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第67話
しおりを挟む俺は面倒くさそうに答えると、ガラス製のグラスに注がれたワインをあおる。
度数が高い訳ではないのに喉を焼くような熱さを錯覚した。
「評価してもらおうと思っていないって! 私を馬鹿にしてるの?」
ミーネルは怒気を孕んだような低い声音で俺に当たる。
酒に酔っているのか? ストレスを溜めこんでるのか? 正直に言ってどちらでもいいのだが、ヒステリーを起こされても困る。
だから事実を淡々と話す事にした。
「確かに剣術、魔術、鍛冶技術そのどれもこの場に居る誰にも勝っている部分はないだろう……」
「……」
俺の言葉にミーネルは言い返すだけの根拠を持っていないか、下唇をグッと噛み締めて堪えている。
俺の言葉を聞いて、上の兄三人は「言い過ぎだ」「事実を伝えるにしてももっとこうやり方が……」「並み以上の才能はあるんだけどね……」と三者三葉の言いたい事が目からありありと伝わって来る。
いつもは大体味方してくれる。妹のアトナでさえ、
「言い過ぎですよ。お兄様、ミーネルの価値観での正論にイラっとして言い返した事には、理解を示しますが流石に言い過ぎです。私はフォローしませんので、分のやった事の後始末は自分でつけてください」
――――と言うような視線とジェスチャーを交えてくる。
ミーネルにバレないように小さく溜息をつくと、わざとらしく咳ばらいをして注目を集める。
「だがお前には、余人には無い類まれな付与の才能がある。
子供の頃から俺のワガママに付き合って魔術を付与してきたお陰で、何千、何万と言う付与魔術を掛け術式を考えて来た実績がある。その過程で得た経験と天より与えられた才能は、クローリー一族の中でも一際光るモノがあると俺は思っている」
ヤバい。考えながらセリフを喋るのに慣れていると思ったけど、これより先の言葉考えてなかったんだけど……
「相手の剣筋から『未来を予知』するかのような超絶技巧に優れた鍛冶技術で敵を圧倒する長男リチャード。
圧倒的な『魔力量』と『精密な魔力操作を元にした付与魔術』で敵を寄せ付けない次兄ニール。
絶対的な『剣技』と『魔力を用いた身体能力』で敵を捻じ伏せる三男コネリー
優れた『鍛冶・付与』技術を元にした技巧派な戦い方を得意とする長女アトナ……
自分の上位互換のような兄妹に囲まれて、全ての能力が下位互換・劣化コピーでしかない。俺はだったら得意な奴同士の得意を組み合わせれば、宝物庫に死蔵されている宝剣や魔剣に届く……あるいは超えるような剣が出来ると信じているから、分業した方が良いって言っているだけだ」
俺はコップに入った水を飲み干すとこう言った。
「俺は自分の作りたいものだけを作りたいんだ。そのために使い手の少ない刀を打っている。だけどよそんな俺にも夢があんだ最高の刀を作るそのためには一族の力が必要だって考えてる。だから、ミーネルの言う事も正しいと思う。今年初めってあった数日前、お前が悩んでいるかもしれないって気が付いていたのに何も言えなかった何もしてやれなかった。本当にゴメン」
俺は謝罪の言葉を口にした。
「私も言い過ぎた。ゴメン……私の事を認めてくれたのは素直に嬉しいわ」
こうして俺達は酒の席での事として仲直りの握手を交わした。
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