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第三章

魔王の器

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『彼は封印されています。とある森の奥深くです。かつて、親友を無くした王子が建てた墓……』
「魔王の気配を強く感じるってことは、その封印が弱くなってるってことかな?」
『その通りです。しかし、それだけでも無いでしょう』

 敬語すら使わないエラルドにも普通に対応してくれている。全然畏まらなくて良さそうだ。
 ところでこんな時にも関わらず、魔王がどうたらという話を真剣に聞いてる状況が少し面白くなってきてしまったどうしよう。

『本来、魔王は彼を受け入れられる器がある人間がいないと活動が出来ません。かの王子の親友の魔術師のように』
 
 意外と不便だな魔王。そんでやっぱり男なんだな魔王。
 先ほどから出てきている王子とその親友っていうのは、物語に出てくるルース王子と魔術師なんだろう。
 と、いうことは。

 魔術師は元々人間で、途中から魔王に体を乗っ取られたことになる。
 何それ辛い。
 ルース王子の冒険譚は魔王との戦いだけではない。
 お姫様との恋の話や、それこそドラゴンとの話もある。そのどの話にも魔術師は親友として登場するのだ。
 いったい、どの辺りから魔王になってしまっているんだろう。
 微妙にズレた方向に思考を飛ばしている間も、ドラゴンの魔王解説は続く。
 
『気配を強く感じるということは、その器になり得る人間がこの世に誕生しているということ』

 私か。

「器になる人間、とは具体的にはどのような条件だ」

 前のめりにアレハンドロが切り込んでいく。
 出来ればそれは聞いてほしくなかったが、気になるに決まっている。
 万が一にも魔王が器を手に入れて復活したら、国の存亡に関わるかもしれないのだから。
 
『底知れぬ魔力を持ち、魔族的な美しい容姿を持つ男性が多いです』
 
 私か。
 
 これもう、そこにいるお前だって言われたも同然だ。
 
 美形が多いのは乙女ゲームの事情かな。
 それとも魔王の好みかな。イケメン好きだとしたら親近感湧いちゃう。

「底知れぬ魔力と……」
「美しい容姿……」
「の、男……」

 信じたくない、というような、明言していいのか分からない、というような。何とも言えない表情で皆が私を見ている。
 
 そりゃそうだよね。

「シンしかいないな」

 うん。
 バレットならはっきり言うと思ってたよ。
 
 相変わらずやたらと大きい波の音の中で、その場の空気がズシンと重くなった。
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