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今時の若いモン
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「隊長~そろそろ戻らないと、陽が暮れますよ~」
雑用係の少年の声で、空を見上げれば、山に陽がかかりそうな時間であった。
帰りの時間を考えれば、今日はこれ以上森へ分け入るのは、ためらわれた。
「お前、随分集めたな」
雑用係の少年の背中には、体に似合わない程、大きな籠が背負われていた。
中には薬草やら、キノコが一杯つめられていた。
「『深淵の森』で隊長たちの護衛付きですよっ!こんな機会ないですよっ」
「いや、お前の護衛じゃないんだが‥‥‥‥」
─────僕、はりきっちゃいましたっ!満面の笑顔で成果を見せてくる少年に、ラングはそれ以上何も言えなかった。この場にフリートがいれば、少年は確実に説教コースだが、残念ながら奴は森の外で、野営荷物と共に待機組だ。
「あと、走るキノコがいるらしいと聞いたんで、欲しかったんですけど‥‥‥‥」
「「─────あれはやめてくれっ!」」
ラングと思わずハモッてしまった。
「アイツはやめろ。この森でアレを追いかけるなんて、悪夢でしかない」
「若い奴は挑戦したがるからな~。やるなら他の森でやるんだな」
うんうん頷くラングに、少年は「挑戦した事あるんですか?」と質問をしてみた。
「ある」と答えた二人に、「どうでした!?」キラキラした眼差しで期待しているらしいが。
「「─────遭難した」」
「‥‥‥‥そうですか」
なんか思ってたのと違った‥‥‥‥。みたいな顔をされても困る。
「挑戦するとかじゃなくて、こう確実に手に入ったりしませんかねぇ。僕はあんまり、走りたくないですから‥‥‥‥」
─────コイツ。さらっと俺等の事ディスってないか!?これが今時の若い奴って事か?
「でも、隊長。例の人物探して、どうするんですか?」
「あの女の子、見たろ?」
「お兄ちゃんがギャン泣きしてた、妹ちゃんですよね?」
「あの子の目は、生まれつきのものだったらしい。それを一瞬で正常にしたんだ。かなりの能力者と見た。例の物がみつからない以上、打てる手はうちたい」
雑用係の少年は、ん~と顎に指を当てて、首をかしげる。
「‥‥‥‥協力してくれますかねぇ。冒険者のお姉さん達、かなり怖がってましたよ」
「あの女の子は、怖がってなかったろ?そこに賭け─────っ!」
─────ぞわっと背筋に冷たいものが走った。
ラング達も解ったらしく、周囲を見渡す。
ドンッ!ドッ!ドッ!ドンッ!ドンッ!
遠目の山に、火柱がいくつも上がり、同時に爆発音が響く。
ラングと目を合わせ、「あっちだ」と同時に走り出す。
視界が開けたそこには、川があり行く手を阻まれた。
「おい、こっちに浅瀬があるぞ」
ラングがそう言った瞬間、聞こえてきた。
『─────てめえれぁぁぁああ ガンクビ揃えて出てこいやぁぁぁぁ─────ごるァァァァァ』
『─────かかってこんかい われぇぇぇえ─────全員ぶちのめしたるぅぅぅぅぅ』
─────響き渡る怒声に、全員固まった。
「‥‥‥‥隊長。この川渡りますか?」
‥‥‥‥コノ川、ワタリマスカ? 川の向うに師匠がいた。記憶に新しいラングの話がよみがえる。 いやいや待て待て。この川はアノ川ではない。
「─────よ、よしっ行くぞっ!」
内心の動揺を悟られないよう、川を渡りだした。
ド─────ン
一段近いところで爆発音がすると、何かがこちらに飛ばされてきた。
それは────ぼとっと近くに落ちる。
「‥‥‥‥これは、グレィモンキー‥‥‥‥か?」
落ちてきたソレは、辛うじて判別できるぐらい焼け焦げていた。
『─────逃げても ムダムダムダァァァァ─────アハハハハハ─────』
─────響く高笑いに、全員背筋が寒くなった。
雑用係の少年の声で、空を見上げれば、山に陽がかかりそうな時間であった。
帰りの時間を考えれば、今日はこれ以上森へ分け入るのは、ためらわれた。
「お前、随分集めたな」
雑用係の少年の背中には、体に似合わない程、大きな籠が背負われていた。
中には薬草やら、キノコが一杯つめられていた。
「『深淵の森』で隊長たちの護衛付きですよっ!こんな機会ないですよっ」
「いや、お前の護衛じゃないんだが‥‥‥‥」
─────僕、はりきっちゃいましたっ!満面の笑顔で成果を見せてくる少年に、ラングはそれ以上何も言えなかった。この場にフリートがいれば、少年は確実に説教コースだが、残念ながら奴は森の外で、野営荷物と共に待機組だ。
「あと、走るキノコがいるらしいと聞いたんで、欲しかったんですけど‥‥‥‥」
「「─────あれはやめてくれっ!」」
ラングと思わずハモッてしまった。
「アイツはやめろ。この森でアレを追いかけるなんて、悪夢でしかない」
「若い奴は挑戦したがるからな~。やるなら他の森でやるんだな」
うんうん頷くラングに、少年は「挑戦した事あるんですか?」と質問をしてみた。
「ある」と答えた二人に、「どうでした!?」キラキラした眼差しで期待しているらしいが。
「「─────遭難した」」
「‥‥‥‥そうですか」
なんか思ってたのと違った‥‥‥‥。みたいな顔をされても困る。
「挑戦するとかじゃなくて、こう確実に手に入ったりしませんかねぇ。僕はあんまり、走りたくないですから‥‥‥‥」
─────コイツ。さらっと俺等の事ディスってないか!?これが今時の若い奴って事か?
「でも、隊長。例の人物探して、どうするんですか?」
「あの女の子、見たろ?」
「お兄ちゃんがギャン泣きしてた、妹ちゃんですよね?」
「あの子の目は、生まれつきのものだったらしい。それを一瞬で正常にしたんだ。かなりの能力者と見た。例の物がみつからない以上、打てる手はうちたい」
雑用係の少年は、ん~と顎に指を当てて、首をかしげる。
「‥‥‥‥協力してくれますかねぇ。冒険者のお姉さん達、かなり怖がってましたよ」
「あの女の子は、怖がってなかったろ?そこに賭け─────っ!」
─────ぞわっと背筋に冷たいものが走った。
ラング達も解ったらしく、周囲を見渡す。
ドンッ!ドッ!ドッ!ドンッ!ドンッ!
遠目の山に、火柱がいくつも上がり、同時に爆発音が響く。
ラングと目を合わせ、「あっちだ」と同時に走り出す。
視界が開けたそこには、川があり行く手を阻まれた。
「おい、こっちに浅瀬があるぞ」
ラングがそう言った瞬間、聞こえてきた。
『─────てめえれぁぁぁああ ガンクビ揃えて出てこいやぁぁぁぁ─────ごるァァァァァ』
『─────かかってこんかい われぇぇぇえ─────全員ぶちのめしたるぅぅぅぅぅ』
─────響き渡る怒声に、全員固まった。
「‥‥‥‥隊長。この川渡りますか?」
‥‥‥‥コノ川、ワタリマスカ? 川の向うに師匠がいた。記憶に新しいラングの話がよみがえる。 いやいや待て待て。この川はアノ川ではない。
「─────よ、よしっ行くぞっ!」
内心の動揺を悟られないよう、川を渡りだした。
ド─────ン
一段近いところで爆発音がすると、何かがこちらに飛ばされてきた。
それは────ぼとっと近くに落ちる。
「‥‥‥‥これは、グレィモンキー‥‥‥‥か?」
落ちてきたソレは、辛うじて判別できるぐらい焼け焦げていた。
『─────逃げても ムダムダムダァァァァ─────アハハハハハ─────』
─────響く高笑いに、全員背筋が寒くなった。
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