クソ水晶(神)に尻を守れと心配された件

２４

翌日。
俺との会話で誘拐の首謀者と判明したロレンス、実行犯の１人として捕らえられたカロン、その他雇われ誘拐犯の皆様は、無事に罪人として処理されました。
処理と言っても処刑などの命を奪うような行為ではない。罪に重さも何もあったものじゃないが、雇われ誘拐犯達は強制労働。
ロレンス、カロンの２人は記憶を抹消された上で監獄での生涯幽閉となった。
誘拐犯の罰にしては２人には重い気もするが、ロレンスの様子から危険度が高いと判断された末の罰らしい。
幸い、ロレンスに関係する不穏分子は捕らえられた者達だけだったようで、安心した。

そんなこんなで漸く一件落着したのだ。


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さて。ここは王都にある図書館。
俺は先日衝撃的な内容の本に出会ってしまったのである。
本のタイトルは確か…【リーデルハイムの現在】ってやつ。
リーデルハイムってのはこの世界の事らしい。日本で言うところの地球、みたいな位置付け。

その本には、国の名前や、各国の特徴、種族、交易関係など書かれていた。
それに、男女比率。
このリーデルハイムには人族、魔族、獣族の３種族がいる。もっと細かく分ける事もあるらしいが、それは暗記した本には書かれてなかった。
人族が２割、魔族が３割、獣族が５割の割合で存在し、どの種族も男９割、女１割らしい。
あのクソ水晶が確か…前の神様は女の人…人族を創るのが苦手とか何とか言ってたような…。
それはさておき。問題はその男女比率の項目だった。
その項目には最後の方にすっごい小っさい字でこう書かれていたのだ。
【18才までの性交でアナルを使った者は妊娠、出産が可能】

俺、今、17才。
あのクソ水晶ぉおおぉおお！！！何で18にしてくんなかった？！！
薬のせいだったけど、ギルとヤッちまったじゃねぇかよぉおおおお！！！


………………まぁ、ヤッちまったもんはしょうがない……。
とにかく、詳しく知るために本を探しに図書館へ来てみたのだ。
俺の事情を知ってる３人に聞く方が早いかもしれないが、事件の事後処理とかで忙しく動き回る３人を呼び止めるのが忍びなくて断念した。任せっきりになってしまったし。
ちなみに現在同僚騎士が２人、俺の護衛として付いてきてくれている。場数を踏んだ先輩騎士のトラスティさん(34)と、俺よりちょっと年上のアールくん(19)である。
終わった事とはいえ、暫くは宿舎外では護衛が付くらしい。念の為ね、念の為。


さて、目当ての物を……と本を探そうとしてハッとする。目の前に広がる膨大な数の本棚と、その棚にびっしりと並んだ本を見て呆然とした。
本のジャンルって何になんの？
この膨大な中からそれを探すの？
てか、どうやって探すの？
司書さんいないんだけど？
そもそもここにあるの？

あまりの本の数の多さに、一瞬気が遠のきそうになる。魔法で探せばいいのでは、と思い至るが図書館は火災発生を防止するため、魔法禁止の結界が施してある。つまり、手作業。
しかし、俺は自分の身に起きるかも知れないだろう事実を確かめるべく、目当ての本を探さねばならない。
アールくんに聞いたところによると、司書さんはちゃんといるらしく今はたまたまいないだけでは？との事。
良かった……。
取りあえず、自分で探せるだけ探してみよう。
性教育か、人体の仕組みか、それとも子どもが出来るまで、なんて本があればいいのだが…。
暫くは、本棚の横にあった大雑把なジャンル分けのプレートを見て探してみるが、なかなか見付からない。
トラスティさんとアールくんにも探してもらおうとしたが、現在２人は俺の護衛中である。つまり、仕事中。仕事の邪魔はするべきではない。俺の事情も話してないしな。
と、いう訳で１人で頑張って探してます。漸くそれっぽい表紙の本を見付けて中を確認する。
……………どうやらこれのようです。
表紙は【これから妊娠・出産する方々へ～宝物に会う為に～】という、指南書のようだ。
可愛らしい色合いの薄めの本だった。
今ここで読んでも良かったが今後のために暗記しようと、貸出カウンターへ向かって手続きをする。
司書さんと護衛の２人から何やら暖かい目線を感じたが、それどころではない。俺の身体に関わる事だ。しっかり勉強しなくては。


護衛の２人に今日の礼を言い、宿舎の自室に戻って借りてきた本に手を翳す。暗記魔法で暗記した後、中身と知識の確認も兼ねて本を開いた。
一通り目を通して分かった事は、18才までの性行で尻を使うか使わないかで変わる。
尻を使わなかった場合、特殊な方法以外での妊娠・出産は不可能。要するに、大金を払って魔法で身体を変えるらしい。
尻を使った場合、18才を迎えたその日から身体に変化が現れる。体表的な変化は、髪の伸びるスピードが早まる程度。
全種族共通で満月の夜にしか妊娠せず、子宮、膣が形成される。
満月の２日程前から体内で子宮と膣を形成しだし、その間、倦怠感などの体調不良を起こす。個人差有り。
妊娠しなければ、翌日から２日程かけて身体が元に戻っていく。その間、ひどく体力を消耗するため、通常の３倍程の食事量になる。

本の最後の方には、スティラ国の出生男女比率が書かれており、王族を含めて女は0.01％しか生まれないらしい。
その為、生まれた女児はその希少性からか保護対象となり、王宮で育てられるらしい。
そしていずれは王族の仲間入りになるんだとか。


そこら辺の事情はまぁ置いといて……つくづく、不思議なものだと思った。
魔法の存在もだが、この世界の種族、男女比率、身体の変化…。改めて違う世界なんだと実感し、同時に騎士団として魔物と戦う際に支障が無い事にホッとした。
18才になったら、満月の前後合わせた5日間気を付ければいいのだと確認して本を閉じる。
この世界の自分の誕生日がいつかは分からない。生前は後数ヶ月で誕生日だったが、そこは自分を鑑定しながら確認していけばいい。
もしもの時に備えてヒースにも話は通しておこう。
なってしまうものはしょうがないし、俺に出来る事をするだけだ。

そう思ってヒースに報告したら…。


｢大丈夫ですよ。我が騎士団は、妊娠・出産の為の休暇がありますし、特別手当もあります。現在も数名、第三騎士団で育児休業中の方がいらっしゃいますしね｣


何が大丈夫なんですか、ヒースママン…。
まるで俺がこれから産むの確定みたいな話をするじゃないですか…。
ギル！！何恥ずかしそうに俺を見てる？！！
レイド！何を悔しがってる？！
ヒース！！諦めた顔をしないでくれ！！

俺は…俺だけは、ちゃんと騎士団として頑張る！！