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第50EXハンバーグを作ろう上

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 あれはアルタに装飾の依頼をしている間の事だった。

「そう言えば肉の端材はざいはどうしているんだ?」

 幸い俺は金に困ってはいない。冒険で得た金を全て遊興費に費やしたとしても全く問題はないので、俺は遠慮なく食べ歩きに使っている。
 オマケに太り辛いので、定期的にこの焼き肉屋店には通っているのだ。
 俺の前には、店主が付いている。
 他の客がいるには居るのだが……皆そこまで資金に余力が無いのか、自分で焼く焼肉スタイルが多い。必然一人客の俺はカウンターで仁王立ちしている店主を独り占めするカタチになるのだ。

「基本的には、端材はざいが出ない様に切っています。それでも多少は出てしまうので……そう言ったのはスジ肉と一緒にスープで煮て提供するか、自分達で食べます」

「なるほど……」

スープって便利だな……煮れば大体柔らかくなるし、硬くなっても出汁ブイオンは取れる。ごった煮や雑煮も同じような考えだし、戦後の闇市で大人気の米軍の生ごみを使った残飯シチューも有名だ。

「それで、端材はざいがどうかしたんですか?」

 店長は他に活用法があると思ったらしく。質問してきた。

端材はざいやスジ肉を柔らかく食べる方法がある……と言ったらどうする?」

 これは使える! と思った俺は、少し交渉してみようと思った。

「肉屋としては困りますが……料理人としては気になります。私のモットーは『安く美味しいお肉を食べてもらう事です』。方法があると分かっているんだ。知りたいと思うのは当然でしょう」

 確かにその通りかもしれだ。

「店長。俺が調理するから調理場に入れてくれないか?」

「構いませんが……外套がいとうを 脱いでもらう事と、このエプロンを使ってください」

 衛生面がガバガバなこの世界でも、料理人は経験則で不潔はダメだと知っているらしい。

「もちろんだ」

 俺はエプロンを付けて、洗い場で石鹸を付けて手を洗い。清潔なハンカチで手を拭い。調理をする。

食糧庫パントリーを見ても?」

「構いませんよ」

 許可をもらいガサガサと食糧庫パントリーを漁る。

「この料理は、作り方が複数あるので俺が説明するのはその一例だと考えてくれ」

「わかりました」

「まず今回作るのは、肉を捏ねて作った物でハンバーグと言う。肉団子ミートボールの亜種だと考えてくれ」

「なるほど、それなら無駄は減らせそうですが……肉を食べているような食感は無くなってしまいますね」

「ハンバーグは大きく分けて、牛肉100%と牛・豚の肉を混ぜた合い挽き、そして玉葱やパン粉、卵などを入れ、フワフワとした食感にしたもの三種類がある。
 当然だが肉々しいのは、牛肉100%のハンバーグだがそれでは、コストは下げ辛いだろう……そこで提案したいのが内臓を細かくし混ぜる事だ。こうすればコストを下げつつ、肉のような食感を担保する事が出来る。
 さらに豚肉を混ぜれば、コストをさらに下げる事が出来る。オススメは横隔膜ハラミだな」

「なるほど……確かに内臓を入れるのは盲点でしたですが臭みはどうやって処理しますか?」

香草ハーブ葡萄酒ワイン、ソースを使えばある程度は消せるだろうな……まぁ本気で臭みを消したいなら、玉葱を牛乳で煮る。こうすれば匂いは少なくなる……そうすると肉感は少なくなるから、肉感にこだわるなら妥協点だと思う。
 あとは、ディナーセットなどにして酒で五感を鈍くしてから……と言うのもオススメだな」

 そんな事を喋っている間に、牛と豚のスジ肉と内臓入りの肉種の混ぜる作業が終わる。

「見て貰うと分かるが肉の脂が解け、ねっとりと粘り気が出ているのが分かると思う。牛100%だとこうなりずらいので混ぜる時間は長くなる。女給にでもやらせればいいだろう……
 このままだと牛の味が薄い可能性があるので、少量の牛脂を俵型に成型していくハンバーグの中心に仕込み。軽くパンパンと近い距離で投げて空気を抜く。この時手に肉が付きにくくするために綺麗な油……食油を塗る。手の温度が高いと脂が解けるので、混ぜる時も整形する時も出来るだけ冷やせ」

 説明をしながらハンバーグに牛脂を仕込み成形する。

「なるほど、それで冷水で手を冷やしてるんですか……」

「整形したものは冷暗所で置いてく事で多少は持つが……冬場この時期なら室内よりは室外の方が良いかもな……」

 焼肉等を焼く網の上にハンバーグを乗せ焼き始める。

「たしかにそうかもしれませんな……」

「整形した肉は鉄板やフライパン、または網の上で焼くといいだろう。中心部に火が入っているかどうかは串を使うと言い。肉汁が濁って居れば『生』。逆に透き通った色なら『火が入っている』証だ。
不安なら鉄板かフライパンで焼き途中で、少量の水を入れ蓋をして蒸し焼きにすると失敗が少ない」

 表面がカリっとするまで焼き上げる。目指すは、元喫茶店のハンバーグ屋の炭火焼きハンバーグだ。
 串を刺し火の通り具合を確認すると……透き通った色の肉汁が溢れてくる。
 トングでそれを摘まみ皿に乗せる。ソースを作るのは難しいので今日はハンバーグだけだ。
 
「先ずは塩と胡椒だけで食べよう」

 俺はそう言ってハンバーグを一皿。店長に手渡した。


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