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第EX5ライブ1
しおりを挟む大手事務所への移籍が決定し、晴れてメジャーレーベルの仲間入りが決定したのだが、いつもお世話になっていた箱……ライブハウスとファンに向けた感謝と称して、ライブを行う事になっていた。
いつものライブハウスは箱としての面積は小さく。MAX50人と言う規模であり、お世辞にも大きいとは言えない。
「ついにお前らも大手レコード会社と契約かぁ……時代の流れを感じるよ……」
そう言って鼻声になったのは、このライブハウスのオーナーで同じくバンドマンの谷垣《タニガキ》さん。
俺達が高校時代から面倒を見てくれているお兄さんだった。昔はイケメンだったがもうアラフォーという事もあり、昔の面影を感じる程度であり、時間の流れの残酷さを痛感させられる。
「坂本ぉ~~お前失礼な事考えただろう?」
ビールによって出っ張ってきた腹を弾ませ、谷垣さんが詰め寄って来る。
「んな事ないっすよ。谷垣さん……谷垣さんのお陰で俺達【 showdown・concert】はインディーズに所属出来てそのお陰で、メジャーレーベルに移籍出来たんですから……」
インディーズとは、日本で言えばレコード協会に入っていないレコード会社の事で、メジャーレーベルほどの手厚いサポートが受けられない弱小事務所とか、社会人スポーツとか、地下アイドルと考えて貰えばイメージしやすいだろうか?
「【ショタコン】は元々いいメンバーがそろってるんだ。全てはきっかけだけだよ。それにしてもドラムのあの子……良い子だったんだけどなぁ追い出したんだって?」
【ショタコン】とは【 showdown・concert】と仲の良いバンドが冗談で付けた略称・愛称だ。
「えぇ……まぁ……」
「あの子はドラマーとしてはお世辞にも巧いとは言えなかったが、オーラって言うか雰囲気だけは抜群だった。誰とでも話に行くし挨拶もシッカリしている。人格破綻者のクズが多い音楽業界では珍しいタイプの子だった。今からでも真っ当な仕事に就いた方が彼の為にもなるだろう……」
谷垣さんはそう言うと事務所に戻っていた。
「はぁ……」
俺は短くしかし、大きなため息を付いた。
確かに俺達はメジャーレーベルからデビューが決まっている。今勢いのあるバンドだ。実際問題100人規模の箱を自分達だけのファンで埋める事が出来るくらいにはファンもいる。
バンドメンバー全員が能力を持っていると自負している。だが、だれもアイツのような言葉に出来ない。場の空気を盛り上げる能力は持っていないのだ。
昔お世話になった先輩が言っていた。
「音楽ってのは嘘なんだ。最近は何を聴いても耳が不快で、心に来ない。
雑に言えば凄い音楽なんてないと思うんだよ。
ある時昔好きだったバンドのライブに行ったんだ。メンバーはほぼ当時のままで嬉しいよりも、凄いって思ってしまったんだ。自分も同じ業界に身を置いていると純粋に愉しめないんだ。
昔よりも技術も上がっていて、ホントに悪い所なんて思い浮かばなかった。でも昔見たいな感動は無かったんだ。極論、音楽だの芸術だのってのは、有名なアーティストの作品だとか、評判が良いとか、何かで流行っているとか、そう言う複合的な情報のせいで、何となくいい曲の様な気がして、皆誉めそやしているだけなんだよ。
じゃなきゃメディアミックスだの、翻訳だの吹き替えだの混ぜ物はしないハズだ。俺は音楽を嫌いになりたくないからやめるよ、お前は夢から覚めるなよ? まぁアイツがいれば大丈夫か……」
そう言っていた事をふと思い出した。
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