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44、お邪魔します

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俺は今、職員寮へ来ています。
早めに夏休みの課題を終わらせようと自室で勉強していましたが、数学の課題が難しくて行き詰まってしまいました。
以前、桐生先生にいつでも質問しに来ていいと許可を頂いていたので早速職員室へ向かいましたが、生憎桐生先生は今日は来ていないという返答を他の先生から聞き、俺は職員寮へ足を運んだのです。

学生寮とは違い、大人っぽいモダンなエントランスがあり近くには管理室が併設されています。
管理室の呼び出しボタンを押して桐生先生を呼び出してもらい、俺はエントランスで待ちます。
すると程なくして私服姿の桐生先生が現れました。
いつもはきっちりとネクタイをしている先生の私服姿は新鮮で、思わず見惚れてしまうほど格好いいのです。


「田中くんでしたか。課題で分からない所でもありましたか?」


俺を見た先生はすぐに笑みを浮かべて俺が手にしている勉強道具を確認しました。
俺は先生の言葉を肯定して困ったように眉を下げてしまいます。


「はい。難しくて…先生に教えて頂こうかと思ったんですが…」


そう言ってページを捲ろうとしますが、生憎勉強出来るようなスペースはエントランスにはありません。どこで教えて貰えば良いのでしょうか。


「心配しなくても大丈夫ですよ。職員寮には生徒に勉強を教える部屋も備わっています。案内しますね」


そう言って俺の隣に立ち背中に手を添えて歩き出す先生に付いていく形で俺も歩き出します。

先生…ちゃんと付いて行くので手は添えなくてもいいんですよ……。

なんて事を思いつつ、折角案内してくれるという先生にそんな事は言えませんでした。

暫く歩いて立ち止まった場所には扉が4つ程。
恐らくこの4部屋が生徒に勉強を教える為の部屋なのでしょう。しかし、困った事にどの扉にも使用中のプレートがぶら下がっています。
満室です。困りました。


「困りましたね……今から職員室に行くのも時間が勿体ないですし…。田中くん、落ち着かないかもしれませんが私の部屋に行きましょう」


使用中のプレートを見ながら先生は仕方ない、とばかりに軽く息を吐き出して別な場所を提示してきました。

完全にプライベートスペースなんですが。
大丈夫なんでしょうか。


「先生のプライベートスペースですよね?完全に立ち入り禁止の場所ですけど……大丈夫なんですか?」


俺の疑問なんてお見通しだったかのようにニコリと笑みを浮かべると、桐生先生は俺の背中……いや、腰に腕を回してそのまま来た道を戻り始めました。

先生……こういうエスコートは女性にしましょうよ…。


エントランスに戻り、桐生先生がやって来た方向へ向かいます。
奥にはエレベーターがあり、ボタンを押すとすぐに扉が開きました。エスコートされたままエレベーターに乗り込み桐生先生のお部屋がある階のボタンを押します。
なすがまま、とは正にこの事。そのままエレベーターを降りて桐生先生のお部屋がある場所まで連れて行かれます。
まるで高級マンションのような落ち着きのある廊下を歩くとすぐに到着したらしく、腰に回されていた手が離れました。


「どうぞ」


わざわざ扉を開けて中へ入るように促してくれます。
俺は若干緊張してお邪魔します、と足を踏み入れました。



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