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63、学年交流会⑤

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結局、俺と春日井くん、藤堂先輩と生駒先輩がそれぞれ襷を交換し合いました。

桐生先生は欠席していた生徒さんの代わりで参加していたのでそもそも襷は欠席した生徒さんの名前です。なので襷交換には不参加ですし、じゃんけんで負けた不破先輩も襷交換をしていません。


「不破先輩は大丈夫なんですか?ファンの方に見付かったら大変なんじゃ?」


白い襷を付けたままの不破先輩に視線を向けましたが、俺の言葉にニヤリと不敵な笑みを浮かべた先輩は付けたままだった襷を外して桐生先生に差し出しました。


「俺はこのままサボるわ。よろしく、先生?」


その言葉を聞いた桐生先生は何かを察して頷き、差し出された襷を受け取りました。


「……分かりました。このまま職員室まで行きましょうか、不破くん。私も続行不可能になりますし、他の先生に代わってもらいましょう」


成る程、その手がありましたか。
桐生先生の言葉でようやく理解した俺は、感心したように2人を見つめます。

先程の危険な一団とのやり取りでも桐生先生が言っていたように、サボりの生徒さんは職員室へ連行されます。襷を取り上げられて。

学年交流会を欠席する生徒さんは、不破先輩のようにサボり目的か当日参加不能になったかのどちらか。
事前に分かっていた場合は用意していた襷は職員室で保管されますが、急な欠席の場合はどの先生に代わられるか分からない部分がありました。
先生に代わってもらった場合、見付かるか見付けられるか、そのどちらでもないか、結果が分からなくなってしまいます。
不破先輩はそんな結果を回避するために一時参加して後からサボろうとしていたのでしょう。

桐生先生の場合、欠席した生徒さんの代わりとは言え隠れ役の生徒さんを見付けるまでファンの方に付きまとわれるのでしょう。
かと言ってこの場にいる隠れ役の3名と交換しようとは思わなかったらしく、サボり目的の不破先輩の相手をすれば代理という立場を代われるのだとか。

上手い具合に話が纏まりました。良かったです。


さて。
襷を交換し合い、又は取り上げられた俺達は、それぞれペアになりつつ屋上を後にします。
勿論、周りに誰もいない事を確認してきちんと扉を施錠して、です。


「春日井くん、助けて頂いてありがとうございます」


俺は隣を歩く春日井くんに改めてお礼するべく頭を下げました。
実行委員の隠れんぼは、後10分程でタイムリミットになります。残り2時間は学園内を見回る仕事にシフトチェンジするため、2人で体育館へ向かって廊下を歩いています。
俺のお礼の言葉に、春日井くんはにこりと笑みを浮かべて俺の頭をポンと撫でます。


「俺達が勝手にした事だしね。田中くんは学年交流会楽しめなかっただろうし」


先生や先輩方にも改めてお礼をしなければと思っていましたが、何やら認識が違うようです。


「それでも、皆さんが助けてくれなかったら酷い目に遭っていたかもしれないですし。お礼はきちんとするべきだと思ったので」


俺の言葉に何事かを考えるように無言になった春日井くんは、名案を閃いたと言わんばかりに輝くばかりのイケメンスマイルを浮かべます。


「じゃあ、実って呼んで良い?俺のことも和馬って呼んでいいからさ」


どんな事を言われるのかと思えば、名前の事でした。勿論、俺は了承の意味を込めて頷きます。それくらいお安い御用ですよ。

俺のお許しが出た春日井く…和馬くんは、その後不気味なほどニコニコとご機嫌でした。

見廻りの時もニコニコとご機嫌な笑顔を浮かべて揉め事の仲裁に入ったり、因縁を付けてくる生徒さんの対応もニコニコとご機嫌笑顔のままで、端から見ると不気味だ……という事態に。

この時ばかりは、和馬くんのファンの方も遠巻きに様子を窺っているだけでした。

和馬くんの様子を見かけた藤堂先輩と生駒先輩は声を揃えて一言。


「「気持ち悪い」」


と口にして遠ざかったとか。



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