上 下
11 / 35

なんか弱点ないのか

しおりを挟む
 空になった色とりどりの酒瓶がテーブルに並び、つまみの皿は空になっている。
 心臓の音が早く、体が熱い。

 アルコールが完全に回っているディランは、真っ赤な頬に潤んだ瞳で影千代を睨み上げる。

「酒もつええのかよ! なんか弱点ねぇのかお前ぇ……」

 本音がダダ漏れになっているディランを見て、影千代はグラスを傾けて目を細めた。

 皮肉を交えながらも和やかに会話を交わし、互いに酒を注ぎあった。呑んだ量は変わらないはずだ。
 それでも影千代の白い顔は、仄かに頬が色づいてはいるが、背筋はしっかりと伸びて酔っている様子はほとんどない。

「私の弱点を探っていたのか?」
「剣も泳ぎも……お前に負けてばっかだから……今度は、勝ってやろうと思ったのに……」

 ディランの目は既に焦点が合わなくなっており、思考がぼんやりとしてくる。
 トロリと重くなった瞼を落としていく。
 影千代はそのまま寝て行きそうなディランの頭にそっと手を伸ばす。

「あ!」
「っ!?」

 指先が髪に触れるか触れないかのところでディランが頭をガバッと上げた。
 体を跳ねさせ慌てて手を引っ込めた影千代を、座った目でじっと見つめ真剣な声を出す。

「キスは俺の方が絶対うまい」
「は……っ!?」

 言うや否や、ディランは立ち上がる。
 影千代の浴衣の合わせ目を鷲掴んで引き寄せた。
 突然のことに反応が遅れた影千代に、その勢いのまま噛みつくように唇を重ね合わせた。

「……ん、ぅ」

 開いたままの唇を無遠慮に舌で割り開き、アルコールの味の残る影千代の口内へ差し入れた。
 慣れた動きで上顎をなぞり、戸惑う舌を絡めとる。

「ふ、……っ」

 されるがままになっていた影千代だったが、次第に動きを合わせて角度を変える合間に呼吸をする。
 テーブルに片手をついてきちんと立つと、ディランの後頭部に手を添えて髪に指を絡めてくる。
 舌が意思を持って動き始め、ディランの熱くなった口の奥まで犯していく。

(気持ちいい……)

 夢見心地で唇を喰み、溢れてくる唾液を混ぜあう。
 じゅうっと吸って、ゆっくりと唇を離せば二人の間を銀糸が繋いだ。

「っは……」

 目の前には、頬を紅潮させて肩で息をする影千代がいた。
 自分も酒は関係なく体温が上がり鼓動が早くなるのを感じつつ、ディランは口角を上げる。

「良い顔になってんじゃねぇか」
「お前も、な」

 同じように影千代も笑っているが、透き通るような青色の中に欲がちらつくのをディランは見逃さなかった。
 朱に染まった首筋に顔を寄せると、皮膚の薄い部分に舌を這わせる。

「……っ」

 影千代からくぐもった声が漏れるのを聞き、更に気分を良くした。
 息を多く含んだ声で囁きかける。

「ノってきた。ベッド行こうぜ? お前のせいで色々溜まってんだよ責任とれ」
「……飲み過ぎだ」

 影千代は甘美な誘惑を振り切るように目を閉じ、唸るように呟く。

「酔った勢いも大事だ……わぁっ」

 行儀悪くテーブルに乗り上げ追い打ちを掛けようとしたディランは、逞しい肩に抱え上げられすぐ隣にある広いベッドへと移された。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...