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第一章 初心者の躍動
第6話 街中の迷宮
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貰った地図を見ると何故か近くの果物屋が最初に行くべき場所として書かれていた。
「なんで果物屋?」
まったく意味は分からなかったが地図に『絶対に行ってください!何が何でも行ってください‼』と力強く書かれていたので、無視するのはまずい気がするからおとなしく従っておくことにしておいた。
果物屋は近くの商店街のような場所に普通に存在していて、そのエリアは特にプレイヤーは居らずのんびりと道を歩くことができた。ついでに少し近くの店も冷やかしに覗いてみると花屋に肉屋などいろいろな店が並んでいた。
その店ではNPCの住人達が買い物して井戸端会議のような場面にも多く出くわした。
「これは再会最高峰って言われるわけだ。もはや一つの世界だな、本当に」
凄い再限度なのは知っていたけれど受付のレイルもそうだけど、NPCとプレイヤーの違いが本当に分からない。
正直少し困ってきているから後で識別表示をONに切り替えようと決意しながら果物屋でメモに書かれていた物を買う。
「えっと…スルプの実とルースの実……ここに書いてあるやつください」
「あいよ!ちょっとまってな‼」
途中までは名称を読もうとしたけど馴染のない物ばかりで言い難かったから見せる事にした。
ちょっと申し訳なく思っていたけど店主は気前のいい返事で気にした様子もなく書かれている商品を持ってきてくれる。
「全部で1570Gってところだが、1500Gにしてやるよ!」
「ありがとう!助かる」
本当に少しの値引きだったがAOを始めたばかりの俺としてはありがたい。
なにせプレイヤーに渡される最初の所持金は10000Gと決まっていて、下手に使いすぎると他の物を買えなくなってしまう。ゲームの中でまでお金の計算をしないといけないのは正直に言って気が滅入るがしかたない。
仮想現実なのだからどこか現実的な事が幾つかあっても不思議ではないってところか。
それから軽く物見遊山しながら店の人や買い物客と会話してみて分かったが本当にプレイヤーとNPCとの違いが無い。どちらも感情豊かに思い思いに生きている。
これは少し恐怖も感じるが同時にAOと言う世界により期待が強まった。
しばらく市場を見て回ると面白い物が幾つもあったけど無駄金を使う余裕はなくて、渋々諦めて足早に移動する。
こんな気持ちになっている時は誘惑の多い場所に長く居るとついつい無駄遣いしてしまうからな。
「えっと、確か右に行って…次が左」
移動を始めて少しすると、地図に急に地裏の道を行くように書いてあったのでそれに従って進む。
ただ途中から気がついたが、地図に書かれていない不自然な道が増えてきた。
「……これは…なんかに引っ掛かったな」
理由もわからず数分後、歩き回っていると景色の類似点の多さに気がついた。裏道なだけにゴミも多く、壁や道路も整備されてなく傷んでいる。
そのゴミの種類や大きさ、傷の位置に大きさや角度。それらが途中から全部一緒だった。
「これはどうするのが正解かな?ひとまずは違う道行ってみるか…」
さすがに始めたばっかりの初心者なのに迷路みたいなギミックを解ける自信はない。
けど、なにもせずに同じルートを歩いていた所で大して変化はないだろう事はわかる。
だから、できる事として通っていない道へと入る事にした。
「………」
しかし探索を始めて30分で後悔してきていた。
何故なら、何処の脇道を通っても最終的には一も同じ道へと戻ってしまうのだ。少しイラついて建物の窓を破って中に入ってみようともしたが、入った先も全く同じ路地になっていた。
他に道がないか?なにかヒントになるようなオブジェはないか?と思って、とにかく探し回って思いつく限りに事はしてみたが…結果は変わらなかった。
「どうすりゃいいんだ?」
動いても結果は変わらないことが分かったので今は最初の路地でじっくりと思案にふけっている。
なにかいい案が思い浮かんでいるわけではないが、可能性を1つずつ潰していくにはゆっくりと考えたかったのだ。
まず現状で確実に無いと断言できるのは『特定オブジェの破壊または発見』『正解のルートの発見』『特定スキルの所持』といた所だ。
特定のオブジェは基本的に新しい物が追加されることがなく、拾ったり破壊したりは何度か試したが何も変化が起こらなかったからだ。別の場所への設置などの可能性も考えたが目印と成るような物もないので可能性としては最低と考えていい。
次に正解のルートの発見は、もう通れる道と言う道は全部探索し終えている。
もしかしたら通る順番などが関係あるかと思い何通りか調べて見たが、二回ほど角を曲がると確実に最初の場所へと戻ってしまうのだ。この検証だけでも10分は使用しただけに可能性は低いと判断した。
最後の特定スキルの所持はサービス開始初日と言う条件も込みでありえないと判断した。
この街が初心者用だというのも判断した要因の一つではある。なにせ初心者の持っているスキルなんて『ランダム』なんていう機能がない以上、すべてが初期で習得できる珍しくもない物だけだ。
念の為に初期のキャラクリの前にスキルは全て確認したが、幻術などに対して有効な効果を持つスキルはなかった。
まだ一部しか公開されていない進化スキルの中には幾つか可能性の高いスキルもあったが、そんなスキルを初期から持っているはずもない。もし上位のスキルが必要なら初心者の街のサービス初日に初心者の俺に対して、そんなイベントが発生する可能性は極めて低いと考えたから今回はないと判断した。
万が一程度の可能性はあるだろうけどね。
「さて、どうしたもんかな……うまっ!?」
考えながら暇すぎたのでアイテムボックスから買ったばかりの果物を取り出して一口齧ると、現実の新鮮な果物と似たような甘く瑞々しい足が広がって声を上げてしまった。
味覚の再現までされているのは知っていたけど、AOの果物がここまで美味しいとは完全に想定外だった。
ちなみに今食べているのは見た目は梨みたいで味はリンゴの果物だ。
「うま~癒されるわぁ~」
地味に同じ景色ばかり続く現状に少し気が滅入ってきていたようで美味い果物にかなり癒される。
そうして夢中になって一瞬で一個を食べきってしまった。
「ごちそうさまでした!……それで……覗いてるのは誰だ?」
食べ終わると軽く食後の挨拶をして、少し前から気が付いていた気配の方へと顔を向けて正体を問う。
『っ!?』
「逃がさないぞ‼」
声に反応して何かが猛スピードで移動するのを視界の端に捉えると全力で後を追う。
もはや何も手がかりがない今、その正体不明の何かが唯一の手掛かりだ。
万が一にも見失うと完全に出る方法が無くなる可能性が高い。
だから死に物狂いで追いかけた。
でも、追いかけている内に一つ気が付いたのが相手が小さい事だった。でも、これ以上は歩き回って無駄な時間を使いたくなかった俺は捕まえる事に集中していたので大きく気にする事はなかった。
そうして追いかけ始めてから10分ほどが経っただろう。
相手は飛んでいるのか速度が落ちないのに対して俺の足は少しずつ重くなってきていた。現実だったなら10分走り続けようが大して問題はなかったのだが、さすがにAOに現実の身体能力をそのまま持ってくることは無理だったようだ。
「あぁ~クソっ!足が重い‼」
もう数年単位で足に疲労感なんて感じてこなかったから、わりと本気で邪魔くさくて苛立っていた。
だからと言って止まって完全に見失うわけにもいかない。
「何でゲームで根性論に頼らないといけないのかっ」
体力だとかは関係なく、もはや完全に気力だけで俺は体を動かしていた。
現実では大っ嫌い!な言葉の1つ『根性』に頼らなきゃいけない状況、わかっていてもストレスはたまる。
「捕まえたら覚えてろよ…」
八つ当たりなのはわかっているが、こんな目に合っている元凶だと思われる追いかけている相手に少し仕返しを考えて気を紛らわせる。
そうして更に追いかけて10分追加で経過する。
なんとか遠目に影だけは捉えながら追いかけているようなギリギリの状態になっていた。
「はぁ…はぁ…」
足だけではなく呼吸にまで疲労が出始めたのが2分前からだ。
まず間違いなく限界が近づいてきている。まだシステムをよく理解していない俺だが、視界の中にある疲れた人の顔のようなアイコンが『疲労状態』を表しているのはなんとなくわかる。
しかも並ぶように胃袋のマークもある事から空腹状態にもなっているのだろう。
「無駄に現実に沿ったシステムだなっ」
だからこそ面白く感じているのだが、今はそのシステムが少し恨めしい。
なんて事を考えても意味がないのは理解している。だからこそ解決策を考えたいが、まだろくにスキルも使用していない俺には工夫のしようがなく。ひたすらに気合で追いかけるしかできなかった。
それだけに…もう諦めようかな…と言う弱気な考えも出てきた。
そんな時…
「止まった?」
ようやく追いかけていた相手が止まったのを確認できた。
同時に俺も止まってみると逃げる様子もなく、むしろ待っているかのようにこちらを向いていた。
それを見て走る必要はなくなったんだな…と、わかって少しゆっくりと歩いて近づく事にした。
街中だから奇襲されることはないと思っているけど、油断させて攻撃!なんて事がリアルに再現されているからこそ怒らないかだけが心配だった。
でも、出た先にあったのは少し開けた大きな道だった。
「おめでとう!!貴方は『幻夢の試練』最初のクリア者です!!!」
「……は?」
脱出できたことに感動する間もなく言われた事に理解が追いつかない。
今まで迷っていたのが『幻夢の試練』と言う物だったことはわかったが、それよりも今一番気になるのは目の前の宣言をした存在の方だった。
虫のような半透明の光る羽を生やし、鮮やかな赤い色の髪を短く切りそろえ、同じく赤いワンピースを着た小さな女の子。童話などに出てくる『妖精』が、確かに目の前で飛んでいた。
そんな妖精は動揺して話せない俺のことなどお構いなしに楽しそうに笑顔を浮かべ、話を進めた。
「さぁ~さぁ~!初のクリア者様をご案内‼」
「「「「ご案内~!」」」」
「……」
気が付くと色の違う妖精が追加で5人増えていて、祝うように俺の周りで紙吹雪を舞い散らす。
1人静かな妖精もいたが俺から逃げるように案内しようとしている建物へと入って行ってしまった。
「おい、何処に案内を「いいから!いいから!!」ちょっ」
とにかく状況確認のために質問しようとしたが、赤い妖精に遮られて背中側から押されてしまう。
「「「「どうぞ~どうぞ~」」」」
そこに他の4人の妖精まで加わって押してくるので小さな相手とは言え、初期状態の俺よりはステータス値が高いのか力負けしてしまった。
もう逆らう気力もなくなった俺は目の前の草が生い茂って全容がよく見えない。
そんな怪しげな建物へと押し入れられるのだった。
「なんで果物屋?」
まったく意味は分からなかったが地図に『絶対に行ってください!何が何でも行ってください‼』と力強く書かれていたので、無視するのはまずい気がするからおとなしく従っておくことにしておいた。
果物屋は近くの商店街のような場所に普通に存在していて、そのエリアは特にプレイヤーは居らずのんびりと道を歩くことができた。ついでに少し近くの店も冷やかしに覗いてみると花屋に肉屋などいろいろな店が並んでいた。
その店ではNPCの住人達が買い物して井戸端会議のような場面にも多く出くわした。
「これは再会最高峰って言われるわけだ。もはや一つの世界だな、本当に」
凄い再限度なのは知っていたけれど受付のレイルもそうだけど、NPCとプレイヤーの違いが本当に分からない。
正直少し困ってきているから後で識別表示をONに切り替えようと決意しながら果物屋でメモに書かれていた物を買う。
「えっと…スルプの実とルースの実……ここに書いてあるやつください」
「あいよ!ちょっとまってな‼」
途中までは名称を読もうとしたけど馴染のない物ばかりで言い難かったから見せる事にした。
ちょっと申し訳なく思っていたけど店主は気前のいい返事で気にした様子もなく書かれている商品を持ってきてくれる。
「全部で1570Gってところだが、1500Gにしてやるよ!」
「ありがとう!助かる」
本当に少しの値引きだったがAOを始めたばかりの俺としてはありがたい。
なにせプレイヤーに渡される最初の所持金は10000Gと決まっていて、下手に使いすぎると他の物を買えなくなってしまう。ゲームの中でまでお金の計算をしないといけないのは正直に言って気が滅入るがしかたない。
仮想現実なのだからどこか現実的な事が幾つかあっても不思議ではないってところか。
それから軽く物見遊山しながら店の人や買い物客と会話してみて分かったが本当にプレイヤーとNPCとの違いが無い。どちらも感情豊かに思い思いに生きている。
これは少し恐怖も感じるが同時にAOと言う世界により期待が強まった。
しばらく市場を見て回ると面白い物が幾つもあったけど無駄金を使う余裕はなくて、渋々諦めて足早に移動する。
こんな気持ちになっている時は誘惑の多い場所に長く居るとついつい無駄遣いしてしまうからな。
「えっと、確か右に行って…次が左」
移動を始めて少しすると、地図に急に地裏の道を行くように書いてあったのでそれに従って進む。
ただ途中から気がついたが、地図に書かれていない不自然な道が増えてきた。
「……これは…なんかに引っ掛かったな」
理由もわからず数分後、歩き回っていると景色の類似点の多さに気がついた。裏道なだけにゴミも多く、壁や道路も整備されてなく傷んでいる。
そのゴミの種類や大きさ、傷の位置に大きさや角度。それらが途中から全部一緒だった。
「これはどうするのが正解かな?ひとまずは違う道行ってみるか…」
さすがに始めたばっかりの初心者なのに迷路みたいなギミックを解ける自信はない。
けど、なにもせずに同じルートを歩いていた所で大して変化はないだろう事はわかる。
だから、できる事として通っていない道へと入る事にした。
「………」
しかし探索を始めて30分で後悔してきていた。
何故なら、何処の脇道を通っても最終的には一も同じ道へと戻ってしまうのだ。少しイラついて建物の窓を破って中に入ってみようともしたが、入った先も全く同じ路地になっていた。
他に道がないか?なにかヒントになるようなオブジェはないか?と思って、とにかく探し回って思いつく限りに事はしてみたが…結果は変わらなかった。
「どうすりゃいいんだ?」
動いても結果は変わらないことが分かったので今は最初の路地でじっくりと思案にふけっている。
なにかいい案が思い浮かんでいるわけではないが、可能性を1つずつ潰していくにはゆっくりと考えたかったのだ。
まず現状で確実に無いと断言できるのは『特定オブジェの破壊または発見』『正解のルートの発見』『特定スキルの所持』といた所だ。
特定のオブジェは基本的に新しい物が追加されることがなく、拾ったり破壊したりは何度か試したが何も変化が起こらなかったからだ。別の場所への設置などの可能性も考えたが目印と成るような物もないので可能性としては最低と考えていい。
次に正解のルートの発見は、もう通れる道と言う道は全部探索し終えている。
もしかしたら通る順番などが関係あるかと思い何通りか調べて見たが、二回ほど角を曲がると確実に最初の場所へと戻ってしまうのだ。この検証だけでも10分は使用しただけに可能性は低いと判断した。
最後の特定スキルの所持はサービス開始初日と言う条件も込みでありえないと判断した。
この街が初心者用だというのも判断した要因の一つではある。なにせ初心者の持っているスキルなんて『ランダム』なんていう機能がない以上、すべてが初期で習得できる珍しくもない物だけだ。
念の為に初期のキャラクリの前にスキルは全て確認したが、幻術などに対して有効な効果を持つスキルはなかった。
まだ一部しか公開されていない進化スキルの中には幾つか可能性の高いスキルもあったが、そんなスキルを初期から持っているはずもない。もし上位のスキルが必要なら初心者の街のサービス初日に初心者の俺に対して、そんなイベントが発生する可能性は極めて低いと考えたから今回はないと判断した。
万が一程度の可能性はあるだろうけどね。
「さて、どうしたもんかな……うまっ!?」
考えながら暇すぎたのでアイテムボックスから買ったばかりの果物を取り出して一口齧ると、現実の新鮮な果物と似たような甘く瑞々しい足が広がって声を上げてしまった。
味覚の再現までされているのは知っていたけど、AOの果物がここまで美味しいとは完全に想定外だった。
ちなみに今食べているのは見た目は梨みたいで味はリンゴの果物だ。
「うま~癒されるわぁ~」
地味に同じ景色ばかり続く現状に少し気が滅入ってきていたようで美味い果物にかなり癒される。
そうして夢中になって一瞬で一個を食べきってしまった。
「ごちそうさまでした!……それで……覗いてるのは誰だ?」
食べ終わると軽く食後の挨拶をして、少し前から気が付いていた気配の方へと顔を向けて正体を問う。
『っ!?』
「逃がさないぞ‼」
声に反応して何かが猛スピードで移動するのを視界の端に捉えると全力で後を追う。
もはや何も手がかりがない今、その正体不明の何かが唯一の手掛かりだ。
万が一にも見失うと完全に出る方法が無くなる可能性が高い。
だから死に物狂いで追いかけた。
でも、追いかけている内に一つ気が付いたのが相手が小さい事だった。でも、これ以上は歩き回って無駄な時間を使いたくなかった俺は捕まえる事に集中していたので大きく気にする事はなかった。
そうして追いかけ始めてから10分ほどが経っただろう。
相手は飛んでいるのか速度が落ちないのに対して俺の足は少しずつ重くなってきていた。現実だったなら10分走り続けようが大して問題はなかったのだが、さすがにAOに現実の身体能力をそのまま持ってくることは無理だったようだ。
「あぁ~クソっ!足が重い‼」
もう数年単位で足に疲労感なんて感じてこなかったから、わりと本気で邪魔くさくて苛立っていた。
だからと言って止まって完全に見失うわけにもいかない。
「何でゲームで根性論に頼らないといけないのかっ」
体力だとかは関係なく、もはや完全に気力だけで俺は体を動かしていた。
現実では大っ嫌い!な言葉の1つ『根性』に頼らなきゃいけない状況、わかっていてもストレスはたまる。
「捕まえたら覚えてろよ…」
八つ当たりなのはわかっているが、こんな目に合っている元凶だと思われる追いかけている相手に少し仕返しを考えて気を紛らわせる。
そうして更に追いかけて10分追加で経過する。
なんとか遠目に影だけは捉えながら追いかけているようなギリギリの状態になっていた。
「はぁ…はぁ…」
足だけではなく呼吸にまで疲労が出始めたのが2分前からだ。
まず間違いなく限界が近づいてきている。まだシステムをよく理解していない俺だが、視界の中にある疲れた人の顔のようなアイコンが『疲労状態』を表しているのはなんとなくわかる。
しかも並ぶように胃袋のマークもある事から空腹状態にもなっているのだろう。
「無駄に現実に沿ったシステムだなっ」
だからこそ面白く感じているのだが、今はそのシステムが少し恨めしい。
なんて事を考えても意味がないのは理解している。だからこそ解決策を考えたいが、まだろくにスキルも使用していない俺には工夫のしようがなく。ひたすらに気合で追いかけるしかできなかった。
それだけに…もう諦めようかな…と言う弱気な考えも出てきた。
そんな時…
「止まった?」
ようやく追いかけていた相手が止まったのを確認できた。
同時に俺も止まってみると逃げる様子もなく、むしろ待っているかのようにこちらを向いていた。
それを見て走る必要はなくなったんだな…と、わかって少しゆっくりと歩いて近づく事にした。
街中だから奇襲されることはないと思っているけど、油断させて攻撃!なんて事がリアルに再現されているからこそ怒らないかだけが心配だった。
でも、出た先にあったのは少し開けた大きな道だった。
「おめでとう!!貴方は『幻夢の試練』最初のクリア者です!!!」
「……は?」
脱出できたことに感動する間もなく言われた事に理解が追いつかない。
今まで迷っていたのが『幻夢の試練』と言う物だったことはわかったが、それよりも今一番気になるのは目の前の宣言をした存在の方だった。
虫のような半透明の光る羽を生やし、鮮やかな赤い色の髪を短く切りそろえ、同じく赤いワンピースを着た小さな女の子。童話などに出てくる『妖精』が、確かに目の前で飛んでいた。
そんな妖精は動揺して話せない俺のことなどお構いなしに楽しそうに笑顔を浮かべ、話を進めた。
「さぁ~さぁ~!初のクリア者様をご案内‼」
「「「「ご案内~!」」」」
「……」
気が付くと色の違う妖精が追加で5人増えていて、祝うように俺の周りで紙吹雪を舞い散らす。
1人静かな妖精もいたが俺から逃げるように案内しようとしている建物へと入って行ってしまった。
「おい、何処に案内を「いいから!いいから!!」ちょっ」
とにかく状況確認のために質問しようとしたが、赤い妖精に遮られて背中側から押されてしまう。
「「「「どうぞ~どうぞ~」」」」
そこに他の4人の妖精まで加わって押してくるので小さな相手とは言え、初期状態の俺よりはステータス値が高いのか力負けしてしまった。
もう逆らう気力もなくなった俺は目の前の草が生い茂って全容がよく見えない。
そんな怪しげな建物へと押し入れられるのだった。
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大変かと思いますが頑張って下さい
ありがとうございます!
誤字脱字が結構多いですね。話は面白いですが。
もう少し最初の方から見直したほうが良いのではないでしょうか。
誤字脱字が気になりますがストーリーがとても良い感じで楽しく読ませていただいてます!