? 少し荒れているが、この銀糸のような美しい髪には見覚えがある。 顔立ちも……フム、似ているな」
それは、母の事だろうか。 少し気になって思わず出そうになった問いが口から溢れる前に、私をここまで連れて来た男2人が動揺したように騒ぎだした。
どうやら、公爵家の娘を誘拐してしまったことに戸惑っているらしい。
しかし、伯爵は落ち着いた口調で男2人を諭す。
「なに、気にすることはない。 ユースクリフ家と言えば少々特殊な事情を抱えた家でな、あそこの当主はたとえ娘が、いや娘だからこそいなくなっても気にもせんだろう」
その言葉に安心したように、伯爵から私の代金として幾らか詰められていそうな麻袋を受け取ると足取り軽やかに帰っていった。
それから私は、伯爵の慰み物として、朝も昼も夜も関係なく、伯爵の気の向くままにその欲望を打ちつけるためだけの道具になった。
伯爵は気の向くままに私を犯し、気が済むまでその精を私の中に注いだ。
伯爵には嗜虐趣味があるらしく、行為の最中にはやたらと頬を殴られ、時には首を絞められたりした。
「イザベラ! ああ、なんて美しいんだイザベラ!!」
伯爵は、私のことをイザベラと呼ぶ。
それは私の実母の名前だった。
なぜ、伯爵は私のことをそう呼ぶのだろう。
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと激しい水音をたてながら私に欲望をぶつける伯爵はまるで獣のようだ。 それも醜く、そして下品な豚のように私には思えた。
けれど、その豚伯爵に犯されている私は、きっと豚以下だ。
だって、ここでだって、私は豚伯爵に愛されているわけではない。 求められているのは私の実母で、私はその代わりでしかないのだ。
「イザベラ、イザベライザベライザベラァァァぁぁッ! 愛してる愛してる愛してる愛してるーーぅぅッ!!! あの時はあの男に君を取られてしまったけれど、もう君は永遠に僕の物だ! だから君も、君も僕をォォぉッ!!」
私を犯し、しかしその目に映る母の幻影に愛を語る豚伯爵は、私の首に両手を添えると、まるで壊れ物を扱うように丁寧に、しかし力強く絞めてくる。
「あぁ……。 その苦しそうな顔もまた可愛らしいよイザベラ、もっと見せておくれ! 愛らしい愛らしい愛らしい君の表情をもっともっともっと! さァッ!!」
更に増す両手の力に私の気道が完全に遮断される。
呼吸ができない、くるしい………たすけ。
「イザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザ ーーーー」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「その時の私の罪は、僅かな希望に縋ったこと。 罪人の私が、罪過の中にあってどうして救われようと思い上がれましょう。 だからこそ、裏切られたと思った瞬間に逃げ出して、その先であんな……あん、な……」
思い出して、身震いする。
5度目のこの世界では、私はまだ純潔を誰にも奪われていない。
けれど、この心は、既にあの時に純潔を失ったのだ。
愛され、愛する人に純潔を捧げて、そして2人の間に子を成して、幸せで暖かな家庭をと夢見たのに、もうその夢も叶わない。
きっと、私が愛し私を愛してくれる存在が目の前に現れても、私にはその人に綺麗な身体を捧げられない。
私の純潔は、もう無いのだから。
アリーのこともそうだ。 私が縋り、愛を求めた大好きな母親であるアリーはもういない。
今の私とアリーの間にあるのはただの主従関係。 信頼も、愛情も、そこには無い。
3度目の世界では、私は元から持っていたものすらも失くした。
この身の純潔と、母として愛していたアリーの幻想だ。
……失くしたのだ。
失くして、また絶望して、それでも期待して求める。 だから私はまた、大罪を犯す。
私はやはり、どこまでも愚かな人間なのだった。
私を起こしに来たアリーが何事かと私を心配してくれて、少しだけ安心できた事を覚えている。
アリーは私の乳母で、幼い頃から私を見てくれなかった母の代わりに常に付き添ってくれた侍女で、私の大好きなもう1人の母親だ。
赤子の頃からアリーに育てられ、遊ぶ時も、お勉強の時も、お稽古の時も、食事の時も一緒に居てくれたし、お風呂の世話もしてくれて、シャンプーの時にアリーの指先でわしゃわしゃと頭を触られるのが好きだった。
今思えば、あれも全部侍女としての仕事であり、主従の一線は超えていなかったのだけれど、それでも、父にも母にも見向きもされなかった私はアリーのことが大好きだった。
アリーのおかげで心を落ち着かせることができた私は、アリーを部屋から下がらせて、これからどうするべきかを考えていた。
もうジークに愛されないことは知っている。
父はいざとなれば平気で私を切り捨てる。
屋敷でも、学園でも、どこに行っても対等な愛をくれる人は居ない。
そんな私に残されたのはアリーだけだった。
幼い頃から父にも母にも求められず、そしてもうジークに愛してもらえない事が確定したならば、私が縋れるのはもうアリーしかいなかった。
私を見てくれるアリーとなら、たとえ対等でなくとも、本物でなくとも、私を娘として愛してくれるだろう。
だって、アリーは私の乳母で、産みの母よりもずっと私の側に居てくれる、私の本当の母親。
主人と侍女という立場の壁こそあれども、私もアリーを母親として愛するわ。
だからお願いよアリー、私を愛して。
アリー、アリー、アリー、アリー………
「アリー、アリーアリー!! アリーどこに居るの!? ひとりぼっちは怖いの。 1人にしないでアリー!!」
「はい、お嬢様。 アリーはここにおります。 どうなさいましたか? 」
「ああ、アリー。 今日も1人で眠るのが怖いの。 だから私が眠るまで手を繋いでいてほしいの」
「はいお嬢様。 アリーの手でよろしければ、いくらでもお繋ぎしますよ」
私は、アリーに依存していた。
アリーが居ないと怖くて、不安に苛まれて、震えが止まらなくなる。
取り乱して暴れて、姿見を壊してそのガラス片で手を怪我したこともあった。 でも、その時もアリーが手当てしてくれたから大丈夫だった。
朝からアリーが起こしに来てくれて、そしてアリーを1日中、側から離さない。
アリーだって、お花を摘みに行ったりとか、ご飯を食べたりもしなければならないし、お風呂も入らないといけないから、それらを全て一緒にした。
一緒にご飯を食べて、一緒に付いて回って、一緒にお風呂に入って、トイレは流石に一緒に個室に入ることを私が我慢して、5秒に一度アリーがそこに居るか声をかけるにとどめた。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫………
私は誰の邪魔もしていない。
結ばれるべき運命の2人、ジークとあの令嬢の邪魔なんてしていない。
新しい世界で迎えた3度目の朝に目覚めてから一度だって学園には行っていない。
だから、絶対に2人の邪魔なんてし得ない。 あの取り巻きの令嬢達に責任を押し付けられたりして牢獄で凍え死んだり、毒を飲まされて処刑されるなんてあり得ない。
それに、私にはアリーがいる。 いてくれる。 だから大丈夫、大丈夫、大丈夫。
私は死なない、死なない、死なない……。
私は、日々襲いくる不安を拭うためにそう繰り返した。
繰り返した2度の死への時間。
それが私に与えたのは、ジークは私の運命ではないという事実の理解、そして死への恐怖心だった。
ジークに愛されず、あまつさえ軽蔑されたことも辛かったけれど、それ以上に1度目に牢獄での孤独に凍え死んだ結末と、罪人として多くの視線に嫌悪されながら毒杯を煽って逃げるように死んだ結末が怖かった。
凍える牢獄で灯火がフッと吹き消えるように私の命が潰えたことも、毒によって全身が焼かれるような熱に苛まれて命が燃え尽きるように死んだことも。
あれは全部、私が愚かな罪人だったから。 運命の2人を引き裂こうとした悪魔に成り果てたから、あんな死を迎えた。
だから、今回は大丈夫。 アリーの側で、アリーを愛して、アリーに愛されて、それで私は満足だ。
だからそれ以上は求めないし、要らない。
欲張るのが駄目だった。 欲張って求めたことが罪だった。
アリーがいれば大丈夫。 アリーがいるから私は大丈夫。
アリーがいれば、アリーがいれば、アリー、アリー、アリー、アリーアリーアリーアリー………
「………んぅぅ」
ある夜、私は少し催して、目が覚めてしまった。
その夜は少し蒸し暑く、だから寝る前に水を飲み過ぎたのがいけなかった。
不意に目覚めた夜は暗くて、私は恐怖心を掻き立てられて泣きそうになる。
いつもなら、照明を落とされても、寝入るまでアリーが手を繋いでいてくれるから、アリーの手の温もりに安心して眠りにつけた。
でも、目が覚めてもアリーはいない。
それはそうだ。 だって、いつもよりずっと早くに目が覚めて、今はまだ夜中なのだから。
アリーだって眠っている時間だろう。
すぐにでもアリーを呼びだしたくなったけれど、それはグッと我慢した。 だって、わがままを言って、アリーを困らせて、嫌われてしまったら私はまたひとりぼっちになってしまう。
それは嫌だ。 アリーという、唯一の愛を失いたくない。
暗闇の世界は恐ろしくて、でも粗相をするわけにもいかないから怖いのを我慢して、暗い廊下を窓から照らす月明かりを頼りに進んでいく。
暗い、怖い、怖い怖い怖い……
死の影が近付いてくる気がする。
死神が、今にも理不尽な死を振りまきそうな気がする。
あの闇の中から私を嘲笑う声がする。
あちらこちらから、私を蔑む視線を感じる。
死んでしまえ、死んでしまえ。 罪人など死んでしまえと声がする。
そんなはずはない。 だって私は、まだ何もしていない。 私は何もしない。 そんなことをすれば、後は死への道を歩むしかなくなると知っているから。
だから、あれらは全て幻覚、幻聴、錯覚だ。
私は死なない、死なない、まだ、死なない。
怖い、怖い、怖い……けど、我慢して、明日になったらアリーにこの事を褒めてもらうのだ。 アリーなら、きっと頭を撫でて頑張ったねって褒めてくれる。 怖かったねって抱きしめてくれる。だから我慢。
そう、自分に言い聞かせながら何とかトイレまで辿り着き、用を済ませて、また暗くて怖い廊下を今度は自分の部屋に向かって歩く。
また、行きしなと同じ不安に駆られながら歩く道は月明かりがあれども薄暗くて、今にも足元の闇の中に落ちてしまいそうだった。
「ーーーー……ぇ、はい。 その通りにございます」
でも、怖くて、泣きながら廊下を歩く中、聞こえてきたアリーの声。
ああ、そうだ。 私にはアリーがいる。 だから大丈夫なんだった。
アリーなら、アリーなら私を助けてくれる。 怖くて怖くて泣いて震えている私の手を握って、眠るまで一緒に居てくれる。 朝起きる時も、側で私が目を開けた時からおはようって言ってくれる。 食事も、お散歩も、お風呂も一緒で、でも私かアリーがお花を摘みに行く時は扉越しに声をかけて、でも一緒に居てくれる。
アリーがいる、アリーがいる、アリーがいてくれる、アリーが一緒、アリーを愛してる、アリーも私を ーーーー
「そうか。 学園に行かなくなったが、せめて我が家の益となる婚姻に使うくらいならできると思っていたのだが、仕方がないな」
……………え?
なんで………?なんでアリーがあの人と、父とこんな夜中にお話をしているの?
「アリー。 君には苦労をかけるが、あと一月の間はアレを見ていてくれ。 それだけ様子を見て、まるで改善の兆しが見て取れないようならば、ユースクリフの名を剥奪した上で領地近くの修道院に入れることとする。 それまでは、これまで同様アレの機嫌取りを頼む」
「はい。 かしこまりました、旦那様」
父の、私にさえかけられたことのない労うような口調の指示に、淡々とした様子でアリーは首肯する。
聞こえてきたアリーと父の会話は、とても残酷な内容だった。
今まで、私についていてくれて、怖くて震えている私を側で慰めてくれて、本当の母よりも私の母親でいてくれて、私に愛をくれていたアリー。
それが、嘘だと、知ってしまった。
嘘だった。 アリーがくれた全てが、私を癒してくれたあの手の温もりも、私を孤独から救ってくれていた愛も、全ては幻でしかなかった。 そしてその幻想は、瓦礫の山が如く音を立てて崩れていく。
私は、アリーと父のいる部屋の前から、なるべく音を立てないように静かに、息を殺して、自室へ戻る。
扉を慎重に閉めて、漸く気の抜けた私は、その場にへたり込んで、また泣いた。
ジークの愛を望んでいた。 でも、それは得られない。 得ようとすれば身を滅ぼす、パンドラの宝箱だった。
だから諦めて、それでもまだそこにあったアリーの愛情。 求めれば応えてくれて、私の望みを叶えてくれた。
でも、それは嘘っぱちの模造品。
その裏には愛情どころか私にくれた全てが無くて、ただの残酷な現実だけが残った。
………ああ、またか。 また、私は愛されないのか。
満たされない胸の内に僅かなりとも注がれていた、いや、注がれていたと思っていたものが偽物だと気付いてしまった。
そして私に残ったものは、何もない。
この胸の内に広がるのは、埋まった気になっていた全てが幻夢と消え去った虚無だった。
泣いて、泣いて、泣いて、そして涙さえも枯れ果てて、私はこのユースクリフ邸から逃げ出す決心をした。
ここに居ても意味はない。
このまま病んだ心を腐らせるか、ユースクリフ家のためだけに婚姻を結ばされて愛のない空虚な生活を強要されるだけだろう。
だったら、私は逃げて、王都からも出て、どこか知らない土地で細々と暮らしていこう。 私を愛してくれる素敵な方と出会って、結婚して、その方との子供を産んで、そして小さくても貧しくても暖かな家庭を築ければ、私の生涯はそれで満足だ。
学園で使う鞄に装飾品の宝石や、詰めれるだけの着替え、そして本棚から一番好きな小説を一冊放り込んで、私はユースクリフ邸から逃げた。
夜が明ける前だったから、アリーも他の使用人達も寝静まり、私はあっさりと逃げ出すことに成功した。
そしてしばらく歩いて、私は下町までやってきた。
庶民達が暮らすそこは、公爵令嬢だった私には縁のない場所のためどこに行けばいいのか分からない。 けれど、夜中だというのに出歩いている人はいて、とても親切な男性に夜中でも運行している供用馬車があると聞いた。
私は、その馬車が停まっている場所まで行くと御者に話をつけて乗せてもらった。
私が乗り込むとすぐに馬車は出て、行き先だと聞いたある辺境の田舎町に向かって走る。
そして、馬車に揺られるうちに私は眠くなって、そして夢の中へと落ちてしまった。
ーーー次に眼が覚めると、私は後ろ手に縛られて、どこかの部屋で床の上に転がされていた。
状況が飲み込めずに混乱していると、部屋に誰かが入ってきた。
私が乗っていた馬車の御者の男だった。
「おや、目が覚めたかいお嬢ちゃん。 しっかしなんだってあんな遅くにあんな場所を彷徨いてたのかねぇ」
俺らみたいなのの格好の獲物なのによぉ。
そう、くつくつと笑う御者の男を見て、私はそこで初めて人攫いに遭ってしまったのだと気付いた。
「にしてもお嬢ちゃん、身形からしてどっかのお貴族様のお嬢様だったんだろうねぇ。 綺麗な顔によく手入れされた長い髪、こりゃあ上物だぜ。 きっと高く売れるよなぁ」
男はまたくつくつと笑い、今度は私の身体をあちこちと触っていく。
撫で回すようないやらしい手つきの男はさらにヒートアップしていく。 そして、私はそんな男に恐怖して、逃げたいのに声の1つさえあげられず、身体も震えて動かない。
「怖がってんのかお嬢ちゃ~ん。 大丈夫、俺ぁ紳士だからよぉ、優し~くしてやるぜぇ? どうせまだ生娘なんだろぉ? 俺が手解きしてやっからよぉ」
何を言われているのか分からない。 けれど、すごく嫌な予感はした。
するとそこに、もう1人の男が現れた。
………私に、あの馬車を紹介した男だった。
「今戻ったぜい……って、早速手ェ出してんのかよ。 売りもんなんだから、壊すんじゃねェぞ?」
「いやいや、んなこたぁしねぇよこんな上物に。 ただこいつよぉ、生娘だからよぉ、俺が女にしてやろうってなぁ。 おめぇも参加するかぁ?」
「まぁ、上物なのは間違ェねェからな。 売りに出す前に楽しませてもらうくらいならバチも当たんねェよな!」
男2人は、そうして私の身体を触り、髪を、胸を、口を蹂躙する。
そしてその手がスカートに伸びて、私の秘部に触れた時に、途端に恐怖心が強くなった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……!! やめて、助けて、ヤダ……!
でも、そんな懇願は言葉にならず、ガタイのいい男達に私の抵抗が通じるはずもなく、私は、純潔を奪われた。
男達は、私を好きにして満足したのか、陽が昇ってきた辺りで行為をやめた。
その頃には私は息も切れ切れで、破瓜の痛みの衝撃が未だ残り、体中は私と男2人の体液が混じり合ったもので濡れていて、肉体的にも精神的にも、もう動くこともできない。
「お前みてぇな綺麗なガキが好きなお貴族様がいるんでなぁ。 今からそいつんとこ行くからよぉ、んな汚ねぇなりじゃ足元見られそうだからとっとと綺麗にしねぇ~となぁ」
そう言うと、男は私にバケツいっぱいの水をかけた。
おかげでススや埃の汚れや、ベトベトと身体を濡らしていた汗と男達の精が混じったものが流れ落ちる。 でも服も濡れてしまって、男達はボロボロの布切れをタオルとして、そして見窄らしいボロのシャツを一枚私に投げ渡してきた。
身体を拭き、シャツを着た私は男達に手枷と足枷をつけられて、そのまま昨日の馬車に乗せられた。
「伯爵さまぁ、今日はいい品を持って来やしたぜェ」
「ほう、それは期待してもよいのだな?」
連れて来られたのは、どこかの伯爵邸らしくて、そこの当主は私を見るなり目を細めて、まるで品定めするようにジロジロと視線を向けてきた。
「この娘、もしやユースクリフ公爵家の御息女ではないか? 少し荒れているが、この銀糸のような美しい髪には見覚えがある。 顔立ちも……フム、似ているな」
それは、母の事だろうか。 少し気になって思わず出そうになった問いが口から溢れる前に、私をここまで連れて来た男2人が動揺したように騒ぎだした。
どうやら、公爵家の娘を誘拐してしまったことに戸惑っているらしい。
しかし、伯爵は落ち着いた口調で男2人を諭す。
「なに、気にすることはない。 ユースクリフ家と言えば少々特殊な事情を抱えた家でな、あそこの当主はたとえ娘が、いや娘だからこそいなくなっても気にもせんだろう」
その言葉に安心したように、伯爵から私の代金として幾らか詰められていそうな麻袋を受け取ると足取り軽やかに帰っていった。
それから私は、伯爵の慰み物として、朝も昼も夜も関係なく、伯爵の気の向くままにその欲望を打ちつけるためだけの道具になった。
伯爵は気の向くままに私を犯し、気が済むまでその精を私の中に注いだ。
伯爵には嗜虐趣味があるらしく、行為の最中にはやたらと頬を殴られ、時には首を絞められたりした。
「イザベラ! ああ、なんて美しいんだイザベラ!!」
伯爵は、私のことをイザベラと呼ぶ。
それは私の実母の名前だった。
なぜ、伯爵は私のことをそう呼ぶのだろう。
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと激しい水音をたてながら私に欲望をぶつける伯爵はまるで獣のようだ。 それも醜く、そして下品な豚のように私には思えた。
けれど、その豚伯爵に犯されている私は、きっと豚以下だ。
だって、ここでだって、私は豚伯爵に愛されているわけではない。 求められているのは私の実母で、私はその代わりでしかないのだ。
「イザベラ、イザベライザベライザベラァァァぁぁッ! 愛してる愛してる愛してる愛してるーーぅぅッ!!! あの時はあの男に君を取られてしまったけれど、もう君は永遠に僕の物だ! だから君も、君も僕をォォぉッ!!」
私を犯し、しかしその目に映る母の幻影に愛を語る豚伯爵は、私の首に両手を添えると、まるで壊れ物を扱うように丁寧に、しかし力強く絞めてくる。
「あぁ……。 その苦しそうな顔もまた可愛らしいよイザベラ、もっと見せておくれ! 愛らしい愛らしい愛らしい君の表情をもっともっともっと! さァッ!!」
更に増す両手の力に私の気道が完全に遮断される。
呼吸ができない、くるしい………たすけ。
「イザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザベライザ ーーーー」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「その時の私の罪は、僅かな希望に縋ったこと。 罪人の私が、罪過の中にあってどうして救われようと思い上がれましょう。 だからこそ、裏切られたと思った瞬間に逃げ出して、その先であんな……あん、な……」
思い出して、身震いする。
5度目のこの世界では、私はまだ純潔を誰にも奪われていない。
けれど、この心は、既にあの時に純潔を失ったのだ。
愛され、愛する人に純潔を捧げて、そして2人の間に子を成して、幸せで暖かな家庭をと夢見たのに、もうその夢も叶わない。
きっと、私が愛し私を愛してくれる存在が目の前に現れても、私にはその人に綺麗な身体を捧げられない。
私の純潔は、もう無いのだから。
アリーのこともそうだ。 私が縋り、愛を求めた大好きな母親であるアリーはもういない。
今の私とアリーの間にあるのはただの主従関係。 信頼も、愛情も、そこには無い。
3度目の世界では、私は元から持っていたものすらも失くした。
この身の純潔と、母として愛していたアリーの幻想だ。
……失くしたのだ。
失くして、また絶望して、それでも期待して求める。 だから私はまた、大罪を犯す。
私はやはり、どこまでも愚かな人間なのだった。
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