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34、夏休みのご予定は?⑤
しおりを挟む考えが上手く纏まらず、1人になるために自室へと急ぎます。
鍵を用意してすぐに入れるようにスタンバイするのも忘れません。
自室の前に着くと、鍵穴へ用意していた鍵を差し込み回します。
カチャリとロックが外れ、ただいま!と扉を開けようとした所で隣室の扉が開きました。
隣室の扉から現れたのは、お隣さんで有名な生徒会長さん。
「あ、田中くん丁度良かった。今少し時間良いかな?」
いえ、良くありません。とてつもなく急いでおります。今すぐ考えなければならない案件があるのです。
なんて言えるはずもなく、俺は生徒会長さんへ身体を向けて頷きます。
「手短に済ませていただけるなら」
「うん、あまり時間は取らせないから」
そう言って部屋から出て俺の目の前まで歩み寄る生徒会長さんを見上げます。
「ちょっとした確認なんだけどね。田中くんは夏休み中寮に残るんだよね?」
生徒会長さんの言葉に素直に頷きます。ここで余計な時間はかけていられません。
「良かった。夏休み明けの学年交流会なんだけどね、一部変更になったから夏休み中に変更箇所の確認と準備で委員会で集まる日が多くなりそうなんだ。帰省組は仕方ないとして、居残り組の委員は出来るだけ参加して欲しいんだよ。委員の半数以上が帰省組だから、参加してもらえると助かるんだけど…」
申し訳なさそうに眉尻を下げて話す生徒会長さんに嫌とは言えず、更に言うなら早く話を切り上げたい気持ちで参加する方向で返事をします。
「はい、構いませんよ」
「ありがとう、助かるよ。差し入れはさせてもらうから、昼食とかは用意しなくても大丈夫だからね。日程は後日プリントで配布するから。本当に助かったよ、ありがとう田中くん」
そう言って安堵の微笑みを浮かべて俺の頭を軽く撫でて部屋へと戻っていく生徒会長さん。
差し入れが楽しみでなりません。
生徒会長さんが用意するお昼ご飯、何時も美味しそうなんですよね。ご実家から専属の料理人を連れてきているらしく、その腕前は三つ星レストラン並だとかなんとか。
引き受けて良かった。
良かった!!
何だかんだで生徒さんへの気配りが出来て、気遣い、励ます生徒会長さんは、とても面倒見の良い先輩です。
生学委員会は生徒会の補佐的役割の委員会ですが、とにかくやることが多いのです。
発足当時は生徒会の皆さんがわざわざお手伝いにきてくれましたが、委員会活動に慣れてきてからも生徒会長さんだけは時折手伝いに顔を見せてくれます。
自分が発足させたのだから、と仰ってましたが委員会の皆さんを気遣っている気持ちが伝わってきてました。
完璧だと称される生徒会長さんの一面はとても優しく、俺は好ましく思います。
じゃありません、今はお部屋へ直行です。
食べ物につられてしまったばかりに、更に深刻な状況になったかもしれません。
一度ちゃんと頭の中を整理しなくては。
そう気を取り直した俺は、自室の扉を今度こそ開けて中へと入って行ったのです。
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