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しおりを挟むリーデルハイムのスティラ国へ身を置いてから半年。初めの頃は色々と騒動はあったが、こちらの世界にも大分慣れ、街中には顔見知りも出来て、行きつけの店なども出来た。
勿論、騎士団員としての責務である魔物討伐も何度か体験し第三は勿論、第四から第八の団員とも上手くやっている方だと思う。
第一、第二は…まぁ…そこそこ……いや、ほどほど……うん、あんまり仲良くありません。
というか嫌いです。
擦れ違う度に尻を触られたり、部屋に連れ込まれそうになるもんで、いい加減ブチ切れたら逆ギレされたんで、ボコったら大人しくなったけども。
とにかく嫌いです。
滅べ。
第三騎士団の皆は、俺が攫われた件から妙に過保護になりまして。1人で行動する事は殆ど無くなるほど、常に誰か傍にいてくれるようになった。
ギルはあの件から俺に猛アピールをしてくるが、本気で嫌がればちゃんと引いてくれる。ただし、キスは強請られるが。
レイドはスキンシップが増えた気がするが、相変わらず真面目に俺の訓練相手になってくれている。
ヒースはもう、俺の母親です。怖いけど。
そんなこんなで充実した日々を送っていたある日、王命が下された。
三国合同演習及び、国境付近の魔物討伐任務。
魔族が治める国、ハーデン。
獣族が治める国、ガイオン。
人族が治める国、スティラ。
3種族の代表ともいうべき大国と呼ばれる三国が合同で演習をするのだ。
大規模な任務の為、スティラ国側からはスティラ国第二王子である、アレクセイ・ルナリア・スティラ殿下と第一、第三、第四騎士団が参加する。
演習を行う場所決めで少し揉めたらしいが、スティラ国内で行う事に決まった。
理由としては3つ。
1つ目は三国が合同で集まれるような広々とした土地がスティラにしか無かった。ハーデンは湿地が多く、ガイオンは山岳地帯が多い。
2つ目はスティラ国の演習場所が他の二国の国境に近いこと。
3つ目は三国の中でも、特にスティラ国が魔物の発生が多いという点。
ほぼ、3つ目の理由で決まったらしいが。
スティラ国に魔物が多く発生するには訳がある。
魔物とは、自然界に存在する魔素が滞留し、澱んでしまうとそこから魔物が湧いて生まれてくる。
魔素とは、魔力の事。
魔素は、自然が豊かな場所で多く出来る。故に、自然豊かなスティラ国で魔物が湧いて生まれてくる事が多く、魔素溜まりと呼ばれる澱みは、盆地や洞窟など空気の流れが滞る場所で発生する。
魔族の国ハーデンでも魔素溜まりが起こりやすい場所はあるが、魔法関係で発展した国故に大量の魔道装置を駆使して魔素溜まりの発生を防止する策を取っている。
獣族の国ガイオンでは、山岳地帯で洞窟なども多いが鉱山仕事などで人の出入りがあり廃坑になった場所でも人の多さを武器に魔物討伐と称して見廻りを徹底している。
三国共に魔物は発生するが、スティラ国が圧倒的に発生回数が多く人的、物的被害も多い。
今回の三国合同演習及び、国境付近の魔物討伐任務は、魔物討伐が主軸となるが国同士の様々な事情などが付加されて、合同演習という名目が必要なんだとか。
まぁ、下は上の決定した命令を聞いて動くだけなので難しい事は分からん。
様々な理由がある中、やって参りました大草原。
見渡す限りの原っぱです。遠くの方には、鬱蒼と生い茂る巨大な森が広がっている。今回の魔物討伐の目的地だ。
大草原には様々な種族が己が陣営で忙しく動き回っている。
スティラ国陣営の左側には、獣族。人間のような姿に様々な動物の耳や尻尾をはやした姿で、中には獣が二足歩行で歩いているような姿の者もいる。獣族は個々の身体能力が高く人間の3倍以上に及ぶが、魔法はあまり得意ではない。
スティラ国陣営の右側には、魔族。こちらも見た目だけなら普通に人間だ。その側頭部から2本の様々な形の角を生やしている以外は。中には翼の生えた者もいる。獣族と対照的で魔法全般に長けており、身体能力は人間よりも少し劣ってしまう程度。
どの陣営にも国の代表や王族と呼ばれる人物がいる。視察として参加したらしいが、スティラ国の第二王子とガイオン国の王の名代だという人物は討伐任務にも同行するようだ。
魔族の王族は草原に残るそうだ。それでも緊急事態に陥った場合、指揮を執ってもらう立場になる。
今回の任務は3日間に分けて行われ、1日目は三国ごちゃ混ぜで訓練をする。2日目以降で3種族混合30名の部隊で組ませられる為、1日目からその部隊のメンバーで連携などの訓練をする。
2日目から森へ討伐任務に赴き、1日かけて森で魔物討伐の任務をこなし、3日目に帰るという日程だった。
森の中での任務に向かない槍兵、騎馬隊の面々は陣営が張られたこの大草原で待機だ。待機と言っても様々な仕事が課せられているが。
今回、魔法長の部隊は回復魔法が使える者だけ討伐に同行する。
俺が組まされた部隊は、獣族10名魔族10名第一、第三合わせて20名の、計40名。そこに、王子殿下が加わっていた。
第一騎士団が合同演習に加わったのは、第二王子の護衛のためだからだ。
よって、今回の任務に参加した第一騎士団全員が俺が組まされた部隊にいる。一応ギルの部下として騎士団に所属しているのでギルも一緒の部隊だ。王子殿下が加わっているため、団長クラスが一緒にいなければ問題なのだろう。
面倒事が起きずに何事もなく任務を終えられればいいんだけどな……。
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