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第23話 エンディング(仮)
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「たっだいまーっ!」
声が弾む。
そして心が軽い。
体の奥底から明日への希望と生きるエネルギーが火山のように溢れ、爆発して止まらない。
嗚呼……空は、世界は、何でこんなにも綺麗なんだろう?
生まれてからついさっきまで、ずっと同じような景色を見てきたというのに、何で急にこんなにも美しく見えるのだろうか?
おそらく、これは恋の魔力、恋愛補正に違いないな!
素晴らしい! そして美しい!
これだけで明日も頑張って生きていこうと思える。
俺は靴を脱ぎ捨てると、足取り軽くスキップしながら居間のドアを開けた。
「キズナ! 今帰ったぞ!」
「ああ、おかえり、太陽」
テンションMAXの俺とは対照的で、キズナの反応は静かだった。
最高難易度の案件を無事に完了させることができたのだから、もっと喜んでもいいんじゃないのに。
「……キズナ? 嬉しくないのか? 難しい仕事が終わったってのに」
「えっ!? あ、うん。嬉しいよそりゃね。レベル4案件を片付けたなんてなれば、ボクの名前に箔がつくし、特別ボーナスももらえるしさ。だけど……」
「だけど?」
「いや……うん、何でもない。おめでとう太陽。これで彼女イナイ歴も終わったね」
そう言ってキズナは、俺の両手を取った。
俺はお返しに心からの笑顔を見せる。
「ありがとう、キズナ。本当にありがとう。お前がいてくれたおかげで俺は……」
「そんな……ボクはただ……仕事だからやっただけだし。だから、そんな感謝してくれなくてもいいってば!」
キズナの頬が赤い。多分、照れているのだろう。
「いや言わせてくれ。お前が俺にしてくれたことは、例え仕事が理由だとしても、とても言葉で言い尽くせるもんじゃない。なのに言葉でしか感謝の気持ちを伝えられないのがもどかしいぜ! ありがとう……本当に、ありがとうっ! キズナ!」
「だっ……だからいいって! これがボクの仕事なんだからして当然なの! ……それに」
キズナが何か言おうとして、止めた。
何を言おうとしたのか気になったので、俺は彼女に尋ねようとした。
しかし、口を開こうとした矢先にキズナが手を離したので、それに気を取られてしまい尋ねるタイミングを失ってしまった。
そのままキズナは、帰宅の準備を始めてしまう。
何とか折を見て質問しようとするも、結局俺は聞けなかった。
「それじゃあボク帰るね。彼女とお幸せに!」
「もう? もうちょいゆっくりしていけよ。お前のおかげで彼女ができたわけだし。せめて俺の作れる最高のごちそうでもてなさせてほしいんだけど」
「そうもいかないんだ。……ほら、ボク、太陽と同い年だけど社会人だしさ。仕事が終わったら会社に帰らないと」
「少しくらい、いいんじゃないのか? 難しい仕事をこなしたわけだし」
「いや、ダメ。ちょっと気になることが……」
「気になること?」
「あ……ま、まあ大したことじゃないんだよ。でも、ちょっと……ね。そ、そうだ! 太陽! これ持ってて!」
キズナは突然思い出したかのように強引に話題を変えると、モテホンを俺に渡す。
「これ、太陽に預けるから! いい? 絶対になくさないでね?」
「ああ、わかった……けど何で? もう終わったんじゃ?」
「いや、まだだよ。ここからは回復フェイズ。ゆっくりと時間をかけてきちんと直さなきゃいけないんだ」
手術は終わっても即退院ってならないでしょ?――とキズナ。
「完全に修正が終わってバグが消えるまでには大体半年くらいかな? それまで机の引き出しの奥にでも保管しておいて」
「そういうことならわかったよ。厳重にしまっておく」
「うん、そうして。これはきみの運命に打ち込んだ楔のようなものなの。もしこれが何らかの拍子に壊れてしまったら……」
――フラグは失われ、恋人関係は『なかったこと』になる。
そんな恐ろしい言葉がキズナの口から飛び出した。
「だからそうないよう注意すること。絶対に誰の目にも触れないようにすること。いい?」
「わかった……肝に銘じる」
「じゃあ、任せたよ? 時間になったら取りに来るから。お幸せに。太陽と彼女の幸せな未来を天界で祈ってるよ」
「あ、ああ。……ありがとう」
「本当に……祈ってるから」
――バタン。
ドアが閉まる。
見送ろうと外に出たが、地上にも上空にも、彼女の姿は見えなかった。
「ありがとう、キズナ。俺、幸せになるよ。……絶対に」
俺は空を仰ぎ見、感謝の気持ちを呟いてから家の中に入った。
そしてキズナに言われたとおり、モテホンを机の引き出しの奥底に保管し鍵をかける。
誰の目にも触れないように。
「キズナ……俺、絶対幸せになるからな」
昨日と今日の、二日間という短い間で起きた不思議な出来事、
そこで出会った人間ではない、天使の女の子、
彼女がもたらしてくれた青い春を、十分に謳歌しようと思う。
世界はこんなにも美しく、
そして優しく、
夢と希望に溢れているのだから――。
ーーーーーーーーーーFINーーーーーーーーーー
――と、ここで終われば物語はわりときれいに完結を迎えたのではないかと思う。
世界は言うほど美しくない。
世界はこんなに優しくない。
夢と希望はあるが溢れてはいない。
そのことに俺が気づいたのは、キズナが帰ってしばらくの後。
帰る間際に言っていた「気になること」、それが俺に牙を剥き始める。
4月29日、午後4時、運命は加速する。
それも最悪な方向へと。
……
…………
………………
――ピンポーン!
「はーい、どちら様?」
運命の扉が、今開いた。
「こんにちは、太陽くん。……来ちゃった」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
お待たせしました。
リアルの仕事がある程度落ち着いたのでネット小説のほうを再開します。
さあ、ここからが後半戦の始まりです。
ラブコメからの急展開!
声が弾む。
そして心が軽い。
体の奥底から明日への希望と生きるエネルギーが火山のように溢れ、爆発して止まらない。
嗚呼……空は、世界は、何でこんなにも綺麗なんだろう?
生まれてからついさっきまで、ずっと同じような景色を見てきたというのに、何で急にこんなにも美しく見えるのだろうか?
おそらく、これは恋の魔力、恋愛補正に違いないな!
素晴らしい! そして美しい!
これだけで明日も頑張って生きていこうと思える。
俺は靴を脱ぎ捨てると、足取り軽くスキップしながら居間のドアを開けた。
「キズナ! 今帰ったぞ!」
「ああ、おかえり、太陽」
テンションMAXの俺とは対照的で、キズナの反応は静かだった。
最高難易度の案件を無事に完了させることができたのだから、もっと喜んでもいいんじゃないのに。
「……キズナ? 嬉しくないのか? 難しい仕事が終わったってのに」
「えっ!? あ、うん。嬉しいよそりゃね。レベル4案件を片付けたなんてなれば、ボクの名前に箔がつくし、特別ボーナスももらえるしさ。だけど……」
「だけど?」
「いや……うん、何でもない。おめでとう太陽。これで彼女イナイ歴も終わったね」
そう言ってキズナは、俺の両手を取った。
俺はお返しに心からの笑顔を見せる。
「ありがとう、キズナ。本当にありがとう。お前がいてくれたおかげで俺は……」
「そんな……ボクはただ……仕事だからやっただけだし。だから、そんな感謝してくれなくてもいいってば!」
キズナの頬が赤い。多分、照れているのだろう。
「いや言わせてくれ。お前が俺にしてくれたことは、例え仕事が理由だとしても、とても言葉で言い尽くせるもんじゃない。なのに言葉でしか感謝の気持ちを伝えられないのがもどかしいぜ! ありがとう……本当に、ありがとうっ! キズナ!」
「だっ……だからいいって! これがボクの仕事なんだからして当然なの! ……それに」
キズナが何か言おうとして、止めた。
何を言おうとしたのか気になったので、俺は彼女に尋ねようとした。
しかし、口を開こうとした矢先にキズナが手を離したので、それに気を取られてしまい尋ねるタイミングを失ってしまった。
そのままキズナは、帰宅の準備を始めてしまう。
何とか折を見て質問しようとするも、結局俺は聞けなかった。
「それじゃあボク帰るね。彼女とお幸せに!」
「もう? もうちょいゆっくりしていけよ。お前のおかげで彼女ができたわけだし。せめて俺の作れる最高のごちそうでもてなさせてほしいんだけど」
「そうもいかないんだ。……ほら、ボク、太陽と同い年だけど社会人だしさ。仕事が終わったら会社に帰らないと」
「少しくらい、いいんじゃないのか? 難しい仕事をこなしたわけだし」
「いや、ダメ。ちょっと気になることが……」
「気になること?」
「あ……ま、まあ大したことじゃないんだよ。でも、ちょっと……ね。そ、そうだ! 太陽! これ持ってて!」
キズナは突然思い出したかのように強引に話題を変えると、モテホンを俺に渡す。
「これ、太陽に預けるから! いい? 絶対になくさないでね?」
「ああ、わかった……けど何で? もう終わったんじゃ?」
「いや、まだだよ。ここからは回復フェイズ。ゆっくりと時間をかけてきちんと直さなきゃいけないんだ」
手術は終わっても即退院ってならないでしょ?――とキズナ。
「完全に修正が終わってバグが消えるまでには大体半年くらいかな? それまで机の引き出しの奥にでも保管しておいて」
「そういうことならわかったよ。厳重にしまっておく」
「うん、そうして。これはきみの運命に打ち込んだ楔のようなものなの。もしこれが何らかの拍子に壊れてしまったら……」
――フラグは失われ、恋人関係は『なかったこと』になる。
そんな恐ろしい言葉がキズナの口から飛び出した。
「だからそうないよう注意すること。絶対に誰の目にも触れないようにすること。いい?」
「わかった……肝に銘じる」
「じゃあ、任せたよ? 時間になったら取りに来るから。お幸せに。太陽と彼女の幸せな未来を天界で祈ってるよ」
「あ、ああ。……ありがとう」
「本当に……祈ってるから」
――バタン。
ドアが閉まる。
見送ろうと外に出たが、地上にも上空にも、彼女の姿は見えなかった。
「ありがとう、キズナ。俺、幸せになるよ。……絶対に」
俺は空を仰ぎ見、感謝の気持ちを呟いてから家の中に入った。
そしてキズナに言われたとおり、モテホンを机の引き出しの奥底に保管し鍵をかける。
誰の目にも触れないように。
「キズナ……俺、絶対幸せになるからな」
昨日と今日の、二日間という短い間で起きた不思議な出来事、
そこで出会った人間ではない、天使の女の子、
彼女がもたらしてくれた青い春を、十分に謳歌しようと思う。
世界はこんなにも美しく、
そして優しく、
夢と希望に溢れているのだから――。
ーーーーーーーーーーFINーーーーーーーーーー
――と、ここで終われば物語はわりときれいに完結を迎えたのではないかと思う。
世界は言うほど美しくない。
世界はこんなに優しくない。
夢と希望はあるが溢れてはいない。
そのことに俺が気づいたのは、キズナが帰ってしばらくの後。
帰る間際に言っていた「気になること」、それが俺に牙を剥き始める。
4月29日、午後4時、運命は加速する。
それも最悪な方向へと。
……
…………
………………
――ピンポーン!
「はーい、どちら様?」
運命の扉が、今開いた。
「こんにちは、太陽くん。……来ちゃった」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
お待たせしました。
リアルの仕事がある程度落ち着いたのでネット小説のほうを再開します。
さあ、ここからが後半戦の始まりです。
ラブコメからの急展開!
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