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かっこ悪くない?

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 お姫さんの説明では、只今地面にめり込んでる不審人物は、帝国とやらのいい所のお坊ちゃまで、好奇心で魔法を極め、どこぞの賢者をボコって隠居に追い込み、それに飽き足らず次は剣術にも手を出し、これまたどこぞの剣聖を再起不能になるまでボコボコにボコって、これまた消息不明にまで追い込んだ。
 次に挑戦する相手を探した先は教会。何をとち狂ったのか奴は『神』に挑戦しようと教会へ乗り込んだらしい。

「姫さん‥‥‥‥。『神』様は教会で実体化して待機してるの?」

「‥‥‥‥そんなわけ無いですよ。『元の世界と同じと考えていいですよ』─────ただ、儀式の際に顕現したりはしますが‥‥‥‥めったにないです」

「うわぁ、リアル『神』様に道場破りってか。ん?まさかコイツ『神』様ボコったりは‥‥‥‥」

「したんです。その時は小さい教団の『神』だったらしいですけど」

─────うわぁ。

「‥‥‥‥どこかの宇宙人かな‥‥‥‥」

 自分の頭の中には、某アニメの登場人物が浮かんでしまった。  

 どうやらこの世界の神様は複数おり、大なり小なり教団が存在するらしい。
 だから一柱くらい消えても、大した問題とはならないし、他の教団からはあぶれた信者を取り込むチャンスと歓迎される。
 そうなると今度は、件の人物を自分の教団に口で言いくるめて取り込み、上手く使おうという輩が現れた。 なにせ本人の見た目が良いから、聖騎士の恰好をさせて表に立たせれば、女性入信者がウハウハ寄ってくるし、坊ちゃまの実家からは「あ~そこ行きましたか、面倒かけてすいません」とばかりに寄付金がたんまり入ってくる。本人さえ大人しくさせておけば、教団としてはウハウハなのだ。

 とはいえ本人はずっとその教団にいる事はなく「やっぱちょっと違った」とばかり次の日にはふらっと違う『神』に会いに国まで出でいく始末。─────ついた渾名が『流れの聖騎士』
 
「平常時はちゃんとしてるし、能力的に問題も無い人ですから、逆に始末が悪いです‥‥‥‥」

「姫さんの所にも来たの?」

「うちの国には二年位前にいました‥‥‥‥。仕事はちゃんとできるんですが、『神』にはいつ会えるのかって無言の圧が凄くって‥‥‥‥うちの司祭様が見かねて滾々と説教をしてたら、いつの間にかいなくなってました」

─────うちとしては逆にホッとしたぐらいです。本人は一人で行動してるつもりですけど、もれなく帝国のお偉いさんが付いてくるんです。面倒なんです。

 その時の事を思い出したのか、お姫様からは「はあぁぁ」と疲れたため息が漏れた。

「それにしても、そんな簡単に宗旨替えしてもいいの?」

「宗教に国境はないというのが建前ですが、『前の世界と同じ』と思ってもらっていいです。‥‥‥‥ただ、誰も彼が勝手に行動する事を止められないんですよね‥‥‥‥」

─────うん。解ってきたぞっ!

「─────わかったっ!コイツは『はた迷惑な脳筋』って事だなっ!─────よしっやっぱ埋めようっ!」

『否定しませんけど─────っ!?有名人って言ったよね─────!『一般人』がやりましたっ言ったらそいつは何者だっていう事だってなりますよ─────っ!』

「─────むっそれは面倒だな。じゃあどうしよう、森にでも捨ててこようか?」

 片手で胸倉を掴み、持ち上げるとボコっと音がして、白目を向いた『はた迷惑な脳筋』が掘り出される。
  ─────むっ背が高いなコイツ、全体が持ちあがらん。

「いえいえ、自信の足で出て行ってくれればいいんですよ。穏便に」

「それでいいの~?じゃあ腕二本くらい折っておくか、風呂壊した分もあるし」

『‥‥‥‥え、まだ折るの?さっきあばら骨逝ってる音がしたんだけど‥‥‥‥』 

「それはそれ。─────あれ、何これ?何で杖と剣持ってんの?コイツ」

「それが『流れの聖騎士』の特徴でな。面倒くさい事に両方使うんだ」
 
  私が『脳筋』を持ち上げるタイミングで、隊長達が集まってきた。

「え、なにそれ。言っちゃなんだけど、かっこ悪くない?」

 それともこれが『標準』?誰もそこに突っこまないの?私がそう言うと、皆スッと視線を避けた。‥‥‥‥思ってたんだ。

「ま、まあ『脳筋』スタイルはどうでもいいけど、‥‥‥‥これはいただけないねぇ」

 ─────ぺっと掴んでいた『脳筋』を放り出し、手に残ったのは、ピンク色が施してある『杖』。 

「これはダメだねぇ~」

 ─────ベキン!

 両手と片足を使って、金属製と思われる『杖』は真っ二つになった。

『─────はあぁぁぁ!?ちょとアンタ!何してくれるのよ!』

 突然割り込んできたキンキン声に振り返ると、地面に落ちた丸石から煙の様な粒子が立ち上り『ピンク髪』の女が形成された。

─────ほおぉぉぉぉん。‥‥‥‥誰?アンタ‥‥‥‥。
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