6 / 37
第4話 とある天使の存在証明
しおりを挟む
「え? ちょ……八舞さん、俺の腰を見て!」
俺はキズナがしがみついているところを指さしながら、彼女にそう訴える。
しかし、彼女は怪訝な顔をしながら首をかしげただけだった。
「腰が、どうかしたの?」
「どうかしたのって……明らかにどうかしてるじゃないか。具体的に言うとしがみついてるこの女の頭が」
「あーっ! また言った! そんなこと言うヤツはこうしてやる! ていっ!」
「うおっ!?」
俺の腕を取ったキズナは蛇のように絡まりつきポジション変更。
良い感じのふとももで、今度は俺の腕を挟み込み、両腕を使って胸元で極める。
いわゆる飛びつき腕ひしぎ十字固めである。
女の子とはいえ全体重をかけて、曲がらない方向に腕を極められているからめっちゃ痛い。おまけに重い。
俺は彼女を支えきれず、思わずその場で膝をついた。
「痛てててててっ!? おいバカ! いい加減放せ!」
「イヤだよ! 外してほしかったら電波女って言ったことを取り消せ!」
「わかった! わかったから! 俺が悪かったから! 取り消すからさっさと放せよ!」
「ふんっ、次言ったらまたこうだからね。よく覚えておきなよ」
もう二度と会わないだろうし、誰が覚えておくかっての。
俺は膝をパンパンと払うと、八舞さんにこっそりと耳打ちする。
「……ほら、明らかにどうかしてるだろ? コレ。会ったばかりの男に難易度の高い関節技を極めるばかりか、自分のことを天使とか言うんだぜ?」
腕を組んでふんぞり返っているキズナを指さしながら、八舞さんにそう説明する。
たわわに育った胸が腕に乗っかり、男子的に絶景ではあるが、これ以上関わりたいとは思わない。
「服を見てわかると思うけど、明らかにウチの生徒じゃないし、警備員の人を呼んできてもらえないかな? もしくは精神科やってる病院に連絡でもいい。俺がなるべく時間を稼ぐか――」
「あの、茂手くん。さっきから何を言っているの?」
「何って……この変な女についてだけど」
「やれやれ、太陽は物覚えが悪いようだね?」
「電波とは言っていないだろ!」
「同じことだよ! 覚悟しろ!」
じりじりとキズナが近づいてくる。
「ほら、こいつだよこいつ! この変な女に絡まれて困ってるんだよ!」
「どこにいるの? その、変な女って」
「……………………は?」
どこって……目の前にいるじゃないか。
背中を丸めながら、じりじりと距離を詰めてタックルの機会を狙っている、おっぱいの大きな変な銀髪女がそこに――。
「誰も、いないわよね? そこ」
「え……ちょっと待ってくれよ八舞さん。……冗談だろ? 自己主張の激しい(特に一部)変で騒がしい女が目の前にいるだろ?」
この俺の言葉に、彼女は首を横に振った。
「無駄だよ。ボクの姿、きみ以外に見えていないから。特殊なシールド張っているし、天界製のアイテムを触って、脳が覚醒しない限り、普通の人間は天使の姿を見ることができないんだ」
だからさっきのボクとのやり取り、全部一人芝居に見えていたんじゃないかな?――とキズナ。
……そんな、嘘だろ?
そんな俺の心の声をあざ笑うかのようなリアクションが、八舞さんからもたらされる。
「えーと、私には何も見えないんだけど……もしかしてさっきまでのはお芝居なのかな? 演劇部のお友達に頼まれて練習していた、とか?」
そん……な、馬鹿な……。
オレは今自分の目の前で起きていることが信じられなかった。
自分にははっきりと見えているのに、八舞さんには見えていない。
「ああ、だから誰もいない教室で練習していたのね。お芝居って、他人に見られるの恥ずかしいもん。慣れないうちは特に」
「あ、ああ……実はそうなんだよ。急に出てくれって頼まれちゃってさ。どうだった? 俺の演技」
「ものすごく上手だったわ。まるで本当に誰かがそこにいるみたいで。茂手くん絶対演技の才能あるわよ」
「は、はは……そりゃどうも…………」
乾いた笑みしか出てこない。
「助っ人じゃなくて、本気で演劇部に入ったらどう? もしかしたら俳優への道が開けるかも!」
「……考えておくよ」
「ええ、是非そうしてみて。それじゃあ茂手くん、また明日ね」
そう言って彼女はフェードアウト。
夕暮れの校舎に足音が響き、やがて消えた。
「ね、言ったとおりだったでしょ?」
「この科学万能の時代にそんな……そんなファンタジーな存在を認めろっていうのかよ?」
「科学だって万能じゃないでしょ? 人類が今確認している物質って、宇宙規模で見たらわずか4パーセントにすぎないんだよ? この世界のことを1割もわかっていないのに、ファンタジーな存在を否定するのは早すぎると思わない?」
「た、たしかにお前の言っていることは筋が通っているし、彼女がお前の存在を認識できなかったのは事実だけど……こんな異常なことを、そうそう簡単に認めろって言われても……」
「あったま固いなあ。じゃあ詳しく説明してあげるから外行こう」
「お、おう……頼む」
外の風に当たれば、この混乱も多少はスッキリするかもしれない。
「じゃあボクは先に行くから」
突然キズナが窓を開けると、その窓枠によじ登り――そこから飛び降りた。
「馬鹿っ!? お前ここ3階だぞ!?」
俺は身を乗り出し、キズナの無事を確認する。
、
「言ったでしょ? ボク天使だって。翼だってあるから空くらい飛べるってば」
宙に浮いたキズナがそこにいた。
ご丁寧に純白の翼と、天使の輪っかも生やしている。
「さっきまでなかっただろ。心臓に悪いわ……勘弁してくれよ」
「えへへ、電波女って言ったお返しだよっ」
……
…………
………………
午後6時20分――、
どうやら本物の天使っぽいキズナと俺は学校を出て、駅前近くにある公園のベンチに座った。
カップルが集まると有名な公園だ。
「お前が天使だっていうのはわかった。確かに他の人には見えていなかったようだし、その背中の翼と頭のリングもそれっぽい。俺の頭が固かったことは認めよう」
「お、やっと認めてくれた。先輩から聞いていたけど、自分のターゲットに存在をきちんと認識させるのってこんなに大変なんだね」
「そりゃあほとんどの人はリアルに生きているからな。ファンタジーな存在が突然現れて、漫画やラノベみたいに存在を主張したところで、そいつの脳を普通疑う。黄色い救急車の手配を始める」
「そんなリアルに生きている太陽は、何で存在を認識した今でもこっちを見ないのかな? もしや……ボクに惚れちゃった?」
「どんな考え方をしたらそんな結論に至れるのか俺には全く理解できんが、それは違うと言っておこうか」
「じゃあ何でこっちを見ないのさ?」
「他の人には見えてないんだろ? それなのにそっちをガン見して話してたら、俺がアブナイ人に見られちゃうじゃねえか」
そう、俺は横のキズナを見ておらず、自分のスマホを耳に当て、誰かと話しているフリをしている。
こうすれば自然と風景に溶け込めるからだ。
「話しているのに無視されているみたいで感じ悪いなあ。なんなら翼とリングしまってステルス解除してあげようか?」
「止めてくれ。こんな学校の近くで女の子と二人っきりとか、誰かの目に絶対留まる」
高校生なんて身近な人物の恋愛系ゴシップが大好きだからな。
たとえ俺の顔がわからない奴が目撃しても、目撃証言を元に俺と同じような非リア充が自主的に捜査を始め、犯人を見つけ出す。
そうなれば終わりだ。
近い将来勇気がチャージされて八舞さんに告白できたとしても、それを理由に100パー『ごめんなさい』される。
現代を生きる高校生の生態をキズナに説明すると、キズナはどこからともなくタブレット(っぽいもの)を取り出して何かを調べ始めた。
「うーん、データを参照させてもらったけど、もしそうなってもそれを理由に『ごめんなさい』にはならないみたいだよ? 『茂手くんっていい人なんだけど……友達以上には思えないの』だってさ」
「何でそんなことが言い切れるの!? っていうかお前そのタブレットみたいなの今どこから出した?」
「ここからだけど?」
キズナは頭に浮かべているリングを手に取ると、その中に腕を突っ込んだ。
おかしい。リングには穴が開いているはずなのに突っ込んだ手が見えない。
そのままキズナはシュッシュと、リングの穴に自分の手を出したり入れたりを繰り返し、「ここから取り出したんだよ」ということを俺にアピールする。
「天使のリングの穴って、四次元空間への入り口なんだ。しかもこのリングって伸縮自在だからどんなに大きなものでも中に入れられるんだよ。すっごい便利でしょ」
確かに便利だ。
どことなく国民的人気アニメの青い猫型ロボットを彷彿とさせる。
「どこから取り出したのかはわかった。だからもういい。それよりさっきのお前のセリフ! 俺が八舞さんに告ったら『友達以上には思えない』って断られるなんて、どうしてわかるんだよ!?」
「わかるんだよなあ、これがあるから」
そう言ってキズナは、タブレットの画面を俺に見せる。
「何だよこれ? 片方が俺の名前で、もう片方が……八舞さんの名前が出ているけど」
「えっとね、ボクが持っているこれは《Little Oath Viewer typeE》、通称《LOVE》っていう、人界で言うタブレットみたいなモンなんだけど。この中に入っているアプリケーションソフトに《ザ・ネクサス》っていうのがあるのね。あ、《ネクサス》って意味は……」
「《絆》、だろ?」
「うん、そう。ボクの名前と同じ」
説明する手間が省けたのが嬉しいのか、キズナは俺に向かって微笑むとLOVEを操作し、
今言ったネクサスというアプリケーションを起動してみせる。
「このネクサスは世界中の人類のアカシックレコード――運命を閲覧できるアプリケーションなんだ。使い方は至ってシンプル、検索画面で運命を調べたい相手の名前を入力してパネルを押すだけ」
そう言いながら、淡々と俺の名前を打ち込んでいくキズナ。
「さっきボクはこれできみの運命を見たから、あのセリフでフられるって断言できたんだよ」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
運命がわかるって残酷ですよね。
俺はキズナがしがみついているところを指さしながら、彼女にそう訴える。
しかし、彼女は怪訝な顔をしながら首をかしげただけだった。
「腰が、どうかしたの?」
「どうかしたのって……明らかにどうかしてるじゃないか。具体的に言うとしがみついてるこの女の頭が」
「あーっ! また言った! そんなこと言うヤツはこうしてやる! ていっ!」
「うおっ!?」
俺の腕を取ったキズナは蛇のように絡まりつきポジション変更。
良い感じのふとももで、今度は俺の腕を挟み込み、両腕を使って胸元で極める。
いわゆる飛びつき腕ひしぎ十字固めである。
女の子とはいえ全体重をかけて、曲がらない方向に腕を極められているからめっちゃ痛い。おまけに重い。
俺は彼女を支えきれず、思わずその場で膝をついた。
「痛てててててっ!? おいバカ! いい加減放せ!」
「イヤだよ! 外してほしかったら電波女って言ったことを取り消せ!」
「わかった! わかったから! 俺が悪かったから! 取り消すからさっさと放せよ!」
「ふんっ、次言ったらまたこうだからね。よく覚えておきなよ」
もう二度と会わないだろうし、誰が覚えておくかっての。
俺は膝をパンパンと払うと、八舞さんにこっそりと耳打ちする。
「……ほら、明らかにどうかしてるだろ? コレ。会ったばかりの男に難易度の高い関節技を極めるばかりか、自分のことを天使とか言うんだぜ?」
腕を組んでふんぞり返っているキズナを指さしながら、八舞さんにそう説明する。
たわわに育った胸が腕に乗っかり、男子的に絶景ではあるが、これ以上関わりたいとは思わない。
「服を見てわかると思うけど、明らかにウチの生徒じゃないし、警備員の人を呼んできてもらえないかな? もしくは精神科やってる病院に連絡でもいい。俺がなるべく時間を稼ぐか――」
「あの、茂手くん。さっきから何を言っているの?」
「何って……この変な女についてだけど」
「やれやれ、太陽は物覚えが悪いようだね?」
「電波とは言っていないだろ!」
「同じことだよ! 覚悟しろ!」
じりじりとキズナが近づいてくる。
「ほら、こいつだよこいつ! この変な女に絡まれて困ってるんだよ!」
「どこにいるの? その、変な女って」
「……………………は?」
どこって……目の前にいるじゃないか。
背中を丸めながら、じりじりと距離を詰めてタックルの機会を狙っている、おっぱいの大きな変な銀髪女がそこに――。
「誰も、いないわよね? そこ」
「え……ちょっと待ってくれよ八舞さん。……冗談だろ? 自己主張の激しい(特に一部)変で騒がしい女が目の前にいるだろ?」
この俺の言葉に、彼女は首を横に振った。
「無駄だよ。ボクの姿、きみ以外に見えていないから。特殊なシールド張っているし、天界製のアイテムを触って、脳が覚醒しない限り、普通の人間は天使の姿を見ることができないんだ」
だからさっきのボクとのやり取り、全部一人芝居に見えていたんじゃないかな?――とキズナ。
……そんな、嘘だろ?
そんな俺の心の声をあざ笑うかのようなリアクションが、八舞さんからもたらされる。
「えーと、私には何も見えないんだけど……もしかしてさっきまでのはお芝居なのかな? 演劇部のお友達に頼まれて練習していた、とか?」
そん……な、馬鹿な……。
オレは今自分の目の前で起きていることが信じられなかった。
自分にははっきりと見えているのに、八舞さんには見えていない。
「ああ、だから誰もいない教室で練習していたのね。お芝居って、他人に見られるの恥ずかしいもん。慣れないうちは特に」
「あ、ああ……実はそうなんだよ。急に出てくれって頼まれちゃってさ。どうだった? 俺の演技」
「ものすごく上手だったわ。まるで本当に誰かがそこにいるみたいで。茂手くん絶対演技の才能あるわよ」
「は、はは……そりゃどうも…………」
乾いた笑みしか出てこない。
「助っ人じゃなくて、本気で演劇部に入ったらどう? もしかしたら俳優への道が開けるかも!」
「……考えておくよ」
「ええ、是非そうしてみて。それじゃあ茂手くん、また明日ね」
そう言って彼女はフェードアウト。
夕暮れの校舎に足音が響き、やがて消えた。
「ね、言ったとおりだったでしょ?」
「この科学万能の時代にそんな……そんなファンタジーな存在を認めろっていうのかよ?」
「科学だって万能じゃないでしょ? 人類が今確認している物質って、宇宙規模で見たらわずか4パーセントにすぎないんだよ? この世界のことを1割もわかっていないのに、ファンタジーな存在を否定するのは早すぎると思わない?」
「た、たしかにお前の言っていることは筋が通っているし、彼女がお前の存在を認識できなかったのは事実だけど……こんな異常なことを、そうそう簡単に認めろって言われても……」
「あったま固いなあ。じゃあ詳しく説明してあげるから外行こう」
「お、おう……頼む」
外の風に当たれば、この混乱も多少はスッキリするかもしれない。
「じゃあボクは先に行くから」
突然キズナが窓を開けると、その窓枠によじ登り――そこから飛び降りた。
「馬鹿っ!? お前ここ3階だぞ!?」
俺は身を乗り出し、キズナの無事を確認する。
、
「言ったでしょ? ボク天使だって。翼だってあるから空くらい飛べるってば」
宙に浮いたキズナがそこにいた。
ご丁寧に純白の翼と、天使の輪っかも生やしている。
「さっきまでなかっただろ。心臓に悪いわ……勘弁してくれよ」
「えへへ、電波女って言ったお返しだよっ」
……
…………
………………
午後6時20分――、
どうやら本物の天使っぽいキズナと俺は学校を出て、駅前近くにある公園のベンチに座った。
カップルが集まると有名な公園だ。
「お前が天使だっていうのはわかった。確かに他の人には見えていなかったようだし、その背中の翼と頭のリングもそれっぽい。俺の頭が固かったことは認めよう」
「お、やっと認めてくれた。先輩から聞いていたけど、自分のターゲットに存在をきちんと認識させるのってこんなに大変なんだね」
「そりゃあほとんどの人はリアルに生きているからな。ファンタジーな存在が突然現れて、漫画やラノベみたいに存在を主張したところで、そいつの脳を普通疑う。黄色い救急車の手配を始める」
「そんなリアルに生きている太陽は、何で存在を認識した今でもこっちを見ないのかな? もしや……ボクに惚れちゃった?」
「どんな考え方をしたらそんな結論に至れるのか俺には全く理解できんが、それは違うと言っておこうか」
「じゃあ何でこっちを見ないのさ?」
「他の人には見えてないんだろ? それなのにそっちをガン見して話してたら、俺がアブナイ人に見られちゃうじゃねえか」
そう、俺は横のキズナを見ておらず、自分のスマホを耳に当て、誰かと話しているフリをしている。
こうすれば自然と風景に溶け込めるからだ。
「話しているのに無視されているみたいで感じ悪いなあ。なんなら翼とリングしまってステルス解除してあげようか?」
「止めてくれ。こんな学校の近くで女の子と二人っきりとか、誰かの目に絶対留まる」
高校生なんて身近な人物の恋愛系ゴシップが大好きだからな。
たとえ俺の顔がわからない奴が目撃しても、目撃証言を元に俺と同じような非リア充が自主的に捜査を始め、犯人を見つけ出す。
そうなれば終わりだ。
近い将来勇気がチャージされて八舞さんに告白できたとしても、それを理由に100パー『ごめんなさい』される。
現代を生きる高校生の生態をキズナに説明すると、キズナはどこからともなくタブレット(っぽいもの)を取り出して何かを調べ始めた。
「うーん、データを参照させてもらったけど、もしそうなってもそれを理由に『ごめんなさい』にはならないみたいだよ? 『茂手くんっていい人なんだけど……友達以上には思えないの』だってさ」
「何でそんなことが言い切れるの!? っていうかお前そのタブレットみたいなの今どこから出した?」
「ここからだけど?」
キズナは頭に浮かべているリングを手に取ると、その中に腕を突っ込んだ。
おかしい。リングには穴が開いているはずなのに突っ込んだ手が見えない。
そのままキズナはシュッシュと、リングの穴に自分の手を出したり入れたりを繰り返し、「ここから取り出したんだよ」ということを俺にアピールする。
「天使のリングの穴って、四次元空間への入り口なんだ。しかもこのリングって伸縮自在だからどんなに大きなものでも中に入れられるんだよ。すっごい便利でしょ」
確かに便利だ。
どことなく国民的人気アニメの青い猫型ロボットを彷彿とさせる。
「どこから取り出したのかはわかった。だからもういい。それよりさっきのお前のセリフ! 俺が八舞さんに告ったら『友達以上には思えない』って断られるなんて、どうしてわかるんだよ!?」
「わかるんだよなあ、これがあるから」
そう言ってキズナは、タブレットの画面を俺に見せる。
「何だよこれ? 片方が俺の名前で、もう片方が……八舞さんの名前が出ているけど」
「えっとね、ボクが持っているこれは《Little Oath Viewer typeE》、通称《LOVE》っていう、人界で言うタブレットみたいなモンなんだけど。この中に入っているアプリケーションソフトに《ザ・ネクサス》っていうのがあるのね。あ、《ネクサス》って意味は……」
「《絆》、だろ?」
「うん、そう。ボクの名前と同じ」
説明する手間が省けたのが嬉しいのか、キズナは俺に向かって微笑むとLOVEを操作し、
今言ったネクサスというアプリケーションを起動してみせる。
「このネクサスは世界中の人類のアカシックレコード――運命を閲覧できるアプリケーションなんだ。使い方は至ってシンプル、検索画面で運命を調べたい相手の名前を入力してパネルを押すだけ」
そう言いながら、淡々と俺の名前を打ち込んでいくキズナ。
「さっきボクはこれできみの運命を見たから、あのセリフでフられるって断言できたんだよ」
--------------------------------------------------------------------------------
《あとがき》
運命がわかるって残酷ですよね。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる