ハルといた夏

イトマドウ

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ハルとナツ

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 思わず走り出して、神社からでた。神社からでると人の数は極端に減った。
 そばには誰もいないバス停があったので、バス停のベンチに座った。
 とりあえず、冷静になろうと思った。
 心臓はバクバクなっているし、何で急に走り出したのか自分の行動が信じられなかった。
 深呼吸をするが、バクバクがドキドキに変わっただけで全然落ち着かなかった。
「ナツ」
 ドキドキが一瞬ドキッ大きく脈打ち止まるかと思った。
「ハル・・・」
「どしんよ。急に」
 ハルは僕の隣に座った。口調はとても優しかった。
「急に、ごめん、ごめんなさい」
「いいんよ。でも、どうしたんね」
 僕は、自分の中でも全然まとまっていなかったけど、一気に思っていることを話した。
「ハルが困ってると思ったんだけど、ちがくて・・・」
「ハルがあの人を好きなだと分かって、ハルの邪魔しちゃったと思って・・・」
 消え入りそうな声しか出なかった。
 ハルは、もの凄く驚いた顔をしていた。でもすぐに優しい笑顔を浮かべて頭をかいた。
「・・・そっか。ナツにバレるとは思わなかったんよ」
 ハルは正直に認めた。
「僕、初めて人の気持ちがわかったかも。でも、人の気持ちがわかっても全然うれしくない」
「ほうか。ナツもわかるようになったんやね」
「でもな、そんな単純なものでもないんよ」
 ハルは僕を見つめながら言った。
「ナツは、あたしの恋愛感情っていう気持ちはわかって、私に伝えた」
「だけど、あたしがそれを言って欲しくなかったっていう気持ちはわからんかったじゃろ?」
 僕は黙ってうなずいた。
「少しだけ人の気持ちがわかっても、それだけじゃどうしようもないんよ」
「さっきの人な上野ゆーて、あたしのクラスメイト。で、マナの好きな人で、マナが好きな人。まだ付き合ってへんけど相思相愛」
「えっ?」
「あたしは2人のこと好きやから目で追ってしまうんよ。そうやってよく見てると2人の気持ちが色々わかってしまうんよ」
「そのうえで、今のあたしの行動があるんよ。これが正しいのかあたしにもわからないんよ。でも、あたしは今の距離感が一番好きなんよ」
 そう言って、ハルは両手を上にあげて伸びをする。
「で、ナツ、あたしのこと好きやろ?」
「えっ?」
「あたしの気持ちに気づくってことは、それだけあたしを見てたってことやろ?」
 ハルは僕を見て微笑んだ。
「そうなのかな。よくわからないよ。人を好きになるとか」
「ただ、ハルといるのは楽しいし、ハルが困っているのはイヤだ。ハルには笑っててほしい。でも、ハルがあいつといるのは少しイヤっていうかモヤモヤするんだ」
「・・・これって好きなのかな」
 ハルが打ち明けてくれたことで僕は思っていることを素直に言った。
 言った後、恥ずかしくなって下を向いた。
「うーん、どうなんやろうね。実はあたしもよくわからないんよ。でも、ナツがあたしのために考えてくれたこと、行動してくれたことはとても凄いことだと思うんよ」
 ハルは僕の頭を撫でてくれた。
「ハルは、ぼっけぇ優しいんよ」
 僕の中にもいろんな気持ちがあるんだろうけど、少なくとも今はうれしい気持ちでいっぱいだった。

 その後、ハルとくだらない会話をしてたら夏祭りが終わってしまった。
 結局、あんず飴しか食べれなかったけど、お腹いっぱいというか、とても満たされた気持ちだった。
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