上 下
12 / 16

第12話

しおりを挟む
「弁当を買って来て貰ったんだけど……アレルギーとか好き嫌いとか大丈夫?」

「特にはないです」

「良かった。他はやれ、コーヒーがいいとか、紅茶がいいとか、コーラしか勝たんとか好き放題言って自販機に向かったよ」

「はぁ……そうですか」

それを私に訊かせてどうなるというのだろう?

「二人には悪いけど先に頂こうか」

 少年はそう言うと割り箸を口に加え箸を割る。

 するとドアがガラガラと音を立てて開き、綺麗な女性が二人部屋に入ってくる。
 前髪ぱっつんの黒髪の女性の手にはコーラが握られている。
 その後ろから部屋に入った。亜麻色髪の少女の手には無糖と書かれた紅茶が握られている。

「ユースケ。先に食べようとしてるんじゃないわよ!」

 気の強そうな女性が叱り付ける。

「すまん。すまん。お腹ぺこぺこで……」

 一応。謝罪の言葉を述べてはいるものの悪びれた様子は一切ない。

「言い訳はいいわ、それでこの子が……鬼神の巫女ね!」

 何というか。口調の雰囲気は往年の強気なキャラクターのようだ。

「三条さん。取り合えず朝食にしましょう腹が減っては何とやらです!」

 三条と呼ばれた女性よりも一回り以上年下と思われる。
 可愛い系の女の子は、己の空腹を強く主張する。
 よほどお腹がすいているようだ。

「それもそうね……私はコイツの幼馴染で陰陽師の三条祢々よ。で、こっちが幼馴染の仁科祐介にしなゆうすけ

「どうも」

 彼は弁当に箸を付けており、自分で自己紹介をするつもりは一切ないようだ。

「同じく陰陽師の星川いろはです」

「ご丁寧に、坂上鈴鹿です」

「じゃ朝ごはんにしましょうか?」

 そういうと弁当の蓋を開ける。
 私達三人は焼き鮭をベースにした海苔弁当だ。

「あ、先輩。運転の人はご飯いいんですか?」

「あの人も誘ったけど一人で静かに食べたいって、弁当買って来て貰ったお礼後で言わないと……」

「だったら洋服を手配した私にも一言欲しい所ね」

「う、それはそうだね。ありがとう」

 私を置き去りにしてわいきゃい騒ぎながら朝食をつついている。
 
あれ、なんかこのお弁当お肉も卵も全然ない……

 きんぴら、お浸し、胡麻和え、煮物、豆腐の煮びたしと肉っぽさがない・・・・・・・のだ。

卵ぐらいあってもいいのに……まぁ、朝だしいいか……

 私は朝食の内容を気に出来るだけ心に余裕が出来た事を喜びながら弁当を食べた。

………
……


「じゃぁ俺はお手洗いに行ってくるよ……」

 俺はそう言うと手荷物を持って席を立つ。

「いってらっしゃい」

――――と言いながら祢々ねねは手を振る。

 俺は特別病室から離れると、電話を掛ける。
 掛ける先は昨晩から運転手をしてくれている陰陽師の男性だ。
  
「すいません。特別呪術輸送車の手配はどうなっていますか?」

「日本に数台しかない車ですから手配が大変でしたよ。あと数分で到着するようなのでお待ち下さい」

「何から何までご迷惑をおかけしてすいません」

「元Sランク陰陽師とはいえ貴方は子供です。出来る事と出来ない事があります……大人とは何でも一人で出来るスーパーマンの事ではありません。自分の能力を理解して、人にモノを任せる事が出来る人間だと私は思っています」

「……」

「ま、しがない一般陰陽師なんで、嫌でも何でもこれぐらい働きますよ……」

「助かります」

「報告は、星川さんと仁科さんにお任せしてもいいですか?」

「ええ、それはもちろん。今日は牛丼でも食べて酒飲んで寝てください」

「今日は久しぶりに朝定食でも食べてビール飲んで寝ますよ……それじゃぁ、お疲れ様です」

 そう言うと相手が電話を切るのを待ってから、こちらも電話を切る。

「……まさか本当に要求が通るとは、流石鬼神を降ろしている巫女と言ったところか」

 俺は長時間座っていたことで、強張る体を解すために伸びをする。

「ん~~っ!」

 俺は病室に戻ると、特別呪術輸送車が到着するまで暇を潰すのであった。

 『PPPPPP』と俺のスマホが鳴る。

「失礼。あ、もしもし仁科祐介です」

『封印・結界班班長の氷見優子ひみゆうこと申します。特別呪術輸送車が到着致しましたのでご連絡させていただきました』

「これはこれは御叮嚀にどうも、護送者一名と、陰陽師二名そしてこの俺の輸送もお願いしたいのですが……」

『連絡は受けておりますので大丈夫です』

「ではお願いします。氷見班長―――」

 『ピッ』。スマホの画面を触り、通話を切る。

「――――と言う訳で、君を運ぶための特別呪術輸送車がたった今、到着した。荷物を纏めて出られえるようにしてくれ、それと呪符を数枚でいい。ポケットとか袖口に仕舞って置いてくれ」

「どうしてでしょうか?」

 星川いろはは、疑問の言葉を投げかける。
 協会に与する陰陽師にとっては、当然の疑問と言っていい。

「鬼神の神霊をその身に宿した。坂上鈴鹿さかがみすずかを危険視する一派がおり、その身を直接的に害する可能性がある可能性があるという事だ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素
ファンタジー
 アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。  これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。  そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。  のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。  第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。  第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。  第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。  第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。  1章20話(除く閑話)予定です。 ------------------------------------------------------------- 書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。 全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。 下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ
ファンタジー
 学校でのいじめを苦に自殺を図ろうとする高校生の立原正義。だが、偶然に助かり部屋の天井に異世界への扉が開いた。どうせ死んだ命だからと得体の知れない扉へ飛び込むと、そこは異世界で大魔導士が生前使っていた家だった。  大魔導士からの手紙を読むと勝手に継承魔法が発動し、多大な苦痛と引き換えに大魔導士の魔法、スキル、レベルを全て継承した。元の世界と異世界を自由に行き来できるようになり、大魔導士の力を継承した正義は異世界と日本をどちらもその圧倒的な力で無双する。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

騎士学院のイノベーション

黒蓮
ファンタジー
 この世界では、人間という種が生存できる範囲が極めて狭い。大陸の大部分を占めているのは、魔物蔓延る大森林だ。魔物は繁殖能力が非常に高く、獰猛で強大な力を有しており、魔物達にとってみれば人間など餌に過ぎない存在だ。 その為、遥か昔から人間は魔物と戦い続け、自らの生存域を死守することに尽力してきた。しかし、元々生物としての地力が違う魔物相手では、常に人間側は劣勢に甘んじていた。そうして長い年月の果て、魔物達の活動範囲は少しずつ人間の住む土地を侵食しており、人々の生活圏が脅かされていた。 しかし、この大陸には4つの天を突くほどの巨大な樹が点在しており、その大樹には不思議と魔物達は近寄ろうとしなかった。だからこそ魔物よりも弱者であるはずの人間が、長い年月生き残ってきたとも言える。そして人々は、その護りの加護をもたらす大樹の事を、崇拝の念を込めて『神樹《しんじゅ》』と呼んでいる。 これは神樹の麓にある4つの王国の内の一つ、ヴェストニア王国に存在する学院の物語である。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

秋津皇国興亡記

三笠 陣
ファンタジー
 東洋の端に浮かぶ島国「秋津皇国」。  戦国時代の末期から海洋進出を進めてきたこの国はその後の約二〇〇年間で、北は大陸の凍土から、南は泰平洋の島々を植民地とする広大な領土を持つに至っていた。  だが、国内では産業革命が進み近代化を成し遂げる一方、その支配体制は六大将家「六家」を中心とする諸侯が領国を支配する封建体制が敷かれ続けているという歪な形のままであった。  一方、国外では西洋列強による東洋進出が進み、皇国を取り巻く国際環境は徐々に緊張感を孕むものとなっていく。  六家の一つ、結城家の十七歳となる嫡男・景紀は、父である当主・景忠が病に倒れたため、国論が攘夷と経済振興に割れる中、結城家の政務全般を引き継ぐこととなった。  そして、彼に付き従うシキガミの少女・冬花と彼へと嫁いだ少女・宵姫。  やがて彼らは激動の時代へと呑み込まれていくこととなる。 ※表紙画像・キャラクターデザインはイラストレーターのSioN先生にお願いいたしました。 イラストの著作権はSioN先生に、独占的ライセンス権は筆者にありますので無断での転載・利用はご遠慮下さい。 (本作は、「小説家になろう」様にて連載中の作品を転載したものです。)

処理中です...