19 / 58
第十九話
しおりを挟む
「おつかれさま。成嶋さん」
「真堂くんもおつかれさま」
互いに言葉を交わすと成嶋さんの方へ近づいていく。
「よかった。今日はいつもの車両じゃなかったから時間が違うかと思ったよ……」
「別に私に気を使わなくてもいいのに……」
「今日は随分とお疲れみたいじゃない」
「よくお分かりのようで……」
「今日の説明会そんなに大変だったの?」
「まあ準備はそれなりに時間が掛かったけど、大きな声で威圧してくる先生がいて精神的に少し疲れたよ」
「それくらい判るわよ。後ろの席だし……それに真堂くんのことはよく見てるから……」
実際のところは、課題と資料作成オマケにご飯の支度と推しの少女葛城綾音を拾ったことが大きいのだが、それを痴漢被害にあったばかりの彼女に伝えるのは憚られた。
「問題児で悪うござんした」
「問題児とまでは言ってないけれど、自覚はあるのね……」
「まあな……」
高校で習ったことの多くは忘れてしまっている。
今でも鮮明に覚えているのは趣味の歴史系ぐらいだ。
「本当によく瑞宝学園の学校に受かったわね」
「本当にどうやって受かったんだろうな……」
原作でも成績があまり優秀でなかった。
真堂恭介本当にお前はどうやって入学したんだ?
「真堂くん……貴方ねぇ……」
「数英に関しては成嶋に世話になりっぱなしだもんな……俺」
「問題集のコピーあげたでしょ? ミスがなくなるまで繰り返しやるのよ?」
「ママか!」
「まあ現状は似たようなものかしらね。痴漢から守って貰った時以外真堂くん役に立っていないもの」
「ガーン!」
「ふふふふふ、冗談よ」
「でもたくさんの問題集をやるよりは一つの問題集を間違えなくなるまでやったほうが効率がいいのは事実だと思うわ」
「まあでも基礎さえ終わらせれば目標にしている大学の過去問解いた方が効率的な気がするけど……」
「おバカ! 基礎は裏切らないわ」
「成嶋って案外脳筋なんだな……」
「この体形を維持するには鍛える必要があるのよ」
「やはり脳筋だったか……」
「それに学歴は武器になるから」
「確かにそうかもな。成嶋さんの身体絞れてるから一定の説得力は感じるな……」
「人の身体みて説得力を感じるな! あとどこみてんのよ! 変態!」
「男は皆変態なのさ……でも保護者ポジションの成嶋さんならスルーしてくれると思ったに……」
「出来るかバカ!」
こうして互いに数駅分、口を利かなかったのだが……
「まだ一週間もたってないけどあれから何か進展はあったか?」
「ええ、今週の土日に弁護士さんの事務所に伺って依頼することにしたわ」
「一応、解決したみたいで良かったよ。男性恐怖症まで行かなくて本当によかった……」
「真堂くんには感謝してもしきれないわね」
「俺も成嶋さんには感謝してるんだ。お互い様だ」
「ふふふふ、私に気を遣わせないように変なこと言うのね」
「茶化している訳でも気遣っている訳でもない、本心だよ。
……悩んでいる時に君が現れた。まさにそれはお釈迦さまが垂らしてくれた蜘蛛の糸のようだった」
「あら、まるでミュージカルで告白される時みたいなクサい台詞ね……」
「ぐ……確かにクサい台詞だった。すまん」
「別にいいわよ。だから今日は気分がいいの折角だから学校につくまで私の話に付き合ってくれないからしら?」
「もちろん」
「あの時どうして助けてくれたの?」
「あそこで見捨てたら自分が……自分でなくなる気がしたから?」
「何それ中二病って奴?」
「当たらずとも遠からず?」
「あははははっ、何で疑問形なのよ」
「説明が難しいからかな。あの時成嶋さんを見捨てると変人程度の存在から、不良とか悪人に落ちるんじゃないかって思ったんだ」
「考え過ぎよ」
「……そうかもしれない、でもそうじゃないかもしれない。
あの時行動したから成嶋さんはこうして通学で来ているし、俺は道を外れず踏みとどまれたんじゃないかって思ってる」
「……」
「自分本位の自分のために君を助けた俺を軽蔑するかい?」
「はぁ……」
「するわけないでしょバーカ!」
「私だって痴漢とか犯罪に……助ける為でも関わりたくないんだもの真堂くんがそう思っていたって不思議じゃないわよ……でも少しだけがっかりしたわ」
「う゛っごめん」
「お母さんに相談するまで私にとって、あの時の真堂くんは王子さまだったわ。でもそれは弱っていた私の心の防衛機能だったみたいね……」
「え?」
「君のために……って少女漫画のイケメンみたいな恥ずかしい愛の言葉を優しく囁いてくれれば今頃真堂くんの彼女だったかもしれなかったわ」
「え? えええええ」
「残念だったわね真堂くん」
そう言った彼女の顔は夕焼けのせいか酷く赤かった。
「真堂くんもおつかれさま」
互いに言葉を交わすと成嶋さんの方へ近づいていく。
「よかった。今日はいつもの車両じゃなかったから時間が違うかと思ったよ……」
「別に私に気を使わなくてもいいのに……」
「今日は随分とお疲れみたいじゃない」
「よくお分かりのようで……」
「今日の説明会そんなに大変だったの?」
「まあ準備はそれなりに時間が掛かったけど、大きな声で威圧してくる先生がいて精神的に少し疲れたよ」
「それくらい判るわよ。後ろの席だし……それに真堂くんのことはよく見てるから……」
実際のところは、課題と資料作成オマケにご飯の支度と推しの少女葛城綾音を拾ったことが大きいのだが、それを痴漢被害にあったばかりの彼女に伝えるのは憚られた。
「問題児で悪うござんした」
「問題児とまでは言ってないけれど、自覚はあるのね……」
「まあな……」
高校で習ったことの多くは忘れてしまっている。
今でも鮮明に覚えているのは趣味の歴史系ぐらいだ。
「本当によく瑞宝学園の学校に受かったわね」
「本当にどうやって受かったんだろうな……」
原作でも成績があまり優秀でなかった。
真堂恭介本当にお前はどうやって入学したんだ?
「真堂くん……貴方ねぇ……」
「数英に関しては成嶋に世話になりっぱなしだもんな……俺」
「問題集のコピーあげたでしょ? ミスがなくなるまで繰り返しやるのよ?」
「ママか!」
「まあ現状は似たようなものかしらね。痴漢から守って貰った時以外真堂くん役に立っていないもの」
「ガーン!」
「ふふふふふ、冗談よ」
「でもたくさんの問題集をやるよりは一つの問題集を間違えなくなるまでやったほうが効率がいいのは事実だと思うわ」
「まあでも基礎さえ終わらせれば目標にしている大学の過去問解いた方が効率的な気がするけど……」
「おバカ! 基礎は裏切らないわ」
「成嶋って案外脳筋なんだな……」
「この体形を維持するには鍛える必要があるのよ」
「やはり脳筋だったか……」
「それに学歴は武器になるから」
「確かにそうかもな。成嶋さんの身体絞れてるから一定の説得力は感じるな……」
「人の身体みて説得力を感じるな! あとどこみてんのよ! 変態!」
「男は皆変態なのさ……でも保護者ポジションの成嶋さんならスルーしてくれると思ったに……」
「出来るかバカ!」
こうして互いに数駅分、口を利かなかったのだが……
「まだ一週間もたってないけどあれから何か進展はあったか?」
「ええ、今週の土日に弁護士さんの事務所に伺って依頼することにしたわ」
「一応、解決したみたいで良かったよ。男性恐怖症まで行かなくて本当によかった……」
「真堂くんには感謝してもしきれないわね」
「俺も成嶋さんには感謝してるんだ。お互い様だ」
「ふふふふ、私に気を遣わせないように変なこと言うのね」
「茶化している訳でも気遣っている訳でもない、本心だよ。
……悩んでいる時に君が現れた。まさにそれはお釈迦さまが垂らしてくれた蜘蛛の糸のようだった」
「あら、まるでミュージカルで告白される時みたいなクサい台詞ね……」
「ぐ……確かにクサい台詞だった。すまん」
「別にいいわよ。だから今日は気分がいいの折角だから学校につくまで私の話に付き合ってくれないからしら?」
「もちろん」
「あの時どうして助けてくれたの?」
「あそこで見捨てたら自分が……自分でなくなる気がしたから?」
「何それ中二病って奴?」
「当たらずとも遠からず?」
「あははははっ、何で疑問形なのよ」
「説明が難しいからかな。あの時成嶋さんを見捨てると変人程度の存在から、不良とか悪人に落ちるんじゃないかって思ったんだ」
「考え過ぎよ」
「……そうかもしれない、でもそうじゃないかもしれない。
あの時行動したから成嶋さんはこうして通学で来ているし、俺は道を外れず踏みとどまれたんじゃないかって思ってる」
「……」
「自分本位の自分のために君を助けた俺を軽蔑するかい?」
「はぁ……」
「するわけないでしょバーカ!」
「私だって痴漢とか犯罪に……助ける為でも関わりたくないんだもの真堂くんがそう思っていたって不思議じゃないわよ……でも少しだけがっかりしたわ」
「う゛っごめん」
「お母さんに相談するまで私にとって、あの時の真堂くんは王子さまだったわ。でもそれは弱っていた私の心の防衛機能だったみたいね……」
「え?」
「君のために……って少女漫画のイケメンみたいな恥ずかしい愛の言葉を優しく囁いてくれれば今頃真堂くんの彼女だったかもしれなかったわ」
「え? えええええ」
「残念だったわね真堂くん」
そう言った彼女の顔は夕焼けのせいか酷く赤かった。
11
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる